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たぶん...悪役令嬢だと思います  作者: 神楽 紫苑
第3章 私リリア!運命が動き出したの。
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ポーション作り

「アレスは何を作っているの?」

「僕は状態異常回復薬だよ。」

薬草と薬品を鍋に入れ、ゆっくりと魔力を注ぎながら隣で作業するアレスへと声をかける。

アレスは手を止める事なく返答し、私達の様子を見た。

私もリオンも同じ動きで同じスピードだから、今行っている工程も同じだ。


「なんでポーションだったんだろう?」

「ん?単純に在庫が少ないからだよ…作れる人も限られてるしね。」

アレスは薬品棚に目を向けるので、私達もそれに釣られて目を向ける。

棚の中は一部分がスカスカ状態だ。


「魔力量や、魔力の質でポーションの出来が違っちゃうから…ポーションは難しいよね。」

「…アレスはポーション作れるの?」

ポーションの在庫が少ない理由は何となく分かった。

アレスも出来るのかと問い掛ければ「うん。」とあっさり返事が来る。

状態異常回復薬が作れるくらいだ…作れないって事はないみたい。


「国家試験にもポーションや回復異常などの魔法薬の問題は出るしね、後は属性に関する事も多いかな。」

アレスは高等部二年生の時に国家資格を取得したと言っていたので、その時の事を思い出しながら教えてくれた。

てっきり私達のように一年で全てを取得していたのだと思っていたから驚いた。

急いで欲しいわけじゃないからという理由で、職業体験も一ヶ所に数ヶ月は居たんだって。


「ポーションもそうだけど、魔法属性を変えれば色々な物が出来るのは知ってるよね?」

「うん、今は無属性魔法で作ってるけど…火や水でやるとそれに特化したポーションになるんだよね?」

無属性は、注ぐ魔力に何の属性も入れないようにすれば出来る。

アレスの質問に答えれば、アレスは嬉しそうに頷いた。

闇属性だとちょっと黒ずんで美味しそうじゃないポーションが出来上がるし、光属性だとキラキラとラメが舞うポーションになる。

しかも光属性のポーションは普通に作っても中級から上級のポーションが出来上がる。

一度リオンが試したところ、あまり世に出してはいけない物が出来上がったのは秘密だ。


「そういった事も試験に出るんだよ、後は…毒になる薬草類なども試験に出るから覚えておいた方が良いかな?」

「…毒薬の作り方も出たりする?」

薬草の中には毒になる物もそれなりにあるので、もしかしたら毒薬の作り方も出るのかなと思ったが…アレスは首を振って否定した。

毒薬は基本的に作るのも販売するのも…勿論、使うのも禁止されている。

因みに麻薬の類も試験には出るそうだ。

良い物も悪い物も分かっていなくてはいけないって事なんだろう。



「……ところで、私達は何のポーションを作ったら良かったと思う?」

話をしながら只管に鍋に魔力を注いでいたのだが…ついついアレスとの会話に夢中になってしまった。

仕方ない…だって、婚約者なんだもん。

だって私の“運命の番“なんだもん。

…だって、大好きな彼との会話なんだもん。


「……リリア、言い訳は良くないと思うよ?」

私の隣で同じように魔力を注いでいるリオンがボソッと呟いた。

するとアレスも困ったように赤面している…その顔も格好良い。


「そろそろ思考が駄々漏れている事に気づけるお年頃だと思うんだけど?」

リオンの呆れたように再度呟かれた言葉に、自分がブツブツと独り言を呟いていた事に気づく私。

……その小さな声も見逃さない、アレスの素晴らしい聴力。


「…気をつけます。」

どうして良いか分からず、恥ずかしい気持ちで俯けば…アレスが手を止めて私の頭を優しく撫でる。

耳元に顔を近づけ、その吐息が耳にかかったのが分かった。


「僕と二人だけの時ならいつでも歓迎だよ?」

甘い声で囁かれて耳が熱くなったのを感じる…二人の時って…二人だけの時って…!?

ドギマギしながらアレスを見ると、少し恥ずかしそうにしながら微笑んでいた。


「…今はボ・ク・も・いるんだけど?」

アレスと見つめ合っていると、隣でゴホンッと咳払いが聞こえた。

直ぐに二人の世界に入るんだから…と、リオンがブツブツと文句を言って…手元の鍋に魔力を注ぐのを止める。



「……やっちゃった。」

リオンは鍋の中をじーっと見つめながら、渋い顔になった。

同じように手を止めた私も鍋の中を見る…やってしまった。


通常ならばサラリとした液体になるはずのポーションだが、鍋の中にはトロリと濃い粘液のポーションが出来上がっていた。

先ほどから注いでいた魔力はいつの間にか、これ以上は魔力など入らないと弾かれていたらしい。

気づかずそのまま魔力を注いでしまっていた。


「だ…大丈夫だよ。ポーションならどれも在庫不足だし、鑑定士に見てもらって問題なければ良いよ。」

アレスが必死にフォローをするけど…語尾に“多分“が付いていそうだ。

私もリオンも鍋を持ち、鑑定スキルを持つマリア様の部屋へと向かう。

……お祖母様のお姉様だけあって、ちょっと怖い。

いや、お祖母様は普段はとても優しいよ?優しいけど…鍛錬中は容赦が無いだけ。

そのイメージが強いから、ちょっと不安に思ってるだけだと何度も自分に言い聞かす。



「…で、何でこのポーションはこんなに粘度が高いんだ?」

「「………魔力が入り過ぎたみたいです。」」

マリア様は怒ってはいないようだったが、不思議そうにポーションを見ていた。

粘度が高いポーションを見ているだけで、今はまだ鑑定スキルを使っていないように感じる。


「………ほう。」

マリア様が自身の瞳に魔力を込め…私達が作ったポーションらしき物を見ると、感心したかのように頷いた。

どう考えても普通のポーションには見えないんだけど…何が見えたのだろうか?


「一言で言うと…中級ポーションだな、粘度が高いから上級ポーションに近いくらいの性能だ。まぁ…使えなくは無いし問題ないが…次は普通にポーションを作って欲しい。」

マリア様は私達が作ったポーションを容器にサッと移し、空になった鍋を渡しながら次の指示をくれた。

再び作業机に戻り…ある違和感に気づく。


「そう言えば、この作業机の近くはアレスがいるだけで…他の人とは何であんなに離れているのかしら?」

キョロキョロと見渡すと私達の作業机の辺りだけパーテーションで区切られ、他の人とは隔離されている。

不思議に思っていると、アレスが苦笑しながら教えてくれた。


「リオンとリリアが作ってるとこなんか他の人には見せられないよ。僕だってマリア様からの指示で孤立してるんだもん。」

アレスの言葉に更に謎が深まり、私もリオンもコテンと首を傾げてしまう。

他の人と同じように作っているつもりなんだが、何かが違うのだろうか?


「二人の作業が他の人の目に留まったら、それこそ此処から出られなくなるよ?二人は早くて性能も良い物を大量に作っているんだから…。」

そう言ってアレスは他の人達を見るように促すと、私は他の人達の手元に気づく。

私とリオンは普通に片手鍋で作っていたが、他の人達は小さなビーカーで作業していた。


「そろそろ自分達が規格外なのを自覚しようか。」

ニッコリと笑うアレスも…手にしているのは同じ片手鍋だった。

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