目的と目指す理由
師範代試験の最終日は討伐後にリオンと共にジン様のテントへ呼ばれた。
「試験は終了だ。最後に二人に師範代を取った理由を伺いたい。」
ジン様は真面目な顔で、私とリオンを交互に見つめる。
「「師範代試験の目的は、爵位の取得です。」」
「…君達は既に公爵家では無いか?」
私とリオンの答えにジン様は不思議そうな顔をした。
「私達の父が公爵を継ぎ、兄が次の公爵を継ぎます。私達は領地を継ぐだけで爵位までは継ぎません。」
「既に“神に愛されし者“として陛下より子爵位は頂けると伺ってますが、私達の子供達に出来る事ならその上の爵位を継がせてやりたいのです。」
公爵家の人間だが、家を継ぐのはリーマスお兄様で私達ではない。
“神に愛されし者“は必ず子爵位をもらえると聞き、祖父母へと相談した。
騎士団で師範代を、魔法省で国家資格を取得し更に何かしらの功績を立てればその上の爵位を賜る事も出来るそうだ。
功績に関しては既にアテがある。
私達の返答にジン様は一つ頷くと、次の質問を投げかけてきた。
「二人は何故、そんなにも強いのに上を目指すんだ?」
「「目指す…ですか…」」
質問の答えに私とリオンは互いに顔を見合わせる。
「私達は元から強かった訳では無い事をご理解下さい。私達は幼い頃から祖父母によって鍛えられました…そして教わったのです。」
「もう強いから良い…では無く、常に上を目指す事を。そして、身につけた事を継続させなければ…いざという時に何の意味もなさない事を。」
教わった事は、やらなければ案外忘れてしまうものだ。
それなりに出来る事もあるが、それはあくまで“それなり“で…以前は倒せた魔獣も倒せなくなる事がある。
“継続は力なり“を常に意識して私達は今も毎日の鍛錬を欠かさない。
「…なるほどな。二人の強さは力だけでは無い訳だ。」
ジン様の言葉に首を傾げると、ジン様は苦笑する。
「二人は気持ちも強いのだな…と思ったんだよ。」
その言葉に思わず顔が綻び、リオンと共に一礼すると…ジン様は姿勢を正した。
「では、二人を師範代と認める!帰城後に正式に書面で渡す。」
「「ありがとうございます!」」
ジン様より合格が伝えられ、私とリオンはいつになく大きな声で応えた。
「残りの期間も気を引き締めて任務にあたって欲しい。」
「「はい!」」
ジン様に再度一礼し、テントを出ると…騎士様方から拍手を贈られた。
班長が「おめでとう!」と駆け寄ってきて、そのまま簡単にお祝いをしてもらう。
そして明日からは魔獣の残党狩りと、村への報告をし…この遠征は終了する。
遠征の最後の瞬間まで気を引き締めて、全員が無事に帰城できる事を願い私とリオンは眠りについた。
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今日は区切りの関係で短めです。




