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たぶん...悪役令嬢だと思います  作者: 神楽 紫苑
第3章 私リリア!運命が動き出したの。
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お父様と僕

リオン視点のお話です。

遠征から戻った翌日、僕とリリアはお父様の書斎へ呼ばれた。

同じ家に住むお父様だが、仕事が忙しく朝食ぐらいしか会うことがない。

恐らくは…遠征で出会った獣人の事で呼ばれたのだろう。

リリアを部屋まで呼びに行くと、何故か大量の資料を持たされた。

僕が受け取ってリリアを見ると何かを企んでる顔でニヤリと笑った。


久しぶりに入ったお父様の書斎にはお父様の他に執事のスティーブがドアの近くに控えていた…。




「「…はい?」」

僕とリリアはお父様の言葉に一拍遅れて返事をする。


「リナリアにジュード殿下との婚約を白紙にする…と、そのまま伝えたのですか?」

お父様の部屋に入ってすぐ、お父様が話し始めたのはリナリアとジュード殿下の婚約取り止めの件だった。

遠征で目撃された馬車と何やら関係があるようだが、隣のリリアはそれどころでは無い。


「あぁ。」

お父様が返事をした瞬間、お父様へと一瞬で距離を詰めると…胸ぐらを掴む。

「歯を食いしばりなぁ!!!」

思いっきり振り上げた拳を凄い勢いでお父様の左頬へと叩きこむ。

リリアは肩で息をしながら僕へと振り返ると「リナリアのとこに行くから、後はよろしく!」と言って走って部屋を出て行ってしまった。


一瞬の事でお父様も執事も呆然としている。

僕は吹っ飛ばされたお父様に近づき、手を差し出した。

お父様は差し出された手を掴もうと手を伸ばしたが、僕はその手を思いっきり振りかぶり…お父様の頬へビンタした。


「お父様は宰相なのに、どうして家族への配慮が出来ないのでしょう?僕達…家族も国民なんだけどね。」

助け起こしてくれると思ったのに頰を叩かれ、再び呆然とするお父様へ僕はしゃがみこんで目線を合わせた。


「リリアはあれでも手加減したんですよ?身体強化をかけなかったから、きっと今頃はリリアの拳も血まみれです。」

僕はポケットから刺繍のハンカチを差し出す。

それをお父様が受け取り、口から垂れている血を拭った。


「リリアが“よろしく“と言ったのは僕にお父様の治療を頼むって意味です。」

僕はお父様の頬に手を当てると、治癒魔法をかけた。

痛みと腫れがひき、普段のお父様の顔に戻る。


「なので、治療の前に僕からも一発叩かせてもらいました。」

「なっ…!?」

淡々と話す僕に驚愕の顔を向けるお父様。

だが、リリアじゃないけど…僕だって許せるわけが無い。


「当たり前でしょう?僕の大事な妹を傷つけたのだから…。」

僕の言葉にお父様は眉間に皺を寄せて俯く。

手に持ったハンカチを見つめるお父様に、僕は話を続けた。


「リナリアから毎年贈られているハンカチです。」

「あぁ、私にも同じ物をくれた。」

血に染まったハンカチを広げ苦笑するお父様に、僕は小さく溜息を漏らす。


「リナリアが刺繍したハンカチだと分かってますか?」

「……え?」

僕は持っていた前年のハンカチを取り出すと、広げて見せる。


「リナリアが刺繍が得意だと知りませんでしたか?」

僕の言葉に傷ついた顔をし…苦虫を噛んだような顔に変わるお父様。

執事のスティーブがハンカチが入ったケースを持って近づいてきて…それを一つ一つ見せる。

歳を重ねる毎に上手になっていくのが分かるように。

一番古いハンカチを最後に広げ…お父様へと渡す。

この年のリナリアを思い出し、暗い気持ちになった。


「リナリアが…言葉を喋れなかった時期の事を覚えていますか?」

「…いつの事だ?」

お父様は僕の言葉に目を見開き、首を左右に振った。

お母様が知らせなかったか…もしくはリナリアの意思だったのか?

どうやらお父様は知らなかったようだ。


「リナリアが5歳の時にジュード殿下からの言葉で喋れなくなった時期がありました…それでもリナリアはジュード殿下を慕っていた。今のリナリアの気持ちも聞かずにお父様はリナリアの大切な想いを踏み躙ったんです。」

僕の言葉に信じられないと言った顔になり、お父様は執事のスティーブを見た。

スティーブは知っていたのか、申し訳なさそうな顔をしている。


「仕事ばかりでお母様や僕達にはあまり気が回らなかった…というのは言い訳になりませんよ?」

自分の父親に対してかなりキツイ言い方になってしまったが…それでも言わずにはいられなかった。



「僕とリリアは領地にいる事が多く、お祖父様とお祖母様に沢山の事を教えて頂きました。お父様はお兄様やリナリアに何かを教えましたか?」

力なく左右に首を振るお父様に僕は再び溜息が漏れる。


「リリアが言ってました…どんなに優秀な家庭教師に教わっても自分の家族…親から教わった事は絶対に忘れる事は無いのだと。その時の思い出も一緒に覚えていられるから…お兄様やリナリアにそんな思い出が果たしてあるのでしょうか?」

項垂れるお父様から視線を執事のスティーブへとズラすと、僕はお母様をここに呼ぶように伝えた。

スティーブは頭を下げて退室し、お母様を呼びに行く。


「今からでも遅くはないですよ?九年前から変わってなくとも…本気を出せば今から変われるかもしれません。」

「…まだ、間に合うと思うか?」

お父様は僕の言葉に絞り出すように返す。


「“やる気の問題よ!“って鍛錬中のリリアがよく叫んでますよ。」


ブクマ・評価・感想・誤字報告ありがとうございます。

ちょっと過激に急展開になってしまった気もしないでも無い気もしない。

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