ネメアレオン殿下の目的
「邸に招待しても良いですが…僕的には獣人達はそんな事で怯えている訳では無いと思いますよ?」
キャティ様に夢中だったリオンが突然、話へと割り込んできた。
あ…聞いてたのね?と思っていれば、リオンが私の方へと振り返りニッコリと笑った。
その笑顔に私も引き攣ったように笑い返す。
「獣人達が怯えているのは、ネメアレオン殿下が何を考えているのか分からないからじゃないでしょうか?」
「私の考えだと?」
リオンは獣人達やキャティ様を優しい顔で見つめると、ネメアレオン殿下を見た。
「僕達は最初に彼らの体調を戻すべく邸にて静養して頂き、個々に希望を聞き…出来る限りで応えると提案しました。…ですが、ネメアレオン殿下はどうでしょう?彼らを引き取りに来た…とだけ仰ってますが、その後はどうされるのですか?」
リオンの問いにネメアレオン殿下はグッと息を呑み、黙り込んでしまった。
隣にいるバーバラ殿下はネメアレオン殿下に付いてきただけなのか、この事には一切口を挟まない。
「そもそも、彼らの心配してます?…していたら、最初にかける言葉があるんじゃないですか?」
「最初にかける言葉?」
リオンの言葉にネメアレオン殿下は直ぐに聞き返したが…私は、それは失敗だと思った。
気づきもしないなど…と、私は少し残念な顔で聖女様を見る。
聖女様は私が見ている事に気づいて、左右へと首を振った。
「…エスティアトリオ王国も、オステリア王国と同様に王太子が決まっていませんよね?オステリア王国に来た目的は僕達じゃないですよね?獣人達を保護し、犯人を捕まえる事…王太子になるには何かしら他の方々よりも目立った事をしないといけないのでしょうか?」
コテンと首を傾げ、笑顔で問い詰めるリオン。
ネメアレオン殿下は苦虫でも噛んだかのような顔でリオンを見つめ返す。
「先程…頭を下げましたが、あれにはどう言った意味があったのでしょう?ただの挨拶ですか?」
更に笑みを深めたリオンは自己紹介を終えた後の事を聞く。
深く下げられた頭…だが、その間に何も声を出していなかった。
「それは感謝のつもりで…。」
「感謝のつもりで頭だけ下げるのがエスティアトリオ王国のマナーなのでしょうか?…そうなの?キャティ。」
ネメアレオン殿下の返答に対し、リオンは確認するようにキャティ様を見た。
キャティ様は困ったような顔で首を左右へと振ると「いえ、そのような事は無いと思います。」と答えた。
「折角…オステリア王国にお忍びで来たようですが、出直して来た方が宜しいのでは無いですか?」
リオンが覗き込むようにしてネメアレオン殿下を見れば、それまで少し俯き加減だったネメアレオン殿下はガバッと顔を上げてリオンを睨み返してきた。
「なっ…!先ほどから聞いていれば、お前達は俺様に向かって失礼過ぎるぞ!俺は王子なんだぞ!!」
今にも飛びかかりそうな勢いで怒鳴るネメアレオン殿下を私もリオンも無表情で見つめた。
何も言い返さない私とリオンに更に腹を立てるネメアレオン殿下。
「お前達は何なんだ!こんな事件など俺様が簡単に解決出来ると言うのに、偉そうに俺に文句ばかり言うな!」
唾が飛びそうな勢いで怒鳴るネメアレオン殿下…。
私とリオンは互いに顔を見合わせる。
「自国の事件も解決出来ないお方に他国が絡んだ事件が簡単に解決出来るんですってよ?」
頬に手を添えて、溜息混じりにリオンへと声をかければリオンはゆっくりと首を左右に振った。
「なら、先に自国で起きた事件を解決して頂きたいものだね。」
ウンウンと頷き、ニッコリと笑いながらネメアレオン殿下へと振り返る。
「「アレスのご両親を襲撃した事件と、キャティ(様)のご両親を襲撃した事件の解決を楽しみにお待ちしております。」」
声を揃え軽やかな笑みを作った私達は深々と頭を下げたのだった。
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どうやら二人は王子に怒っていたようです。




