スキルの影響
「で?どうしてこうなったんだい?」
リシェ様の侍従さんと無事に合流し、皆んなで仲良くおやつを食べると私は私室へと戻った。
聖女様におやつと共にリシェ様との事をサッと手紙に認め送ると、すぐに返事が来る。
手紙の内容を簡単に言うと「とりあえず説明に来い」だった。
クロード殿下とも話してなかったので、その旨も伝えると「クロード殿下も呼びなさい。」と返ってきた。
お兄様にその事を伝えると、翌日の午後に皆んなで教会に行く事になって……今は聖女様に問い詰められてる所です。
「えーっと…何でかは分からないんですが…恐らくリシェ様が悪役に向いてなかったからですかね!」
「え?僕のせい!?」
聖女様の問いかけに私が答えると、リシェ様が叫んだ。
とりあえず、話が終わるまでは黙っていて欲しいかなとニッコリ微笑むとアレスが間に入って壁を作る。
リシェ様を見てはいけないようです。
「兄妹で聖女様との話をしていたら、リシェ様が盗み聞きしていたので折角だから一緒に話をしようと部屋に入れたら…こんな事になったんだよね!」
リオンがエッヘンと胸を張って聖女様に伝えれば、聖女様は深い…それはもう深い溜息を吐いた。
どうやら聖女様はお疲れのようだ。
「…その提案もリリアがしたんだろう?」
「え?何でわかるんですか!?」
深い溜息の後、聖女様は呆れたように私に問いかけた。
まさにその通りだったので、吃驚して聞き返す。
「いいかい?リリアのスキルは“使おう!“と思って使う時以外にも、スキルの影響で直感的に良い選択をしてる時があるんだよ。」
「ほぇー…、凄いスキルなんですね!」
聖女様の説明に感心していると、聖女様は頭を押さえて再び溜息を吐く。
「思い当たる事、いっぱいあるだろう?」
そう問いかけられ暫し考える。
確かに…予想外ではあるけど、良い事に転がる事が多いような気もする。
ふんふんと頷いていると、聖女様は私から視線を外しリシェ様を見た。
「随分、面白い猫をかぶっていたみたいだね。」
ニヤリと笑う聖女様にリシェ様は苦笑いで応える。
その様子をクロード殿下は笑顔を崩さないまま見ているが…恐らく内心は混乱しているのだろう。
頻繁に手を組み直しているのが、動揺の表れだと私は思っている。
口の端を上げ、クロード殿下の様子を見ているとリオンに小突かれた。
「チャラ男仕様は自分で考えたのかい?」
「チャラ男…?僕はそもそも女の子と話すのが苦手だったので克服しようと努力していた時期があり、その応用であんな感じだったんです。でもダメですね、彼らには直ぐに見破られちゃうし…もっと反抗してみたかったんですけど…。」
苦笑の顔から困った顔になり、少しだけ諦めたような顔になったリシェ様に聖女様は嬉しそうに笑う。
「自然な顔が一番しっくりくるじゃないか。それに…反抗なら他の方法でも出来るだろ?」
優しそうな笑みだった聖女様は私とリオンに視線を移すと先程のニヤリとした笑みを浮かべる。
どうやらイタズラは私達に学びなさいって事のようだ。
…いたずらっ子じゃ無いんだけどね!!
「…ところで、リシェはチャミシル嬢とはどこで知り合ったんだい?」
話が切れたタイミングで、それまで黙っていたクロード殿下がリシェ様に問いかける。
そういえば…と私もリシェ様を見ると、リシェ様はコテンと首を傾げた。
あれかな?一緒に住んでるとリオンの“コテン“が移るのかな?
「それなんだけど、僕…チャミシル嬢の事は知らないんだよね。どんな子なの?」
リシェ様のために簡単にチャミシル様の容貌を伝えると、更に首を傾げる。
嘘をついているようには見えないので、本当に知らないのだろう。
…だが。
「リシェ様が知らないって言うのは、おかしいのよね。」
私の言葉にリオンもクロード殿下も同意し頷く。
リシェ様が企んで公爵家を動かしたのだ。
顔を合わせないにしろ、誰が関わったのかくらいは把握していないと…どこでリシェ様が関わっていた事が露呈するか分からない。
それなのに、リシェ様は知らないと言う…。
「…リシェ様以外にも他の誰かが関わってるって事?」
ボソッと呟いた言葉にクロード殿下もリシェ様も眉間に皺を寄せる。
ここでリシェ様以外の人間が関わったとなると厄介だ。
それこそ…その人間の目的を考えると…。
「リシェ様は逆に利用されて貶められる予定だった?」
更にボソリと呟くと、リシェ様が立ち上がる。
「そんな…僕が逆に貶められそうだったって…どういう事!?」
動揺を隠す事なく声を荒げるリシェ様を隣に座っていたクロード殿下が宥める。
自分の計画を進めていたのに、いつの間にか他の人の掌で転がされていたなど笑えない。
「早急に獣人達を匿っている邸に確認に行った方が良いかもしれません……が、リシェ様は動かない方が良いですね。」
「え?何で?」
人身売買に関わった獣人の安否が気になる…。
「ここでリシェ様が獣人達に会いに行っちゃうと…詰んじゃうよね。」
「そうだね、きっとそのタイミングでリシェ様が全ての罪を被らされるよね。」
リシェ様を守る為にも、ここはリシェ様には大人しくしていてもらいたい。
動いた瞬間…それこそ、邸で待ち構えられていると一発アウトだろう。
「と、言う事で!私とリオンに公爵家及び商人の捕縛と獣人の救出を命じてもらえないでしょうか!」
私の言葉にリオンもウンウンと頷き、クロード殿下を見る。
クロード殿下は少し困った顔をしながらも、リシェ様に何かを確認し頷いてくれた。
更に私達がワインバル王国で好きに動けるよう、根回しをして頂けるそうだ。
「ほらね…リリアは無意識に選択しているんだよ。」
私達の会話の輪から外れた聖女様の呟きは誰の耳のも届かないのだった。
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折角ご報告頂いているのに申し訳ないのですが、ご了承下さい。
普通に間違えてる時も多いので誤字報告はとても助かっております。




