表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
たぶん...悪役令嬢だと思います  作者: 神楽 紫苑
第3章 私リリア!運命が動き出したの。
213/318

書斎に潜む鼠

「一通り挨拶は済んだが…リリアはどうする?」

会場中を回り終え、エスコートしていたお父様の足が止まる。

「一度、お化粧などを直すために控室に下がらせて頂きます。」

そう答えると、お父様は顎を撫でながら何かを考えていた。

そして、顔を上げると私を見つめて微笑む。


「そうか…ならば途中で私の書斎に寄って欲しいのだが?」

「…書斎に…ですか?」

控室は広間と同じ一階だが、お父様の書斎は二階にある。

寄り道どころのレベルでは無いが…?


「閉幕の挨拶の原稿を忘れてきてしまったからお願い出来ないだろうか?これが鍵だ、使わないかも知れないけれど一応持って行きなさい。」

そう言って、お父様は私の手に鍵を握らせる。

近くにいたマリーに合図し、呼び寄せるとお父様は「頼んだよ。」とマリーにエスコートを譲った。


「あぁ…そうそう、もし鼠が居たら生捕りになさい。」

お父様との別れ際…お父様は私の耳に顔を寄せ他の者に聞こえないように囁く。

その言葉で…お父様が何を考えていたのか分かってしまった。


すると…お父様はヒラヒラと手を振り、ゲストのいる方へと歩いて行ってしまった。


私はマリーにエスコートをしてもらい会場を出る。

会場を一歩外に出れば嘘のように静かだ。


「マリー、お化粧直しの前にお父様の書斎へ行きたいのだけど…。」

私をエスコートするマリーによろけた振りで寄りかかると、マリーの耳元で囁く。

マリーは一瞬…目を見開いたが、直ぐに頷いた。


「でしたら、此方に。その格好では目立ち過ぎます。」

マリーにそう言われて案内されたのは、何故か控室だった。

私が吃驚していると、マリーが私のドレスを急いで脱がせ始める。

そして、何故かクローゼットにある使用人服を着せられた。

しかも驚くべき事にサイズはピッタリだ。


「リリア様専用でございます。」

マリーは目元や口元など目立つ部分の化粧を上手に落とすと、その上からナチュラルに見えるメイクを施す。


「え?待って?…私専用?」

マリーの言葉が引っ掛かり、慌てて聞き返す。

既に化粧を終えたマリーは、私のヘアスタイルを変えていく。


「いざと言う時の為に、控室にはいつもご用意しております。」

三つ編みを器用に後ろで止めると白いカチューシャを付けられた。

何処からどう見ても…使用人だ。


「準備が整いました。行きましょう!」

そう言って着ていたドレスをクローゼットに戻すと、マリーを先頭に控室を出る。

出る際は何故か私はバスケットを、マリーはお茶セットを持って出た。


扉を一歩出ると、マリーがクルリと振り返る。

それに倣って私も振り返ると、マリーは誰も居ない室内に向かって一礼した。

同じように一礼すると、扉を閉める。

恰も中に誰かが居るかのように振る舞うマリーに、思わず感心してしまう。


階段を登り、お父様の書斎の前で足を止めると…中から何やら声が聞こえる。

ふむ、これがお父様の言っていた鼠だろう。

鍵穴には無数の傷痕が残っていた。

耳を澄ますと中からは「クソッ!」とか「何で開かない?」とか大きな独り言が聞こえてくる。


「ここからは私だけで行くから、マリーは……騎士以外に成人男性を一人で抱えて運べる人を呼んでもらえないかしら?」

マリーは下がっていて…とも思ったけど、生捕りにしたまま書斎に置いておく訳にはいかない。

運ぶにしても騎士だと目立つし、数人で持っていくと…それも目立つ。

私の問いにマリーは少し思案すると、誰かを閃いたらしく笑顔で頷いた。


「かしこまりました。それでしたら我が家の庭師を呼んで参ります。」

「御庭番?」

「いえ、庭師です。」

予想外の職業に思わず違う職業を聞き返してしまうとマリーは直ぐに訂正する。

初めて聞く人物に記憶を辿ってみたが、思い当たる人物がいない。

庭師…庭のお手入れはお祖母様の魔法で整えられていると思っていたが?


「庭師とは剪定作業を行っている者の事です。」

お祖母様の魔法によって季節が異なる花を咲かせてはいるが、木々の剪定は別の者が行っていたようだ。


「庭師に…運べるの?」

梯子や切った枝葉などを片付ける際には、それなりに重い物は持つだろうが…人間ほど重くはないだろう。

大丈夫かと心配すると、マリーは笑顔で頷く。


「ご安心を。庭師はリチャード様が直々にお声をかけた騎士様でございます。」

マリーの説明によると、庭師はお祖父様が所属していた騎士団の元部下だった男で…剪定も鋏ではなく剣で行っているそうだ。

なんて器用なのだろう。


「では、その方を此処に呼んできて。」

「かしこまりました。リリア様もお気をつけ下さいませ。」

書斎の前でマリーを見送ると、私は扉に手をかけ…ゆっくりと開く。


扉の隙間から暗い室内に灯が入り、中の人物が慌てる音がした。

体を滑り込ませ、直ぐに扉を閉めて鍵をかける。


「誰だ!?」

侵入者は焦ったように声を荒げ、暗闇の中で書類が大量に落ちる音がした。


「そういう貴方はどなたかしら?顔を見せてもらいます。」

そう言って私は火魔法を風魔法で包み込んでライトの代わりに照らした。

部屋が明るくなり、潜んでいた人物を照らし出す。

思っていた通り…その人物が姿を現した。

ブクマ・評価・感想・誤字報告ありがとうございます。

何とか今日は少し早めに投稿できました。

ただ、誤字が多かったら申し訳ないです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ