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たぶん...悪役令嬢だと思います  作者: 神楽 紫苑
第3章 私リリア!運命が動き出したの。
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ラストダンスを私と

誕生日パーティーの前夜…準備を終えた私は一人、私室からバルコニーへと出ていた。

少し肌寒く、慌ててショールを羽織った。

冬が近く、空気が冷たいからか…空を見上げれると美しい星がキラキラと輝いて見える。


「成人…かぁ…。」

この世界に生きて明日で十六歳。

前世を思い出してからもう九年も経ったのかと、過去を振り返りながら…一つ息を吐く。


結局…この世界がどんな作品なのかも思い出せないまま、ここまで来てしまった。

私はどんな悪役令嬢なのだろうか?

本当は悪役令嬢ではないのではないか?と思った事も何度もあった。

それでも、鏡に映る私は“悪役令嬢“の顔をしていて…否定したい気持ちをどこかへ追いやってしまう。


明日…私は成人になる。

それだけじゃない…今回の計画の為にアレスとの婚約関係が終わりを告げるのだ。

初めての夜会で私は誰と踊るのだろうか?

成人して初めてのダンスはアレスが良いなぁ…と、見上げた空で一つ星が流れた。


「あっ!流れ星!!」

突然、背後から聞こえた声にドキッとして振り返れば…リオンが空を見上げて何かお願いをしていた。

流れ星には願い事…それも私が幼い頃にリオンに教えた事だった。


「僕達もあと数時間で成人になっちゃうんだね。」

願い事を終えたリオンは、私の隣まで来ると私へと話しかける。

リオンの言葉に頷けば…リオンも私と同じように再び空を見上げた。


「長いようで…過ぎてしまえばあっという間だったと感じるね。」

「ふふっ、今でそれなら二十歳を過ぎたら驚く程に早く過ぎちゃうよ?」

リオンが十五歳とは思えないコメントをしたので、事実を教えてあげる。

私の返しに「そうなの?」とショックを受けるリオンが可笑しくてクスクスと笑ってしまった。


「こうやってリリアと一緒に過ごせるのは、あとどれくらいなんだろうね。」

一頻り笑った後…リオンがしみじみと言うので、私も釣られて寂しく感じてしまう。

幼い頃からずっと一緒だったから、改めて言われると凄く寂しい…。

初めての王城も、学園も…冒険者になって依頼をこなしたのも何をするにも一緒だった。

一緒にいるのが当たり前だったリオン。

気がつけば目からは涙が溢れそうになって、慌てて空を見上げた。


「リリアは強いけど、意外に涙脆いよね。」

私が突然、空を見上げた事にリオンは苦笑しながら呟いた。

誤魔化したところで…きっとリオンにはお見通しなんだろうなと思って、諦めて頷く。


「いつまでもリオンと一緒って訳にはいかないと分かっていても…出来たらもう少しだけ、リオンと一緒にいたい。」

素直に自分の気持ちを伝えれば、リオンも「僕も同じ気持ちだよ。」と返す。

そして再び二人で夜空を見上げた。


「明日、リオンはキャティ様との婚約発表をするんでしょ?」

「うん!キャティは…貴族の令嬢って訳では無いけど、そこは僕が一生懸命にフォローしようと思ってる。」

キャティ様は元貴族の令嬢で、現在は貴族という訳ではない。

ご両親の事件解決後はどうなるのか不明だが、それまでは周囲からの風当たりは強いだろう。

そうなる事が分かっていて、それでもリオンが守るというのなら大丈夫だと思えた。

リオンならきっと守れると…。


「そっか…明日のファーストダンスはキャティ様なんでしょ?」

「勿論!リリアはアレスでしょ?」

互いにダンスパートナーの話をして…何度目かの沈黙が訪れた。


どちらも空を見るばかりで話し出す事もなく…どれほどの時間が経ったのだろうか。

そろそろ私室へ戻ろうかと思い始めた頃…突然、リオンが私の前へと跪く。


「十五歳、最後のダンスを僕と踊っていただけませんか?」

片目を閉じ、悪戯っぽく微笑むリオンに…一瞬だけキョトンとしてしまった。

だが、すぐに笑みが溢れ…差し出された手を取る。


「えぇ、ラストダンスを私と!」

ブクマ・評価・感想・誤字報告ありがとうございます。

最近、更新が遅くて申し訳ないです。

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