庭園でティーブレイク
私とリオンは部屋に戻り、動きやすい服装に着替えて庭で待ち合わせた。
庭には色んな花々が植えてある。
どれも領地にある花々とは異なった。
今は暦で11月だが、不思議なことに季節が関係なく花が咲いている。
リオンは薔薇の花に見惚れていた。
『お待たせ!いい香りがするね』
コッソリと近づいて、テレパシーを送る。
リオンはビクッと肩を震わせ、キョロキョロとして私を見つけた
『もう!驚かせないでよ。…なんで声を出さないの?』
コテンと首を傾げるリオン
あざと可愛すぎるだろ!
『いつものように話をして、万が一にも前世の言葉を誰かに聞かれたらまずいから。面倒だけどこのままでも良い?』
うっかり変な言葉を口にして、バレてしまえばまずいよね。
リオンとは気兼ねなく話したいしね。
『もちろん。リリアと話せるならどっちでも良いよ』
フワッと笑うリオンに思わず目を瞑り仰反る…
可愛くて眩しいとは…
『ふふっ。リリアも可愛いよ』
嬉しそうに私にも可愛いと言ってくれるので私も笑顔になってしまう。
言葉にしてないのに仕草で気付くとは…
『薔薇はいい香りがするんだね。ボク、知らなかったよ』
『うん。香水にもなるくらいだからね。私も薔薇の香り好きだな』
2人でゆっくりと薔薇を愛でながら、香りを嗅いでいく。
品種が違えば香りも違うから、とても楽しい。
『お茶にも使えるんだよ。実もお茶として飲む事が出来るの』
花弁は勿論だが、咲き終わった後の実を乾燥させて作るローズヒップティーは酸味があって美味しい。
よく見ればいくつか実をつけている薔薇を見かける。
不思議な花はずっと咲いている訳ではなく、ちゃんと成長してるのが分かる。
お茶の話をしていたら、お菓子が食べたくなってしまった。
『リオン、テーブルでお茶にしない?』
『うん。お菓子も食べよう!』
侍女のマリーがお茶の用意をしてくれる。
てっきりお邸の侍女がやると思っていたから吃驚した。
「リオン様、リリア様、お茶のご用意が出来ました。料理長のバルトからお菓子を預かっておりましたので、お召し上がりください。」
領地の邸を出る前にバルトさんが用意してくれたそうだ。
私の好きなプリンである。
領地の邸ではハンバーグを作った翌日にプリンも試作していた。
シンプルな材料で案外簡単にできるプリンをバルトさんは1回でマスターしていた。
さすがは料理長!仕事が出来る。
ほろ苦いカラメルソースが蕩けるプリンとよく合う。
個人的には固いプリンも好きだ。
私もリオンもあまりの美味しさに両手で頬を包む仕草をした
「「トロトロでうまうまっ」」
何を言ってるのかわからない言葉でシンクロさせる双子。
それをマリーは微笑ましく見ていた。
「それは何を食べているの?」
突然、後ろから声がして頬に両手を置いたポーズで振り返る。
リオンも同じポーズのままだ。
「…かわっ!」
私たちを見たリーマスがその場で赤面して固まった。
しばらく動かずにいたが、私たちの手元に目をやると不思議そうに近寄ってきた。
「それは何?」
初めて見るプリンをまじまじと見つめ、再度問われる。
「プリンという牛乳と卵を使ったお菓子です。」
説明するとリーマスはコテンと首を傾げる。
リオンがするポーズにそっくりで、改めて兄弟だと思った。
リーマスは私とリオンの間に椅子を置き着席すると、マリーに「僕の分もある?」と聞いて出してもらう。
そして不思議そうにプリンを見て、匂いを嗅ぎ…スプーンで掬って口に入れ…目を見開いて固まった。