これからの事
「体調が悪い方はいませんか?」
馬車の端で一塊になっている獣人達に声をかけると、獣人達はフルフルと首を横に振る。
遠慮していたりしたら心配だと、アレスとキャティ様にお願いして再度聞いてもらったが…どうやら大丈夫そうだった。
馬車に乗る際も、走り出してからも外に出たがる獣人がいない事に安堵する。
「寒いといけないのでブランケットを使って下さい。あと…馬車に酔ったり具合が悪くなったら遠慮なく教えてくださいね?」
極力…優しい声を出すように努めるが、この見た目である。
怖がらせていないかと心配になってしまう。
「皆様に謝らなければならない事がございます。本来ならば入国後すぐにワインバル王国の王城への挨拶に伺わなければいけなかったのですが、皆様が心配で…先に救出してしまいました。これから王城へと向かいますが皆様はどうぞ馬車にいて下さい。」
深々と頭を下げると獣人達は互いに顔を見合わせている。
申し訳ない事をしてしまったと落ち込んでいると、アレスが優しく私の頭を撫でてくれた。
「馬車には僕が防音や結界といった魔法をかけて、外部からは皆様を上手に隠します。」
リオンが獣人達の安全の為に魔法を提案すると、キャティ様が獣人達へと近づき何かを話しているようだった。
「今後の予定ですが、王城で挨拶を済ましたら…その足でサッと今回の人身売買に関わった人達を捕縛しオステリア王国へと帰国します。暫しお待たせしてしまう事となりますが、どうかご了承下さい。」
私の言葉に何故か獣人達はポカーンと口を開け呆けていた。
何か変な事でも言っただろうか?
「オステリア王国に戻りましたら、私達の邸でお食事と休息をとって頂き…体調を見て獣王国へと送り届けたいと考えております。もしくはご希望の場所でも構いません、皆様がどのような事情で事件に巻き込まれたかを存じ上げませんので個々に希望を取りたいと思っております。」
ワインバル王国を出た後の予定も伝えると、再びポカーンとした顔で私を見る獣人達。
何か…問題発言でもしただろうか?
出来る限りの事をしたいと思っての発言だったが、逆に何か迷惑だと思うような事があったのかも知れない…と不安に思ってアレスを見た。
アレスは苦笑しながら、再び私の頭を優しく撫でる。
やっぱり…何かをやらかしてしまったのかも知れない。
「あくまで予定ですので何かご要望がございましたら、その都度…お話し頂ければと思います。」
何が正しくて何が間違っているのかも分からないので、とりあえず獣人達から要望が出たら応えるようにしようと声をかけておく。
獣人達は互いに顔を見合わせていたが、暫くするとブランケットへと包まるようにして目を瞑った。
その様子を見て、少しでも体が休まればと願う。
ワインバル王国の王城は…一言で言うと“派手“だった。
いや、煌びやかと言った方が正しいのかな?
赤煉瓦作りで装飾が金とか…お城ではあまり見ないスタイルに思う。
しかも煉瓦と装飾との割合が半々…もしくは装飾の方が多いように感じるのは気のせいではないだろう。
城門で馬車を降りると身分証代わりのギルドカードを提示し登城理由を告げると事前に連絡が入っていたのか、直ぐに身体検査を行い馬車を乗り換える。
ここで一旦、獣人達とは離れてしまうが…馬車を覗かれても大丈夫なようにリオンが少し前に魔法をかけていた。
城門から暫く進めば、高く聳え立つ一番ド派手な塔の入り口で馬車は止まり…偉そうなおじ様方が数名で私達を迎え入れてくれた。
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