三つの国の王子様
「お待ちしておりました、聖女様は奥でお待ちです。」
聖女様に指定された日…教会を訪ねると、奥の部屋へと案内される。
本日は私とリオンの他に、アレスとクロード殿下とリシェ様、それとペルノや保護した獣人達が一緒だ。
「聖女様、お待たせしました。…本日の貢物です。」
「待ってないよ、いつも悪いね。」
いつものように私と聖女様が挨拶を交わすと、部屋には他にも人が居た事に気づく。
フードを目深に被った男性と…女性?
その二人に何故か反応し威嚇しそうになったのはアレスだった。
「おいおい、此処では良しとくれ。」
相手も威嚇で返したので聖女様が慌てて仲裁に入る。
その時に聞こえた相手の男性の喉を鳴らすような音に、今度は私が反応した。
「…聖女様、もしかして此方の方々は?」
私の問いかけに、聖女様は苦笑し「さすがだね。」と呟く。
つまり…此処には今回の事件に関係する全ての王国の方々が揃ったと言う訳か。
私が一人、納得していれば…フードを被った二人は私を見上げた。
見上げた拍子にフードがズレて、黄金に輝く髪が姿を現す。
瞳は人を射抜くように鋭くて美しい黄金色をしている。
「エスティアトリオ王国のネメアレオン・エスティアトリオだ。」
「同じく、バーバラ・エスティアトリオです。」
二人が名乗ると、クロード殿下とリシェ様の表情が強張る。
だが、直ぐに表情を戻すと二人も名乗り…私達も続いて挨拶をした。
エスティアトリオ王国…通称“獣王国“と呼ばれる王国の第一王子と第一王女だ。
恐らく最初にアレスが反応したのは、獣人だったからだろう。
「今は…アレスだったか?王位継承権を既に破棄していると聞いているが、本当に良かったのか?」
第一王子のネメアレオン殿下が挑発するようにアレスへ問いかければ、アレスは真顔で「私には必要の無いものです。」と答えた。
その答えにネメアレオン殿下が興味なさげに鼻を鳴らすが…隣にいた第一王女がその様子に笑い出す。
「あははっ!!ネメアお兄様ったら従兄弟が自分の地位を脅かすとか不安がってたのよ?馬鹿みたいでしょ?」
「おいっ!言うなよ!!」
バーバラ殿下が笑いながらバラし、慌ててネメアレオン殿下が止めに入る。
その遣り取りに私とリオンはポカーンと口を開けて固まった。
そんな私達に気づいたバーバラ殿下は更に笑いがエスカレートする。
バーバラ殿下が落ち着くまで待つと、聖女様が話し始めた。
「昨日まで獣王国にいたもんでね、“来たい“って言うから連れてきたんだよ。」
「「「「「え?」」」」」
そんな事で他国の王子や王女を連れてきていいのか?と思ったが…こっちにもリシェ様がいるしな。
チラリとリシェ様を見れば、目に見えて分かるように怯えている。
「で?ワインバルでは獣人を売り買いするのが流行ってるんだってな!」
フードを取ってソファーにゆったりと座ったネメアレオン殿下は、怯えて青い顔になっているリシェ様に声をかけた。
リシェ様は口を噤み…何と答えようかと逡巡しているように思えた。
「しかも!その協力者がオステリアにも居るんだろ?」
そう言って今度はクロード殿下に目を向けるネメアレオン殿下に、クロード殿下は表情を引き締め頷く。
クロード殿下があっさり頷いた事に驚きを隠せないでいれば、何故かネメアレオン殿下は私とリオンを見た。
「で…その獣人達を助け保護したのが君らって訳ね?」
「「はい。」」
事実なので直ぐに返事をすれば、眼光鋭く睨んでいたネメアレオン殿下は居住いを正す。
隣に座っていたバーバラ殿下も同じように姿勢を正すと…二人は私とリオンに向かって頭を深く下げた。
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新キャラが出るたびに、気がつけば名前を間違えている事が多い作者です。




