人の物差し
ーーーー獣王国の王子と王女に無言のまま頭を下げられたまま…数分が経過した。
未だに微動だにしない彼らに私もリオンも対処に困り、聖女様を見る。
私達の困惑した表情を見た聖女様は一つ溜息を吐くと話し出した。
「獣王国で二人に会った際に今回の事を話したんだよ。いずれバレる事だと思っていたしね…そしたら二人に会いたいって言い出したのさ。まぁ…アレスの事もあったし、丁度良いかと思ってね。」
「「…アレスの?」」
聖女様の言葉に私もリオンもアレスを見ると、アレスは何の事か分からずにキョトンとして首を傾げたので…再び聖女様に目を向ける。
「リリアの計画だと…アレスがあんまりにも可哀想だし、それにアレスがオステリア王国に居ない方が色々と進めやすいだろうと思ってね。アレス、獣王国に暫く留学する気はないかい?」
「え…留学ですか?僕は既に最終学年ですし、今の時期からでも出来るものなのですか?」
アレスが困惑しながら聖女様と私とを交互に見る。
聖女様はニンマリと笑って獣王国の王子と王女に目を向けた。
すると、下げていた頭を上げてネメアレオン殿下が聖女様の代わりに答える。
「勿論だ。…だが、過去の出来事から獣王国に来たいと思えないのであれば無理にとは言わない。」
「ええ、獣人を助けてくれた方々だもの。衣食住も全て私達に整えさせて貰えないかしら?」
そう話すと、王子も王女も再び私とリオンを見て…アレスへと視線を戻す。
「ありがとうございます。」
アレスは二人に深々と頭を下げた。
「君達にも何かを返せたらと思うんだが…?」
「「あ、必要ないです。」」
ネメアレオン殿下の申し出に私もリオンも打ち合わせ一つなく即答すれば、ネメアレオン殿下は口を開けて固まった。
…王子といえど、表情はずっと作っていたりしないんだな…と思いながら見ていれば何故か更に驚いた顔へと変化する。
「なっ!?普通は喜ぶだろ?」
「「え?喜ばないですよ?」」
私達の返答に更に驚いた顔で固まってしまうネメアレオン殿下。
その横で肩を震わせながらバーバラ殿下は笑いを堪えている。
「いや!むしろ請求とかするもんだろ?」
「「え?なんで請求なんかするんです?」」
怒り出したネメアレオン殿下に…それでも普通に返せば、バーバラ殿下は堪えきれずに爆笑した。
「あははっ!!ネメアお兄様がやられっぱなし!!あははははっ!!…もう、最高なんだけど!」
そう言って笑いながらバーバラ殿下はネメアレオン殿下をバシバシと叩く。
何だかよく分かんないけど、お気に召して頂けたようです。
「この子らを自分の物差しで測ろうとするんじゃないよ。」
聖女様の冷静なツッコミに、ネメアレオン殿下は「じゃあ、どうすれば?」と聖女様へ問いかける。
ネメアレオン殿下の問いかけに、聖女様は私達へと振り返った。
「二人は何かして欲しいのかい?」
聖女様の問いかけに私とリオンは顔を見合わせると…聖女様に向き直って首を左右に振った。
「そもそも、助けたのは自分がしたいからだし。」
「僕はキャティに出会えて良かったなって思ってたくらいだし。」
私達の言葉を聞いた聖女様は再びネメアレオン殿下を見て「ほらね?」と声をかける。
ネメアレオン殿下もバーバラ殿下も信じられないものを見る目で私達を見た。
ちょっと失礼だなと思う。
「いつか…困った事があったら、その時に手を貸してくださればそれでいいです。」
強いて言うなら…と提案すれば、ネメアレオン殿下は深い溜息を吐いた。
「それは…遠回しに断ってるやつだろ…。」
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