リリア、回収される
リシェ様の尤もな発言に、なぜかロマネス殿下は眉間に皺を寄せ渋々と言った顔で私を睨む。
…この人、自分から招待しろと強請ったくせに何しにここに来たんでしょう?
「リリア嬢…おめでとう。」
「ロマネス殿下、本日はお越し頂き…そしてお祝いのお言葉を頂きまして誠にありがとうございます。」
ニッコリと笑みを浮かべて答えるが、直ぐに顔を背けられた。
この人…本当に何しに来たんだろうか?
「リリア嬢!」
「ジュード殿下、本日はお越し頂きありがとうございます。」
ロマネス殿下の隣にいたジュード殿下に突然名前を呼ばれたので、ジュード殿下に体を向け頭を下げる。
それに満足したのか、ジュード殿下はそれ以外の言葉をかけては来なかった。
…この方も…もっと何かないのだろうか?と思ってしまう。
「兄上!彼女はつい先日、お相手に婚約を解消されたと聞いています。そのような令嬢とダンスなど…。」
ジュード殿下との挨拶の後、再びロマネス殿下がリシェ様へ言葉をかける。
今噂になっている私の婚約の件だ。
…紆余曲折し、最新の噂では私がアレスにフラれた形となっている。
どうやら、その最新版をどこかで仕入れてきたようだ。
「婚約の解消…ねぇ…。」
リシェ様の言葉に私は如何にも傷ついていますと言う顔で目を伏せた。
それを見たロマネス殿下は、ふんっと鼻で笑う。
…一体、私は何故…彼にここまで嫌われているのだろうか?
「で?それを態々、知らせに来たのかい?」
そうロマネス殿下に問いかけるリシェ様は、どこか冷たい顔をしているように思えた。
「彼女は今日の主役だよ?招待されたら、普通はダンスに誘うのがマナーだろう?それに、彼女には婚約者が居ないのなら特に問題にはならないはずだ。」
リシェ様は隣国の王太子としての常識的なマナーをロマネス殿下に説くと、ロマネス殿下はグッと奥歯を噛み…再び私を睨んだ。
睨まれても…困るんだけど。
背後で控えているリシェ様の侍従もロマネス殿下の侍従も止めにも入らないし…っていうか、私が見ると目線を外すの止めて欲しい。
因みにクロード殿下の侍従でお馴染み、ソムリス様はクロード殿下がダンスを始めた時から然りげ無く料理を摘み食いしていたりする。
ジュード殿下の侍従は…ジュード殿下から離れてどこかに行ってるようだ。
ジュード殿下といい、侍従といい…自由すぎやしないか?
私が目だけ動かして周囲を確認していると…二人のやり取りを他所に、ジュード殿下が少しずつ距離を詰めて来たのが目の端に見える。
これはこれで気持ち悪いな…と思いながらも、気づかないフリをした。
「リリア嬢!僕とダ…。」
「失礼!リリア、まだこんなところに居たの?ほら!挨拶に回らないと!!」
意を決したジュード殿下が私をダンスに誘おうと声をかけた瞬間、リオンが突然割り込んでくる。
そしてグイグイと腕を引いて私を自身の背後に隠し、リシェ様方に向き直った。
「申し訳ございません、リリアは先日の魔法省での訓練で足を痛めております故…ダンスが踊れないのです。私達はこれで失礼しますが、どうぞ!ごゆるりとお楽しみ下さい。」
リオンが適当な言い訳を並べて頭を下げると、私に向き直って「行こうか!」と手を引っ張っていく。
「リシェブール王太子殿下、ロマネス殿下、ジュード殿下、お話の途中で申し訳ございません!失礼致します。」
私は慌てて振り返ると、その場を離れる事に対し謝罪する。
「リリア嬢、今日はありがとう!楽しませてもらうよ。」
リシェ様だけが、笑顔で答え…ロマネス殿下はムスッとした顔のまま私を睨み、ジュード殿下はポカーンと口を開けて固まっているようだった。
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