困惑
ーーーーーーーガサッ…
「…リリアに何をした?」
茂みから音がしたかと思ったら、目の前にアレスが立っていた。
私を自身の背に庇うようにし、ジュード殿下と対峙している。
「リリア…何故、泣いているんだ?」
「…え?」
アレスの問いに一拍遅れ…自分の頬が濡れている事に気づく。
気付かぬうちに泣いてしまっていたらしい。
「違うの…私が勝手に泣いただけ。ジュード殿下は何もして無いよ。」
慌ててアレスの背に抱き付けば、アレスは体から力を抜いた。
顔だけ振り向き…私の表情を窺う。
それに対してニッコリと微笑んで見せると、アレスはようやくホッとした顔をした。
「…婚約者では無くなった…か。成程…その言葉だけ聞けば、二人は結婚したと分かるのだな。」
私とアレスを交互に見たジュード殿下は暫く考え込んだ後、そう呟いた。
その言葉に私もアレスも目を見開いた。
だが…婚約者では無くなったアレスは私が泣いていただけで背後に庇うほど心配したのだ…。
気づかれてもおかしくはない。
「…えぇ、成人を迎えた私はアレスと婚姻しました。」
アレスの背後から移動し前へと出て説明すると、アレスは私の発言に慌てた表情をする。
アレスに微笑み「大丈夫。」と伝えれば、心配そうな顔はしたものの…アレスは一つ頷きジュード殿下を見た。
「皆様を欺く為に、噂を流してもらいました。嘘は言わず…だけど、捻れた情報を正す事もしませんでした。」
深く頭を下げれば、ジュード殿下は首を左右へ振って微笑んだ。
その顔を見たアレスが再び目を見開く…。
「欺いたのには理由があったのだろう?それに嘘はなかった…周囲が勘違いしただけだ。」
ジュード殿下の言葉に更にアレスは怪訝な表情をし、私を見た。
アレスが困惑してる事に思わず苦笑してしまう。
私達を交互に見たジュード殿下は、「おめでとう。」と言って穏やかに微笑んだ。
そして、ジュード殿下がゆっくりと邸の方へと歩きだしたので私は慌てて彼を留めた。
「これから何をなさろうとしているのですか?」
私の言葉に足を止め…ジュード殿下は振り返った。
返ってくる言葉を待ちきれず、私は声をかける。
「国王陛下の元へ罪の告白ですか?」
投げかけた言葉に…瞠目し、直ぐに苦笑へと変えるジュード殿下。
一度だけ頷き再び歩み始めようとした彼を…私もアレスも全力で留める。
「その告白、ちょっと待ってもらえませんか?」
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勢いで続きを書いたので、短めです。
夜中の更新となってしまい申し訳ないです。




