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たぶん...悪役令嬢だと思います  作者: 神楽 紫苑
第3章 私リリア!運命が動き出したの。
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ファーストダンス

夜会までの時間は再び準備となる為、アレスとは一旦離れると…私室に隣接している浴室で湯浴みをする。

温かいお湯に体を沈め…マリーを含む数名の侍女達の手を借りて全身を綺麗にしてもらうと、更にマリーの手によって全身のマッサージが施された。

髪からも体からも良い香りがして…その香りに癒されながら、ヘアースタイルと化粧をしてもらう。

用意されたドレスは先日のフィッティングの時に見ていたが、その時よりも輝きが増している気がするのはきっと気のせいではないと思う。


コルセットで腰を絞められ、胸を盛られ…ドレスを着れば吃驚する程スタイルが良い。

姿見で見る度に自分が自分じゃないみたいで、嬉しいが見慣れない。

装飾品も全て装着すれば、準備完了だ。

…と、思いきや…お母様が部屋へ訪れる。


「準備が済んだようね?」

美しい笑みを浮かべたお母様は私の側まで近づくと、マリーから紅を受け取った。

そして、スッと薬指で紅を取ると私の唇に紅をさす。


「リリアやリオンに母親らしい事の一つも出来たか分からないけど、いつだって私にとって貴方達は大切な子供。こんなに成長して…いつかは愛する人の元に行くと分かっていても、いざその時になったら寂しいものね。」

紅をさしながらお母様は寂しそうに語ると、指を拭い…私の頬を撫でる。


「幸せになりなさいね。」

「…はい。」

お母様の言葉に胸がキュゥッとなって、涙腺が緩むと…マリーが慌てて化粧を直した。

泣いてはダメだと思っても、こればかりは無理で…私はお母様へと抱きついた。

お母様も抱き返し…私もお母様も無言のまま時が過ぎる。

暫くして体を離すと「とても綺麗よ!」とお母様は顔を綻ばし、それに釣られて私も微笑んだ。



夜会が始まるまで、まだ時間はあるけど…私は会場へと足を運んでいた。

広間で行われるそうで、使用人達が準備を行なっている。

邪魔にならないように会場内へと入り…会場のど真ん中で周囲を見渡す。

ダンスが行われる真ん中が一番邪魔にならないからだ。


時間になったら、私はお父様とリオンと共に会場入りをする。

それまでは別室で招待客の確認を行ったりする予定だ。



「僕とファーストダンスを踊って頂けませんか?」


一人…ダンスホールで佇んでいると、背後から声がかかって驚きながら振り返る。

そこにはタキシードに身を包んだアレスが私に向かって手を差し出していた。

周囲を見渡せば、それまで忙しなく動いていた使用人達が笑顔で私達を見ている。


「よろしくお願いします。」

アレスの手を取り笑顔で答えると、アレスはフワッと柔らかい笑みで私の手を握った。

そして私は、使用人達に見守られながらファーストダンスを踊る。


体を密着させたり、ターンをしたり…その度に揺れるドレスが会場のライトでキラキラと煌めく。

リードが上手でとても踊りやすい。

体力が続くのならば、ずっと一緒に踊っていたいくらいアレスとのダンスは楽しかった。


準備中の会場には音楽が流れないかと思っていたが、楽団の方々がリハーサルも兼ねて演奏をして頂いたおかげでダンスホールは独り占め状態だ。

曲の切り替え時にアレスを見上げれば、アレスも私を見つめていて…恥ずかしくなって顔を逸らしたくなった。

だけど、今日…この瞬間はもう二度とないから…。

そう思って私はアレスに微笑みかけると、アレスは一瞬キョトンとした顔をして微笑み返してくれた。


「まだ…痕を隠さなくても大丈夫?」

ダンスを踊りながら、首についた痕を心配されたが…出来たら始まるまではこのままでいたい。

私はフルフルと首を左右に振ると、アレスは再び嬉しそうに笑った。

…あぁ、好きだなぁ…と改めて見惚れていると…アレスが突然チュッと唇を奪った。


「…リリアが可愛いのが悪い。」

そう言って意地悪く笑う顔は真っ赤だった。

その顔にクスリと笑って「アレスには負けちゃう!」と言えば、少しだけムッとする。

ムッとした顔も可愛くて再びクスクスと笑ってしまった。


「今日のリリアは可愛過ぎる…夜のドレスもよく似合ってるね。」

曲の終わりにフワッと私の腰を抱き上げ、私がアレスを見下ろす形になる。

更に顔を綻ばせたアレスに、今度は“お返し“とばかりに私から口づけをしたのだった。

ブクマ・評価・感想・誤字報告ありがとうございます。

…甘すぎる気がするのはきっと気のせいでは無いですね。

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