ヤキモチとダメ出し
今日は短めですみません。
「もう…あんな事はしないと約束して欲しい。」
アレスが真剣な顔で私を見つめるから、その勢いに負けて思わず頷く。
「他の男に近づき過ぎだ…あんなに近づく必要なんかなかっただろ?」
不機嫌そうに私を睨み、スッと頬を撫でるアレスはいつもと違って少しだけ怖いと思った。
驚いた顔で固まる私にアレスは頬の手をそのまま首の後ろに回すと、私をアレスの胸へと抱き寄せる。
「はぁ…気が狂うかと思った。あの男の首を噛みちぎってしまいたくなった…。」
アレスは私の方へと顔を埋めると、深い溜息と共に漏らした言葉にドキリとする。
なんて声をかけたらいいか分からずに暫くハクハクと口を動かしてみたがキュッと口を結ぶと、一度だけ深呼吸をしてアレスへと向き直った。
「ごめんなさい…浅慮だった。アレスが同じ事したら私だって嫌なのに自分の事ばかり考えてた…。」
アレスの美しい瞳を覗き込み、謝罪すれば…アレスは険しい顔を少しだけ綻ばせて私を見つめ返した。
その顔に思わず胸がキュゥッと締め付けられる。
「…ごめんなさい、アレスに嫌な思いさせたって言うのに…アレスが私の為に心配したりヤキモチ焼いたりしてくれるのが凄い嬉しい。」
今度は私がアレスの胸へと顔を埋めると、アレスがピシリと一瞬だけ動きを止めたかと思えば…何故か力強く私を抱き締めた。
アレスの腕に閉じ込められた私は身じろぐ事も出来ずにアレスに全てを預けて目を閉じる。
「もう本当…リリアが可愛すぎる。」
耳元で囁かれた声に体が反応したが、動く事も出来ず…只管に顔が熱かった。
「…もう良いんじゃない?」
どれくらい経っただろうか…隣から聞こえるリオンの声に我に返る。
振り返れば、リオンが呆れた顔で私を見ていた。
いや、リオンだけではなかったようで…気が付けばブランケットに潜っていた獣人達や俯いていた青年までもが私達を見ていた。
ソッとアレスの胸を押すと…アレスが名残惜しそうに閉じ込めていた腕を開き私を解放する。
「僕からも一言良いかな?」
居住まいを正すと、リオンが良い笑顔で私に話しかけてくる。
コクンと頷けば更に笑みが深まったように見えた。
「リリアはまだまだ僕の足元にも及ばないよね。もっと、あざとくなきゃ!それにもっと甘い声が出せないとダメ。姿勢もそう…目線とか角度とかタイミングも全然ダメだった!」
リオンのダメ出しに何の事を言っているのかと思わず首を傾げそうになり、直ぐに公爵への猫撫で声の事だと気づく。
肩を竦めるリオンに苦笑すると…リオンもフッと顔を綻ばし、何故か“上手な甘え方“講座が始まる。
獣人達も面白いのかブランケットから顔を覗かせ私と共にリオンの話を聞いていたのだった。
ブクマ・評価・感想・誤字報告ありがとうございます。




