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たぶん...悪役令嬢だと思います  作者: 神楽 紫苑
第3章 私リリア!運命が動き出したの。
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夢の世界②

リオン視点の続きです。

再び景色が変わる。

家族を殺した男が邸を乗っ取ったのか、書斎のソファーで偉そうに踏ん反り返っていた。

そして男の前には先程の少女と…肥え太った気持ちの悪い男が諂っていた。

「その娘は幾らで売れる?直ぐにでも引き取って貰えないか?」

踏ん反り返って座った男は嫌な笑みを浮かべて、少女を舐めるように見ると…肥え太った男に声をかける。

肥え太った男も少女を舐めるように見て、嫌な笑みを浮かべた。


「金貨10枚…と言ったところでしょうか?生娘なのでしょう?」

ニヤニヤと気持ち悪い顔で男達は少女に値を付け…話し合う。

二人の視線を受けた少女はずっと無表情のままだった。

どこか…人生を諦めたかのように見える少女を男達は売買した。


猫が僕の腕から離れ、それを追うと…また景色が変わる。

薄暗い倉庫のような場所に様々な獣人がいた。

そこには先程の少女もいる。


肥え太った男は、どこかの貴族と話をしていた。

先程までの男と違って気品があるように思う…上位の貴族なのかもしれない。

彼らは囚われた獣人を見ては嫌な笑顔を浮かべる。


肥えた男が獣人達に何やら薬を飲ませようとするが、獣人達は抵抗する。

すると男達は鞭や棒などで獣人達を叩き大人しくさせる。

先程の男は殴られて弱っていく彼女達を嫌な笑みを浮かべて見ていた。


無理矢理に薬を飲まされた獣人達は、暫くすると倒れていく…。

体に害がある物だったかと心配になり近づけば、獣人達は眠らされているだけのようだった。

それから数分後…眠っていた獣人達は次第に獣化していったかと思えば、完全獣化してしまった。

男達は獣人を連れ出し…国境付近へと馬車で移動していく。


肥えた男と貴族の男は途中で別れると、肥えた男は国を囲うようにある塀へと移動し…例のオステリア側から壊された穴の辺りまで来ると塀の前で待機する。

どれくらい待っただろうか、突然…オステリア側から穴を通して石ころが投げられた。

それに気づいた肥えた男は小さい獣人から順に穴を通していく。

完全獣化した少女も通された。


最後にオステリア側から札束が放り込まれ、肥えた男は嬉しそうに札束を回収し帰っていく。

あれが売買したお金なのだろうか?

僕は塀を見上げながら…あの獣人の少女を思った。

グラリと視界が歪み、再び景色が変わる。


次の景色は、あの獣人と出会った東の森だった。

森に差し掛かり、少女は売られるくらいならと思ったのか突然馬車から飛び降りた。

死に方を…選んでいるのだろうか?

地面へと転がり落ちると、直ぐに体を起こし勢いをつけて駆け出せす。

馬車は停まったものの…誰も追っては来なかった。


一心不乱に森を駆け抜け、少女は獣化を解くとキョロキョロと何かを探す素振りを見せる。

何かの音を聞き分けたのか、少女は再び駆け出す。

…この先は僕とリリアが見回りをしていた辺りになるな…。

少女の視線の先に…一瞬だけ僕の姿を捉える…が、そこへ森の大蛇が邪魔をするかのように現れた。

それでも進もうとする彼女に森の大蛇は襲いかかり…彼女は大蛇の体に巻き取られてしまう。

「キャァァァ………」

大蛇に巻き付かれた体はどんどん締め上げられていき、彼女は堪らず泣き叫ぶ…。

完全獣化を試み、なんとか大蛇から逃れたが…全身を砕かれ息をするのも苦しそうだった。


そこに僕とリリアが現れると…僕が彼女を抱きしめた。



『もう…ダメだと思った…。』

突然、どこからか声が聞こえる。


『助けてくれて、ありがとう…とても温かい。』

声はどうやら、僕が助けた少女から聞こえてくるようだ…。

息をするのも大変そうなのに、僕に感謝を伝えてくる彼女。


『どうせ死ぬのなら…この腕の中が良い。此処は…とても温かくて…優しい匂いがする…馬車で感じた良い香りは…貴方だったのね?』



彼女の言葉が切れると、ふっと目の前が暗闇に包まれた。

目の前にいるのは、彼女だ。

完全獣化を解き、彼女は少女の格好で僕を見つめている。


「貴方に…どうしても感謝を伝えたかった。生きる望みも、気力もなかった私だけど…貴方にもう一度だけ逢いたかったの…。」

淡い光に包まれた彼女は僕へと近づいてくる。

美しい紫がかったシルバーの髪と、淡い碧い瞳は…僕よりも幼く感じる。


「僕も逢いたかった…体はもう大丈夫?辛いところは無い?」

歩み寄ると、透き通る程に美しい頬を撫でる。

彼女の甘い香りに思わず抱きしめたくなる衝動に駆られ…僕は自身の腕をギュッと抓った。


僕の言葉に左右へと首を振り、ふわっと柔らかい笑みを浮かべる彼女。

その笑顔に釣られて僕も微笑めば、更に嬉しそうに笑った。


「ありがとう…。」

どこか消えてしまいそうな声で呟く彼女。

また逢えたのに…消えてしまわないかと不安に感じ、僕は彼女に問いかけた。


「この世界を抜けたら…もう逢えないのかな?」

僕の言葉に驚いた顔をしたかと思うと、彼女は再び笑顔になって…そして淡い光と共に消えていってしまった。


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