兄弟喧嘩?
「ダメだよ?ジュード。」
「「え?」」
クロード殿下が、ジュード殿下の申し出をサラッと断ってしまった。
話せると思っていたのか、ジュード殿下は目を見開いて固まっている。
私も思わず小さな声を漏らしてしまい、慌てて口を噤む。
「だって、リリアはこれから僕とランチなんだ。此処からは二人だけの時間なのに急に割り込むなんてマナー違反じゃないか?」
クロード殿下はニッコリと微笑みながらジュード殿下へ返すと、ジュード殿下はワナワナと震え出した。
グッと唇を噛み締めたジュード殿下は苛立ちを抑えながら、私へと顔を向ける。
「では、明日のランチは僕とー…」
「残念だったね、リリアのランチタイムは一週間後まで埋まっているよ?」
私をランチに誘うジュード殿下の言葉を、私の代わりに食い気味にクロード殿下が答える。
それにジュード殿下は明らかにムッとした顔で「そんな先まで待てません!」と言い返した。
私のランチタイムは…実は本当に一週間先まで埋まっていたりする。
クロード殿下に誘われた後、その次の休み時間にリーマスお兄様が来てランチに誘われた。
一緒に来ていたクリス様とルシアン様にも「僕の婚約者と一緒に!」とそれぞれ別の日に誘われて…更にその次の休み時間にはジル様やラムシル様…アルフレッド様までも誘いに来たのだ。
「ならば、他の者との約束など後回しにして僕とランチをー…」
「それ…本気で言ってる?王族だからって此処は学園だよ?身分は関係無いと言われている学園で、王族自らそれをしたらどうなると思っているんだい?」
ジュード殿下の言葉にクロード殿下が食い気味に反論すれば、再びジュード殿下は押し黙る。
その表情を見てクロード殿下がクスリと笑い…ジュード殿下の耳元に顔を寄せた。
「ジュードはそんな事も判らないのかな?…お前の元婚約者はとても優秀で素敵なレディに成長したと言うのに…見習ったらどうだ?」
煽るように囁いた言葉は、私達を見ていた者には聞こえなかっただろう。
だが、私にはバッチリ聞こえるように言う辺り…やっぱりクロード殿下は腹黒いんだと思う。
「じゃあね、また誘いにおいで?…でも、早くしないと直ぐにリリアの予定は埋まっちゃうかもしれないよ?リリアは今が一番、忙しい時期だからね。」
クスクスと笑いながら話すクロード殿下にジュード殿下は苛立ちを隠しもせずに「どういう意味ですか?」と聞き返した。
「リリアは叙爵が決まっているし、彼女はもうすぐ誕生日だ。成人となる誕生日は特別に忙しいだろう?」
クロード殿下は私の予定を私よりも把握しているらしい。
吃驚するくらい本当の事を言われて、思わず苦笑いを浮かべそうになった。
成人の誕生日は夜会デビューでもある。
昼は家族や近しい人と過ごし、夜は公爵家の邸で夜会が開かれる。
その為に衣装選びやら何やらでこれからもっと忙しくなる予定だ。
「勿論、僕は招待されているからね。」
クロード殿下は得意気な顔でジュード殿下に自慢すれば、ジュード殿下は私を見た。
事実なので頷くと、彼は顔を真っ赤にして「僕も招待してくれ!」と叫んだ。
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クロードの台詞をニヨニヨした顔で打ち込んでました。
そして、どうしてもジュードにはリナリアは素晴らしいレディになったんだと言いたかった。




