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たぶん...悪役令嬢だと思います  作者: 神楽 紫苑
第3章 私リリア!運命が動き出したの。
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青年の素性

「じゃぁ、始めますね!まずはお名前をお願いします。」

なんかよく分かんないけど、質問したら答えてくれるというので遠慮なく質問を始める。

聞き逃しちゃうといけないので、一応…羊皮紙とペンを用意しました。


「むぐむぐ…名前?…無いけど?」

遠慮が無くなった青年は、お腹が空いたからとパンを要求してきたので渡すと…食べながら質問に答えた。


「え?答えになってないけど?…名前無いのね…じゃぁ…名無しの権兵衛さんで良い?」

「え?やだよ!仮に付けるにしても、もっとマシなヤツにしろよ!」

名前が無いと言うので適当な名前をつけて羊皮紙にサラサラと書いていれば、青年は慌てて私のペンを止めた。

仮につける名前など…本名じゃないのだから良いではないかと首を傾げる。


「もっと普通のにしろよ、誰だよ権兵衛って…。そもそもそれって名前なのか?」

今度は青年が首を傾げてしまった。

最初からこれでは先が思いやられるなと、小さく息を吐くと…何故かムスッとして睨まれてしまう。


「じゃあ……えー?…えーっと…えーっと…ペルノ様で良い?」

「ん?あー…あぁ、それなら良いか。あと、呼び捨てにしろよ。」

青年はウンウンと頷き、何度かその名を呟いた。

どうやらお気に召したようだ。


「じゃぁ、ペルノは何歳なの?」

羊皮紙に改めて名前を記入し、次の質問に入る。

何故か名前を何度も呟きながら、顔を上げたペルノは「18。」とだけ答えた。

その答えに私もリオンも吃驚した顔で固まった。

見た目で言えば…年下だと思っていたからだ。

それこそ、リナリアと同じ位かな?とか思っていただけにかなりの衝撃だった。


「あん?何だよ…どうせ童顔だわ!それに…ずっとスラムで育ったんだ…栄養が足りてないんだよ。」

名前を呟いていたかと思えば、私達の反応にイライラとしプイッと首を背けてしまった。

…かと思えば何故か直ぐに此方に向き直り「あんたらは?」と逆に質問されてしまった。


「私とリオンは双子でもうすぐ十六歳、アレス…彼は貴方と同じ十八歳よ。」

サッと紹介すれば興味なさげに「ふーん。」と言って、再びパンを齧る。

彼からはそれ以上聞かれなかったので、次の質問に移る事にした。


「ペルノはスラム育ちって事だけど、チャミシル様とはどこで出会ったの?見た感じ…血縁かなと思ったんだけど。」

一番気になっていた事を質問すれば、ペルノは不機嫌そうに眉を寄せ…溜息を吐いた。

やはり…聞いてはまずかったかと不安になっていると、彼は話し出す。


「面倒だから質問は止めろ…俺が話す。…俺の母親は半獣でチャミシル家の領地で娼婦をしていた。」

話によると、娼館に来た前辺境伯様がペルノの母親を気に入り…通い続けて孕ませた。

だが、前伯爵様は婿養子でペルノの母親がペルノを身籠った事を知ると認知もせず…手切金だけ渡してきたらしい。

しかも娼館にいると迷惑だからと店からも追い出され…ペルノの母親はペルノを産んですぐに儚くなったそうだ。

それからずっとスラム街で暮らしてきたが、そんなある日…チャミシル様がペルノの前に現れる。

彼女は卑しい者を見る目でペルノを一瞥すると嫌な笑みを浮かべ彼を強引にワインバル王国へ連れて行き、公爵へと引き渡した。

チャミシル様が邸を出る際に囁いた「お前のような奴と血が繋がっているかと思うと反吐が出る。」という言葉で、彼は自分の置かれた状況を何とは無しに理解したようだ。


「俺の方こそ…あんな奴らと血が繋がってると思うと反吐が出る。」

最後に言った彼の言葉は消え入りそうな程に小さい声だった。

彼の話を周囲は静かに聞いていて…終わってからも誰も声を出そうとはしなかった。

そんな空気に溜息を吐いたペルノが「同情とかいらないから。」と呟く。


「…一つだけ、聞いても良い?」

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