僕の双子の弟妹
クリスティア家の長男リーマス視点のお話。
リーマス・クリスティア
公爵家の長男として生まれ、8歳になる歳から王都の学園に通い始めて1年以上が経った。
僕には双子の弟妹とその下に妹がいるが、何故か双子は4年前から領地で祖父母と暮らしている。
年に数回しか会わない双子を僕はあまり知らない。
下の妹は母から離れるとすぐに愚図り暴れだすから幼い双子もさほど変わらないかと思っていた。
双子の誕生日が3日後に迫った今日、祖父母と双子は王都の邸に戻ってきた。
久しぶりに会った双子を見て僕がどんなに驚いたことか…
6歳とは思えない落ち着きと、しっかりとした滑舌で息の合った挨拶を目の当たりにして思わず固まってしまった。
僕が6歳の頃でもあんなにしっかりしてなかった。
昼食を摂り双子は部屋へ行き、下の妹もお昼寝のために部屋へと行った。
僕は両親に呼ばれて父の書斎へと入ると既に母と祖父母がいた。
部屋に揃ったのを確認すると、お祖母様が防音の魔法をかける
「先日、視察の帰りに馬車が襲われ崖から転落した」
「なっ!」
お祖父様の言葉に父も母も僕も驚いた
「それで怪我は!なぜ連絡を寄越さないんですか!」
父は凄い勢いでお祖父様に迫り両肩を揺さぶった。
「多少、擦り傷があったがそれだけだ。」
「そんな…馬鹿な…?」
父は信じられないものを見るように目を見開き、言葉を失う。
「やはり…あの子たちは“神に愛されし者“だ。」
“神に愛されし者“
それは、ピンクグレージュの髪にヘーゼルの瞳を持つ
クリスティア家にしか生まれない稀少な存在。
お祖父様も同じ髪と瞳を持っている。
学園に上がる前、父から聞いていた話だ。
“神に愛されし者“はその命が尽きるまで…領地を安寧へと導く。
そして土地は豊かになり、恵まれるそうだ。
更には命が尽きる前に必ず次の“神に愛されし者“が現れ引き継がれていく
だから我が公爵家の領地はずっと安寧なのだと…
生まれる頻度は不規則で…生まれたからと言って今までの“神に愛されし者“がすぐに亡くなる訳でもない。
「だが…二人揃わなければ、その力は発揮されないようだ。」
馬車が崖から転落し、双子に駆け寄ると二人は手を繋ぎ項には薄っすらと紋章が浮き上がっていたらしい。
更に双子は複数の神から愛されているとお祖父様が続けた。
「馬車を覆うように輝いた光は何色かの色で構成されていた。私以上に愛されておるのだろう…」
部屋にいた面々は言葉を失い…ただ立ち尽くすしかなかった
これがどんなに凄い事なのか僕でも理解できる。
「私は“神に愛されし者“に選ばれもしなかったが、あの子たちはそんなにも神に愛されているのですね」
父は力なく俯くと顔を両手で覆う。
公爵家を継ぎ宰相の職にもついた父だが、領地だけはお祖父様から継ぐ事が出来ずにいた。
双子が生まれた瞬間から…彼らが領地を継ぐことが決まり、そして双子だけが領地に行ったことも今なら理解できる。
そして、その力を持つ双子は他の領地から命を狙われる危険がある事を知った。
お祖父様も幼い頃から自身を守る術を身に付け、騎士団では伝説とされている。
そんなお祖父様に双子は毎日鍛えられていると聞くと、6歳とは思えない姿勢に納得するしかない。
「この事は他言しないように!誕生日パーティーが終わったら、あの子たちに話そうではないか」
お祖父様はそう告げると部屋にいた面々は頷き、話は終わった。
いずれ公爵家を継ぐ僕は今はとても複雑で、心の中がグチャグチャだ。
領地が欲しいとは思わないが…継げるのなら継ぎたいという気持ちも何処かにあって
でも父の仕事にも憧れる自分もいる。
同級生には第一王子のクロード殿下がいて特に仲が良いし、将来は一緒に国と彼を支えたいとも思う。
そしたらきっと領地までは手が回らない。
そう考えが纏まった頃、祖父母が目の前にいたことに気づき吃驚する
「公爵家の長男のお前に領地を継がせてやることが出来ずにすまぬな。」
お祖父様は僕の頭を優しく撫でる。
温かくて優しい手、でもゴツゴツしていて力強い手でもある。
この手で双子を守ってくれるのだろう…
久しぶりに見た双子は凛としていたが、どこか可愛くて僕も大好きだ。
大好きな双子をこれからも守って欲しくて、僕は笑顔で応える。
「領地は二人が導いてくれるなら、僕はこの公爵家を導いていきます!」
力強く宣言すると祖父母も父母も嬉しそうに微笑んでくれる。
僕は部屋を出ると双子に会いたくなって、駆け出した。
お邸では走る事はいけないけども、早く会いたくて思わず走り出しそうになる。
ーーーーーそして、僕が侍女長に捕まったのは言うまでもない。
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