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たぶん...悪役令嬢だと思います  作者: 神楽 紫苑
第1章 私リリア!7歳になるの。
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人を見る目

父リューク視点のお話。

「リューク、貴方に宰相の職が本当に務まっているの?」

書斎で招待客のリストを確認していると、窓辺にいた母上が私の方を見て顔を顰めた。



クリスティア公爵家当主、リューク・クリスティア

“神に愛されし者“である父上は騎士団では伝説となっている。

母上もまた…魔法省で今も語り継がれるほど有名だ。


父上や母上のように武力や魔力もないと幼い時に悟った私は政に興味を持ち、幼馴染みだった陛下を支えるべく勉強に勤しんだ。

それが実を結び宰相という職に就けたのだ。


「ちゃんと職務は全うしております。どうかされましたか?」

母上に指摘され内心はドキッとしたが、これでも陛下や他の政務官からも信頼を得ている。

私に恥じるところなどないのだが…


「侍女長のエイミーは貴方が雇ったのでしょう?」

「確かに。ここの使用人は執事のスティーブ以外は私が雇いました。」

父上と母上が領地に移った際に殆どの使用人は付いて行ってしまった。

残っていた侍女も、リオンとリリアが領地に行くと付いて行ってしまった為に雇う羽目になったのだ。

それを今更なんだと言うのだ

ついムッとした顔になってしまうのを堪えながら、淡々と返事をする。


「貴方の目は節穴なのかしら?そのように育てた覚えはないのだけど…」

母上は頬に手を置き、溜息を漏らす。

さすがにイラっときた


「母上、何がおっしゃりたいのですか!私の目は節穴ではございません」

「では頭の問題かしら?」

「なっ!?」

情けない…そんな顔をされ、あまりの事に言葉が詰まった


「お母様、申し訳ございません…私の力不足でございます。」

私の前に庇うようにし妻のロザリアが頭を下げた。

「そうね、貴女も侍女長に舐められているわね。」

「いい加減にしてください!なんだと言うのですか!」

執務机を叩きながら立ち上がると、母上と妻は呆れていた


「いい加減にするのはリューク、貴方よ。リナリアの声が聞こえなかったの?」

「……え?」

リナリアが泣き喚くのはいつもの事だったので、気にも留めていなかった…それが何だというのだ?


「リナリアが転んで、それを助け起こしたリリア達が侍女長に責められていると言うのに…見向きもしないなんて…」

なんて情けない…そんな言葉を母上は小さく漏らした。


「子供達に優劣をつける者を貴方は侍女長にしているのね」

「そんなっ!エイミーは子供達を大事にしております。」

エイミーは4年前から侍女長として雇っているが、子供達に優劣などつけているとは…

日頃、邸にいるロザリアを見れば顔が青ざめていた…

どういう事だ?


「エイミーは…リナリアに甘く、リナリアの我儘を諫める事もございません。」

震える声でロザリアが話し出した。

「その時々でエイミーに注意しますが、私が舐められてるので全く聞いては貰えなくて…」

「ロザリアさん、貴女を見れば子供達とちゃんと向き合おうという姿勢は伝わってくるわ」


「ありがとうございます」

小さくお礼を言うが顔は俯いていた…


「問題は子供の事を任せっきりなリュークにあるわね。リーマスはちゃんとしてるのに、なぜリナリアは“ああ”なのかしら?」

「“ああ”とは何ですか?少しお転婆なだけではないですか!まだ幼いのだ…か…ら…」

口元を扇子で隠し、満面の笑みで母上は私の顔に近づくと「少し?」と凄む。


「我が公爵家の侍女長は、幼い子供の躾け及びお世話が仕事だと話したはずです!貴方は耳も悪くなったの?」

「し…しかし!」

反論しようにも言葉が出ずにいると母上は更に続けた


「先ほどの場面ならば大音量で叫んだ事もですが、ドレスをたくし上げて走った事も注意しなくてはいけません!」

「そ…それは…」


「注意もしなければ、また同じ事を繰り返しますよ?それどころか何でも許されると勘違いし、どんどん我儘に育ちます」

「…はい」

反論する事も出来なくなり、小さくなる。



ーーーーーコンコンコンコン。

ノック4回、これは以前いた侍女長のマリーの入室時の合図だ。


「失礼します。旦那様に報告がございまして参りました。」

ドアの外から入室の許可を求めたマリーの声が聞こえ、それまで黙っていた父上が許可を出した。


マリーは先ほどの一部始終を客観的に父上に報告すると、父上は私を見て眉を寄せた

「リュークよ、アリアが言う通りのようだな。侍女長の事は早急に対処した方が良いだろう」

「そ…早急にですか?」

確かに子供には良くないが、そんなに急ぐ事なのか…

ふと、混乱のあまり握り締めていたリストに目が入る


「誕生日パーティーには高位貴族を招待している。あのような態度の侍女がいては我が家は下に見られるぞ?」

それでもいいのか?と問われると、それは宜しくない。

だからと言って、侍女長が抜ければ困るのも確かだ。


「リナリアは私と一緒に居れば、それほど我儘を言いませんわ!後任が決まるまでは私が見ますわ。」

ロザリアがそう宣言すると母上も「手伝うわ」とロザリアに微笑んだ。


決断をしなくては…しかし何と言って暇を出すか…


「あら、簡単よ?エイミーには解雇するに十分な証拠があるようだから」

母上は今まで以上に満面の笑みを浮かべた。


誤字報告・ブクマ・評価をありがとうございます。

とても嬉しいです。

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