妥協しまくりトライフル
甘い物…と言っても、そんなにガッツリ食べちゃうと夕飯が怪しくなるし…。
だからって今更無しにって言ったら、ギラついてるリオンとか期待に満ちたリナリアやリシェ様からブーイングが来そうだし。
うーん…。
ガサゴソと食糧庫を漁り、材料を手に取る。
先ほどと同じホットケーキの材料にクリームチーズ、生クリーム…あとは適当なフルーツを…?
葡萄でいいかな。
クリームチーズは温めのお湯で湯煎して柔らかくしておく。
小さな鍋にお湯を沸かして、葡萄は房から実を外してサッと洗っておく。
蒸し器を用意してお湯を沸かし、ホットケーキの時と同じ生地を作る。
小さな器にホットケーキ生地を流し入れ、蒸し器へ入れて蒸す。
葡萄はしっかりとお湯を沸騰させた小鍋に20秒入れたら、氷水に移し急速に冷やす。
ザルに空けて、ツルンと皮を剥く…このやり方を知ってから家で葡萄が余ると必ずやっていたのだ。
葡萄が余る…ってどんな現象だよと思われるかもしれないけど、一人暮らしなのに葡萄農家さんから沢山貰ったりすると食べ切れないって事が多々あった。
葡萄も売り物にならない物を貰うので傷みが早く、職場の人にも分けたりするけど次の配達時に味の感想を伝えたいから…どうしても自分の取り分が多くなる。
そうなった時には皮を剥いてコンポートにしちゃうのだ。
剥いた皮と砂糖と水とレモン汁を火にかけシロップを作る。
ワインを入れて作る方法もあるけど、入れなくても十分に綺麗な色が出て…ワインの渋みとかないから自然な味がして好きだ。
しっかりと皮からエキスを煮出すと火を止めて、葡萄を入れたら冷ますために氷水に鍋ごと浸ける。
本当は自然に冷ましたいが時間がかかるので、今日は妥協しよう。
蒸し器から蒸しケーキを取り出し、こちらも冷蔵庫で冷やす…こちらも妥協。
生クリームを硬めに泡立て、クリームチーズには砂糖を加えてよく練り混ぜる。
少しだけレモン汁を加えて混ぜたら、そこにホイップクリームを半分ほど入れて泡を壊さないように混ぜる。
チーズクリームの完成です!
手際良く作業してる前にはお兄様、リオン、リナリア…そしてリシェ様が座っている。
人に見られての作業に慣れた私には何の事はないのだが、調理場の人達はどこかギクシャクした動きをしている。
厨房の端とはいえ、王族まで並んでいたら緊張もするのだろう。
「リシェ様の侍従の方は、此方にいらっしゃらなくて宜しいんですか?」
今更な気もするが、王族の方には毒味が必要なんじゃないかと思い聞いてみるとリシェ様はキョロキョロと周りを見渡した。
リシェ様…気づいてなかったの?
「…まぁ、いなくても問題ないよ。作ってるところはずっと見てるし、君たちと同じ物を食べるわけだし。」
侍従さん…今頃、探してないといいけど。
可哀想な侍従さんの分のグラスも一緒に用意する。
グラスはロックグラスなので、蒸しケーキにグラスを乗せてグッと押して円形にカットする。
葡萄のコンポートも荒く刻む。
蒸しケーキをグラスの底に敷き、次にチーズクリームを入れて葡萄のコンポートを乗せる。
その上に残しておいたホイップクリームを乗せる。
一番上には半分に切った葡萄のコンポートを飾り付ければ完成!!
ガッツリ行ける時は同じ順番でもっと重ねたいところだ。
トライフルって言うんだっけ?
あやふやな記憶を元に作ってみました!
「あれ?一つ多くない?」
リオンが鋭くツッコミを入れてくる。
「…リシェ様を一生懸命に探しているであろう、侍従さんの分です。」
「「「………。」」」
「え?侍従の分なんかいらないよ?」
私の言葉に皆んなが無言で答える中、リシェ様だけは不思議そうに首を傾げていた。
ブクマ・評価・感想・誤字報告ありがとうございます。
今年の秋はシャインマスカットを貰いすぎてコンポート作ったら、コンポートもシロップもめちゃくちゃ香りが良くて美味しかったです。
とっても贅沢な事をした自覚はあるけど、悪くするより最後まで美味しく頂けました。




