家族会議
「えっと…どんな状況?」
リナリアと共にお父様の書斎へ行くとリオンの他にお母様とお兄様がお父様の前に仁王立ちしており、お父様は土下座こそしてないが正座し俯いてるという…カオス?
「おかえり。…リナリア、大丈夫?」
リオンが私とリナリアに気づき近づいてくると、私の背後にいたリナリアへと声をかけた。
「はい、ご心配おかけしましたが大丈夫です。」
リオンの言葉にリナリアは明るい笑顔で応えた。
「あれからお母様を呼んだらお兄様まで来て…事情を話したら今の状態になった。」
現状を簡単に説明してくれるのはいいが、この後はどうしたらいいのだろうか?
と…とりあえず、お父様にどうして婚約を白紙に戻したのかをじっくりと聞きたいと思うので仲裁に入り…書斎では狭いのでリビングへと移動する事になった。
「私は昨日、リオン達が発見した獣人の件で陛下に呼ばれたんだ。」
リビングのソファーで一息つくと、お父様は話し始めた。
私達が獣人を見つけ、その後の聞き込みにより得た情報で…とても厄介な事になったという。
目撃された馬車の紋章は隣国・ワインバル王国の公爵家の紋章で、ワインバル王国の何代か前の王弟が臣籍降下して公爵となったところなのだとか。
現在のワインバル王国は第一王子が王太子だが、この公爵家を含む幾つかの貴族が第二王子派と呼ばれ…次期国王にと推しているらしい。
その第二王子…現在はオステリア王国に留学中で、ジュード殿下と仲が良い。
獣王国からワインバル王国を最短で移動するにはオステリア王国を通るのが一番だが、だからと言って他国の馬車があっさりと通り抜け出来る訳はない。
…つまり、ジュード殿下が何らかの形で関わっている可能性があるという事だ。
陛下やお父様方も考えたくはないが、もし本当に関わっているとなるとジュード殿下の婚約者であるリナリアやクリスティア家も危うくなる。
陛下からの指示で今回の事が明るみになる前に婚約を白紙に戻そう…という事だったらしい。
「…最初からそのように話せばいいじゃないですか!」
思わず…言葉足らずなお父様に厳しい目を向けてしまう。
お父様は本当に申し訳ないと言った顔でリナリアを見た。
「事情は分かりました、婚約の件は了承します。」
「すまない…リナリアの気持ちも知らずに…。」
リナリアはお父様を見つめ返し頷くと、お父様は改めてリナリアに謝罪していた。
「そもそもコミュニケーション不足なのですから、察するとか無理な話なんです。もっとお父様も家族と一緒に過ごす努力をして下さい!」
鼻息荒く文句を言えば、お兄様もお母様もウンウンと頷いていた。
お父様は再び小さな声で「すまない。」と呟いた。
「では、ここからは私とリオンが仕切らせて頂きます!」
「まずは此方をご覧ください!」
スクッと立ち上がると、リオンはキビキビと大きな羊皮紙を広げて壁へと貼りつける。
ホワイトボード的な物があると便利なんだけど…無いから仕方ない。
私とリオンの行動に家族は呆然としているが、お構いなしだ。
「此方が年表になります!一番上がリナリアとジュード殿下が婚約した年ですね…。」
リナリアが婚約してから昨日までのジュード殿下が行ってきた、アレやコレやを家族へと報告する。
中にはお兄様が知ってる内容や、リナリアが喋れなくなってしまった出来事なんかも記載してある。
それを聞いていたお父様は最初こそポカーンとしていたが、次第に顔色が青くなり…そして真っ赤に変わって…現在は憤怒といった表情かしら?
一通りの説明を終えリオンと共に一礼する。
「以上でジュード殿下のやらかした事、不貞等々の報告は終わります。」
「質問のある方は挙手でお願いします。」
報告で終わるはずだったのに、何故かリオンが質問コーナーを設けてしまった。
「はい!」
勢いよく手を挙げたお父様は、自身が知らなかった事実などを事細かに質問し続けた。
私達の方がいい加減疲れてしまう頃…質問攻めが終わり、最後にお父様から家族へ再び謝罪すると…今後の話になった。
「明日、婚約を白紙に戻すために一緒に王城へ来て欲しい。」
本来ならば家族全員で行かなくても良いのだが、今日の私達の話を改めて陛下にして欲しいそうだ。
…なんて恐れ多い事を言うのだろうか?
どうやらお父様はジュード殿下がした事が許せず…そして、それを知らなかった自分も許せないようだった。
今後、婚約者が居なくなったジュード殿下はどうするのだろうか?
…未だに私の周囲をウロウロしてるのも気になる。
暫く考えを纏め、私はお父様へとあるお願いをした。
そのお願いを聞いたお父様は渋い顔をしたが、幾つかの条件を付ける事で了承してくれた。
「ありがとうございます、これで心置きなく悪役令嬢になれますわ!」
「リリアが悪役令嬢なら、僕は悪役令息になるよ!」
私とリオンの宣言に家族は渋い顔をしたが、お父様だけは真剣な顔で私達に頭を下げる。
「すまない…よろしく頼む。」
「「はい!」」
元気良く返事をし、その後は更に今後の話を詰めるのだった。
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宣言したけど…本当に悪役になれるのだろうかと心配で仕方ない。