本来の目的
「あ…あの…?」
天を仰いだまま動かなくなってしまった王妃様が心配になり声をかけると、王妃様はコホンと一つ咳払いをし姿勢を戻した。
そんな王妃様の背を優しく撫でる国王陛下…こうしていれば普通の夫婦にしか見えない…二人の仲の良さが伺える。
「失礼。つまり…リシェは自分が“神に愛されし者“だから王太子になったと思っていたのね?」
王妃様の言葉に私達はコクリと頷くと、王妃様も国王陛下も困った顔をする。
被っていた仮面はもう必要ないようだ。
「確かにリシェが王太子となった決め手は“神に愛されし者“だったからと言うのが大きい。だが、それだけで私達はリシェを王太子に選んだわけではない。」
「そうよ!でも…そうね、ちゃんと話をしなかった私達のせいなのかも知れないわね。」
国王陛下と王妃様は互いに顔を見合わせると、沈黙が訪れる。
「…もう一つ宜しいでしょうか?」
今まで黙っていたリオンが挙手をすると、国王陛下も王妃様もリオンの方へと顔を向けて頷く。
それを確認し、それまで黙っていたリオンが話し始めた。
「リシェブール王太子殿下は、現在…私達の邸に滞在しています。光栄な事にリシェブール王太子殿下とお話しする機会も多いのですが、お話を伺っていて気になる事がございました。」
「うむ、それはどんな事だ?」
国王陛下はリオンの言葉にとても興味深そうに頷き、聞き返した。
「はい。私達の家族の会話を聞いたリシェブール王太子殿下が“家族仲が良い事“を羨ましそうに仰ったのです。今日…国王陛下と王妃様とお話しする機会を頂き、先程から会話を聞いている限りではとても仲が良いのだなと思いました。なので、あの時のリシェブール王太子殿下の言葉が妙に引っかかったのです。」
リオンが話し終えると、国王陛下と王妃様は再び顔を見合わせていた。
確かに、リシェ様と話した時にリシェ様がそんなような事を言っていた気がする。
“僕には無縁だ“と…。
でも、今日…国王陛下と王妃様と話した感じからすると…そうは思えなかった。
「リシェがそんな事を…確かにリシェが王太子に選ばれてから、あまり話す機会が無かったかもしれぬな。」
「えぇ、私もです。」
リオンの言葉にシュンと落ち込んでしまった国王陛下と王妃様…。
そんな二人にリオンは和かに微笑む。
「子供の立場から言わせて頂きますが…是非!今後はたくさん話をして下さい。私は家族と話す時間がとても好きです!きっとリシェブール王太子殿下も最初は戸惑うかも知れませんが、喜んでくれると思います。」
二パッとした笑顔で国王陛下と王妃様に告げると、二人は顔を見合わせ…リオンへと笑顔で返した。
少しでもリシェ様が家族と分かり合えると良いな…と、私達も笑顔になった。
「すまない、本題の前にえらく脱線してしまったな…。」
暫くは和やかにお茶をしていたが、話が途切れたタイミングで国王陛下が改って話し出す。
そうだった…此処に来た目的は別の事だったと、私達も姿勢を正した。
「獣人達の人身売買の件だが、犯罪に関わった者達の捕縛及び獣人達の保護を頼めないだろうか。犯罪に関わった者達の捕縛には我が王国の騎士団と当たって欲しいと思っておるが…獣人達の保護の方は居場所の検討がついていなくてな。」
犯罪に関わった者達は既に国王陛下の耳にも入っていたようで、これからの計画はスムーズに進みそうだなと頷き…私は国王陛下へと発言を求めた。
「獣人達の保護ですが人命が関わっておりましたので誠に申し訳ないのですが、登城する前に保護して参りました。出来れば獣人達をこのまま私達に自国へと送らさせて頂けないでしょうか?」
私の言葉に国王陛下が一瞬だけ瞠目したが、直ぐに表情を戻し頷く。
「有難い申し出、感謝する。それと…獣人達の保護もだ、有難う。」
獣人達を無事保護した事に安堵した顔をし、国王陛下の表情が和らいだように見えた。
「では、騎士団と共に犯罪に関わった者達の捕縛へ向かってくれ!」
「「「かしこまりました。」」」
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遅くなって慌てて更新なので、誤字が多いかもしれません。
すみません。
 




