それは轟きとともに
お兄様は本当によく固まる方なのだなとそんな感想を抱いた。
プリンを食べて固まったままだ。
「あの…お兄様?」
声をかけて暫くすると残りのプリンをすごい勢いで食べ切ってしまった。
「これはプリンと言うの?初めて食べたけど、とても美味しいんだね。」
ホワッと笑みを溢し食べた器を見つめるお兄様。
「プリンはどこで買えるの?また食べたいのだけど…領地で販売してるの?」
お兄様はとても気に入ってしまったらしく、どうしても欲しいのか質問が止まらない。
「売り物では無いですが、領地の邸では食べられますよ。料理長のバルトさんが作ってくれます」
「そう…じゃあ、今度行った時に食べられるのかな?」
少し残念そうにしながらも、また食べられるのが分かったのか嬉しそうだ。
「では、次に領地に来た際にすぐに食べられるようにバルトさんに話しておきますね」
「うん!よろしくね、リオン、リリア!」
よしよしと私たちの頭を優しく撫でるお兄様に、なんだか可愛くて笑みが溢れてしまう。
本当はここでも厨房を借りればすぐに出来るのだが、それは色々とまずいので黙っておく。
ごめんね、お兄様。
「領地は楽しい?どんな事をして過ごしているの?」
お兄様は私たちの暮らしが気になるのか興味津々に領地のことを聞いてくる。
「とても楽しく過ごしてます。朝は早いですが、お祖父様とお祖母様に色々と教わってます。
あと、視察も兼ねて領地の中で買い物したり、温泉にも行ったりしてますよ。」
「買い物に温泉かぁ、楽しそうだね。僕も長期休暇に入ったら遊びに行くよ!」
「「はい。お待ちしてます!!」」
お兄様が領地に来てくれるのが嬉しくてリオンと2人で返事をすると、お兄様はまた私たちの頭を撫でた。
頭を撫でるのが好きなのかな?
暫くお兄様と談笑していると邸の方で何かの叫び声が聞こえ始めた。
何を叫んでいるかは分からないが外まで聞こえるほどの大音量である。
その声を聞いたお兄様が突然、不機嫌になる。
「リナリアが起きたのか…」
「「リナリア!?」」
私もリオンも声の正体を聴き吃驚する
4歳児にこれほどの声が出るものなのか?
拡声器でも使ってるんじゃ無いかと言うくらい大きな声と、轟きが聞こえる。
ドドドドォ…と獣が突進してきそうな勢いで邸からリナリアが飛び出してきた。
ドレスを託し上げ、中のドロワーズが丸見えだ…
「お兄さまー!お姉さまー!」
その勢いのまま私たちの手前で見事なスライディングを決めた!
そう…顔面からの見事なスライディングを…