ワインバル王国の国王陛下と王妃様
「此方です。」
案内されて入った部屋は、所謂サロンだった。
てっきり謁見の間と思っていたので、思わずリオンとアレスと顔を見合わせてしまう。
中には既にワインバル王国の国王陛下と王妃様が居り、二人はお茶をしていた。
国王陛下も王妃様も私達の両親と同じくらいの世代だろうか?
国王陛下は紅榴石色の髪を一つに束ね、濃い琥珀の瞳をしていた。
王妃様は淡いシャンパンゴールドの髪を夜会巻きにし、陛下の髪と同じ紅榴石色の石が嵌った豪華な装飾のアクセサリーを付けていた。瞳の色は髪の毛よりも少しだけ濃い黄金色をしている。
「他の者は下がれ。」
国王陛下が私達を一瞥すると臣下方を下がらせ…サロンには陛下方と私達だけになる。
想像していたのと違う事ばかりで戸惑っていると、座るように勧められた。
「お初にお目にかかります。オステリア王国から参りました、リオン・クリスティアです。」
リオンを筆頭にアレスと私も自己紹介をし、席へと着くと国王陛下と王妃様は嬉しそうな笑顔を返した。
席へと着けば直ぐに紅茶を差し出されたので、一口だけ口をつける。
「此度は我が王国の問題の事への協力、感謝する。此処はサロン故、楽にしてもらって構わん。」
「「「ありがとうございます。」」」
緊張する私達の為に国王陛下が先に話し始めた事に安堵する。
もしかしたらサロンでお茶会という形にしてくれたのは、私達への配慮なのかも知れない。
「リオンとリリアと言ったな?二人はリシェと同じ“神に愛されし者“と聞いたが?」
「「はい。」」
国王陛下が興味深そうに私とリオンを交互に見て、一つ頷く。
隣の王妃様はずっと笑顔を張り付けたままで…感情が1ミリも読める気がしない。
リシェ様は国王陛下に雰囲気がそっくりな気がする。
逆にロマネス殿下は王妃様に似ているのかも知れない…得体の知れない感じが少し不気味に思う。
「二人は公爵家と聞いたが、家督はどうなる?“神に愛されし者“が継ぐのだろう?」
国王陛下の言葉に私とリオンは顔を見合わせと、リオンがコクリと頷いたので返答はリオンに任せる事にする。
「公爵家は兄が継ぎますが、僕達は二人一緒に領地を継ぎます。」
幼い日に家族と話した家督の話を思い出しながら、リオンは国王陛下へと答えた。
リオンの答えに国王陛下は一瞬だけ瞠目し、直ぐに表情を戻す。
「二人はそれで良いのか?」
表情は戻ったが、信じられないと言った感じの声音で国王陛下に問いかけられた私達は笑顔で「はい。」と答えた。
その答えに国王陛下と王妃様の雰囲気が少しだけ暗くなった気がする。
「貴方達は、とても楽しそうに“神に愛された者“の話をするのね?」
それまで黙っていた王妃様が、笑顔のまま…どこか寂しそうな声で問いかけてきた。
私もリオンも笑顔のまま頷けば、今度は王妃様が話し出す。
「リシェは…あの子は“神に愛されし者“の話をする時、無表情になるの。あの顔を見る度に申し訳ないような気分になるのは何でなのかしらとずっと疑問でいたの。」
そう話す王妃様の顔は先程と変わらず笑顔の仮面を被ったままだが、声は深く沈んだように重く感じた。
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