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たぶん...悪役令嬢だと思います  作者: 神楽 紫苑
第3章 私リリア!運命が動き出したの。
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目撃情報と塀の穴

その後、再び使い魔が籠のような物を咥えて現れた。

中には一通の手紙が入っており、「とりあえず預かる。」と書かれてあった。

鑑定後は王城と私と両方に手紙を寄越すそうだ。

ブランケットで巻いたまま籠へと猫を移すと、リオンは寂しそうな顔をした。

見つけてからずっと抱き締めたままだったもんね…きっと無意識に離したくなかったんだと思う。


「また、直ぐに会えるよ。聖女様にもリオンの“番“って知らせといたし。」

「は?言っちゃったの??」

慰めようと声をかければ、不機嫌な声で怒鳴られた…納得がいかない。


「言わないと…鑑定後にどこかに渡しちゃって二度と会えなくなったりしたら嫌でしょ?」

私の言葉にリオンは眉間に皺を寄せ、頷いた。

そんな傷ついたような顔はしないで欲しい…そうならないように知らせといたんだから。


「…ありがとう。」

複雑そうな顔でポソッと呟くようにお礼を言われる。

きっと心情的にもグチャグチャで複雑なのだろう。


「聖女様が直ぐに預かってくれて助かったな、雌猫の獣人をむさ苦しい騎士団の中に入れて置けないしな。」

遠征はあと二日ある。

猫と共に帰城するとなると、他の騎士団員の目にも留まってしまうだろう。

そうならないように聖女様が配慮してくれたのかもしれない…。

リオンの“番“に興味を示しただけのような気もしないでもないが。


「今回の件も恐らくはアレスの時のようになると思う。」

ジン様の言葉に、今度は私達が驚かされる。

思わず驚いた顔のまま見上げてしまった。


「陛下から知らされているのは極僅かの人間だけだから安心しなさい。だが、騎士の中にはアレスが獣人だと気づいている者もいる…身体能力が人間とは比べものにならないからな。」

私達を安心させるような優しい話し口で教えてくれるジン様。

そうか…獣人は身体能力が凄いって言うもんね。

私はリオンと顔を見合わせると、互いにウンウンと頷き合う。

それを見ていたジン様がサッと目を逸らした。


「……二人も怪しまれていたぞ?」

「「……何をでしょう?」」

目を逸らしたジン様の顔を追いかけるように私とリオンは覗き込んだ。

更に反対方向へとジン様は顔を逸らす。


「「何を怪しまれていたのでしょう?」」

その後も数回、問い質してみたが…残念ながら回答は得られなかった。



翌日はジン様の計らいで私とリオンも同行させてもらった。

あの猫が来たと思われる村へと行き、村長に今回の討伐の報告を行う。

毎年の事らしく、ジン様へ凄く感謝しているようだった。

やはり冬が近づき、備蓄してあった食物を魔獣に荒らされるのは非常に困る。

もしもの時は国で支援もあるが、そう多くは無いそうだ。

私達の領地も今のうちから視野に入れておかないといけないと思った。


「この数日…国境付近から妙な人や馬車などを見なかったか?」

という質問に、村長さんは数人の村人を集めてくれた。

私は外で遊ぶ子供達にも同じ質問をした。

こういう事は子供の方が見ている事が多いからだ。

案の定、複数の子供が二、三日前に見た事もない紋章の入った馬車が森の近くを通っていたと教えてくれた。

地面に落書きのように紋章を描いてくれたので、それを羊皮紙へと写した。


村長の元へと戻り、子供達が目撃していたと報告をする。

どういった組織か分からないので警戒するように伝え、何かあれば王城へと知らせるようにとジン様が話をしてくれた。


次に隣の町へと移動し、町長へと報告を終えると同じ質問を投げかける。

町長も同じように部下を呼ぶと、今度はその中の一人が目撃していた。

井戸の水を汲む際に見知らぬ男が水を分けて欲しいと懇願してきたらしい。

お礼にとチップを渡されたのだとか。

「そのチップはどこの国の硬貨でした?」

私の質問に、オステリア王国の物だったと教えてくれた。


足を延ばし国境まで来ると、どこか慌ただしい様子だった。

何事かとジン様が一人の警備兵に声をかけると、国を覆う大きな塀の一部に欠損が見つかったという。

案内してもらい、見にいくと…子供がギリギリ通れるくらいの穴が空いていた。

「他の国との国境ならばまだ良かったのですが…。」と警備兵が塀を見上げる。

隣は獣王国だ、このサイズの穴ならば小動物系の獣人は通れてしまう。

特に完全獣化した獣人なら小動物以外でも通れるかもしれない。


「いつから空いてましたか?」

私の問いに警備兵は渋い顔をし、五日前に見た時は無かったと答えた。

穴の近くに寄り、探知魔法で探りを入れる。


「……残念ながら、あの子はここを通ったようです。他にも十体程がここを抜けていますね。」

私の言葉に警備兵は青い顔をし、ジン様は手で顔を覆った。

これから待つのは色んな意味で厄介だ。


「塀は…こちら側から叩き割ったようです。ここに叩き損ねた跡が見える。」

指で示しながら説明すると、今度は青から赤へと顔色を変える警備兵…大丈夫だろうか?

許可をもらい、土魔法で簡単に塀を塞ぐと…とりあえず警備兵さんの顔色が少し戻った。


「あとは職人さんにしっかりとした修繕をしてもらってください。」

「ありがとう…助かった。」

両手をガシッと握られてブンブンと力一杯に振り回されて…思い切り感謝されてしまった。


「見張ってるつもりだが、やはり全体を見るのは難しいな。」

ジン様は警備兵へと声をかけて上役のいる部屋へと移動しながらボソリと呟いた。

国境警備も騎士団出の人が多いそうで、すれ違い様にジン様に頭を下げる警備兵が多数いた。


国境を任されている辺境伯と話をし、今回の被害状況と今後の対策についての案を近日中に王城へと上げるように伝え…私達は次の村へと移動する。

塀の穴を簡単に塞いだと伝えると、辺境伯は心からの感謝を…と深々と頭を下げられてしまった。

私は首を振る。

その言葉は事件の解決後にお願いしたい。



「…思ったよりも厄介だな。」

それから近隣町村を回ったが、それ以上の情報は得られなかった。

最後に王城に近い町へと報告に行くと、そこで新たな情報が手に入る。

昨日の早朝に例の馬車が通ったらしい。

早朝の牧場掃除をしていた少年が目撃していたそうだ。


「つまり、私達の目を盗んで…王都へと入ったということか。」

ジン様はテントに急いで戻ると、慌てて手紙を認める。

指笛で大きな鷹を呼ぶと、足に手紙を結び王城の方角へ飛ばす。

…その一連の動作に私は見惚れてしまった。

私も大きな鷹…欲しい!

っていうか使い魔が欲しい!!

キラキラした目でジン様を見ていたのがリオンにバレて頭をコツンと叩かれた。


「明日は早朝から急いで王城へ戻るぞ!」

騎士様方を集め、ジン様が大きな声で告げると全員が急ぎ持ち場へと戻る。

大急ぎで帰る準備を整え、夜は早い時間に就寝となった。

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