リオン、救助する
遠征終了まで残り一日…今日は最後の狩り残しが無いかを確認した。
明日は近隣町村への報告をし、その翌日には帰城する。
今日はリオンと二人きりで残党狩りを行なった。
師範代試験を終えたので班行動ではなくなったのだ。
てっきり帰るまでは班行動だと思っていると、人員も足りているから別行動で動いた方が早く終わると言われてしまった。
残党狩りという事もあり、今日出会ったのは森の大猪が一頭だけでリオンと二人だけでも十分に倒せた。
今は森の中心へと戻る途中だ。
私達二人ではダメだという時用に渡された鳴き笛も使わずに済んだ。
この鳴き笛は吹くと音はしないが、持ち主を呼ぶ事が出来る魔道具で…渡されたのはジン様を呼ぶための物だった。
ジン様は残党狩りへは行かず、中心部で各報告を受ける為に待機している。
道のり的にはあと半分かな…という辺りで一度水分補給をしようと立ち止まると、リオンがある音を聞き取った。
「悲鳴…のような声が聞こえる。」
リオンは目を瞑り、声の方向を探る。
私はリオンが聞き分けるのを待った。
「こっちだ!リリア、行こう!」
「うん。」
リオンが駆け出したので、後に続く。
獣道を走り抜けると、森の大蛇が鎌首をもたげ…何かに狙いを定めている姿が目に入った。
「リオン!私が足止めするから救助をお願い!」
「了解っ!」
無詠唱の木魔法を発動させて蔦で森の大蛇を絡め取る。
地面を踵で蹴り、自身の剣を出すと森の大蛇へと斬りかかる。
森の大蛇の気を引いているうちに、リオンは悲鳴を上げた主を抱き締めて避難した。
それを確認し私は森の大蛇にトドメを刺した。
リオンは周囲の安全を確認し、抱き締めた腕を緩めると…浅い息を吐く猫だった。
その様子にリオンは慌てて治癒魔法をかける。
その間、私は森の大蛇を細かく斬り…魔法で地面に穴を掘った。
サッと供養を終えると、リオンへと駆け寄る。
「リリア、ありがとう。おかげで治療に専念できた。」
「ううん、それよりも大丈夫なの?」
魔法陣に剣をしまい、リオンが抱き締めていた猫を覗き見る。
外傷は治ったものの、今も息は浅いままだ。
魔法鞄から大きめの清潔なタオルと、ブランケットを出しリオンへと手渡す。
リオンは猫を丁寧にタオルで巻き、その上からブランケットで温める。
「…でも、なんで森に猫?」
周囲は木々が生い茂る森…勿論、自然豊かな森なので動物がいてもおかしくは無い。
だが、森にいる猫とは少し違うように感じる…どちらかというと街にいる飼い猫に近い。
猫には首輪も足枷もないから飼い猫ではないとは思うが…?
「それにしても…酷く汚れてる。」
「ああ、傷も森の大蛇から受けた傷だけじゃなかった。もっと…人為的な傷が多く感じた。」
私はリオンと顔を見合わせ、リオンに猫を任せて周囲を探索する。
探知魔法は苦手だが、それでもやらないよりはマシだろう。
猫が来た道を魔法で割り出すと、その先には明日報告に向かう村がある。
その村の先は…獣王国がある。
探知魔法を解除しリオンの元へと戻ると、リオンは抱き締めてる猫を何故か首を傾げながら何度も匂いを嗅いでいた。
不思議に思って声をかければ、リオンは眉間にシワを寄せ不思議そうな顔をして私を見る。
「ねぇ…この猫、何だか良い匂いがするんだけど?」
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今日も少し短めですみません。
…タイトルが気に入らないので、後日変えるかもしれません。




