キャティ様の婚約者
「ちょっと良いかしら?…キャティ様には婚約者はいらっしゃらなかったの?」
先ほどまで深刻な話をしていたが、とりあえず推理を終えたので今は紅茶を飲んで一息ついている。
聖女様は変わらずクッキーをサクサク食べては紅茶をズズズッと啜る…今度お米に出会ったら煎餅にトライするべきだろうか?
それとも紅茶の茶葉を収穫するところに行って緑茶を作るべきなのか悩む。
そんな中…ふと、リオンとキャティ様を見て疑問が湧き起こったので聞いてみた。
「にゃぁ?」
キャティ様はコテンと首を傾げたかと思うと…とても困った顔をした…と思う、猫だから分からないけど…雰囲気的に感じる。
私の問いにリオンも気になったのか、未だに抱き締めているキャティ様の顔を覗き込んだ。
「いるの?…僕のキャティに婚約者がいるの?…いるなら解消しなくちゃね?」
「おいおいおいおい…。」
サラッととんでもない事を言うんじゃない!
でも“運命の番“に出会ったら解消する事もあるって聞いた事があるな。
「にゃ!にゃにゃにゃにゃ…にゃぁ…にゃ…にゃ。」
何かを一生懸命に伝えようと頑張るキャティ様が何だかとっても可愛いが…何言ってるか全然分からない。
キャティ様もどうやって伝えようか悩んでいるのか…鳴くのを止めてアレスを見た。
だが、それを阻止するようにリオンがキャティ様の顔を両手で固定する。
「ダメだよ!僕以外の異性を見ちゃ…メッ!」
「にゃあぅ…。」
リオンの言葉に困ってしまったキャティ様は私の方をチラリと見たので、私も苦笑し…アレスにお願いする。
「キャティ様と会話する時は見ないようにして…通訳だけ頼めないかな?」
「あぁ…リリアも妬いてくれるの?」
アレスは嬉しそうに承諾すると、こちらもとんでもない事を言い出す。
まぁ、私としても出来たらアレスには異性と会話して欲しくないので…コクンと頷く。
それを見たアレスは更に笑みを深めた。
「キャティ嬢のさっきの言葉で良いかな?」
「うん、アレスお願い。」
アレスの言葉に今度はリオンが反応する…。
切り替えが早すぎるリオンにアレスは苦笑すると話し始めた。
「子爵家が没落して直ぐに婚約を解消されたそうだ…お相手に“他に相手が出来た“と言われたそうだよ。」
「「なっ!?」」
それって酷くない?酷くな…い?…っていうかそれって断罪イベントにそっくりじゃない?
…僕の運命の相手は君じゃなかったみたいな?
「…でも、キャティ嬢的にはそんな事はどうでも良いくらい家族の事がショックだったみたいで…忘れていたみたい。」
「「まじかっ!!」」
そんな大事な事を忘れてしまうほどのショックな出来事が彼女にはあったのか…。
そっと手を伸ばしてキャティ様へと触れる…キャティ様も私の方を見て伸ばした手にスリスリと頬を擦り付ける。
「…たくさん、辛い思いをしたのね?」
「にゃぁ…。」
私の言葉に答えるように鳴くキャティ様に胸を締め付けられる。
これからの貴女にたくさんの幸せが訪れますように…と、そっと頬を撫でた。
「辛かった分…僕が君を幸せにするからね?」
リオンが眉間に皺を寄せ…とても辛そうな顔で…泣きそうな顔でキャティ様に向かって呟く。
夢の世界で…何を見たのだろうか?
辛そうなリオンの頬にキャティ様の前足がそっと触れる。
「君が一番辛いのに…ありがとう。」
キャティ様の前足にリオンが手を重ね、眉を寄せながら優しい顔で微笑んだのだった。
ブクマ・評価・感想・誤字報告ありがとうございます。
昨日はとんでもなく長くなってた事に気づきませんでした。




