表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
たぶん...悪役令嬢だと思います  作者: 神楽 紫苑
第3章 私リリア!運命が動き出したの。
133/318

段級位の試験

訓練場をサッと整備し、騎士団長のジン様と私とリオンが中心部へと移動する。

ジン様が記録係をと声をかければ、何故か魔術師団長のビルショート様がボードを持って近づいてきた。

「おい、ビルは魔術師団だろ?」

「私も若い頃は騎士団へ在籍していた事もありますから、記録はつけられますよ?」

明らかに嫌そうな顔をするジン様にビルショート様はニコニコして答える。

「それに、彼らの記録は副団長不在の今…私が適任だと思いますが?」

ビルショート様の言葉にジン様は溜息を吐くと「頼む。」と頭を下げた。


その遣り取りを私もリオンも不思議に思いコテンと首を傾げる。

何か…難しい事でもあるのだろうか?



「では、始める!まずは初級、基本の型だ。」

ジン様の言葉に先程から借りている刃が潰された模造剣を構える。

段級位の試験の級位は殆どが型で判断される。

基本の構え方や、抜刀、剣の振り方、敵と対峙した時の回避の仕方などがメインである。

まずは剣になれなければならないからなのだが、この型が綺麗じゃないと試験には合格出来ず…判定も厳しいらしい。


「さすがはリチャード様が直々に教えただけあるな、とても綺麗な型だ。」

そう言ってジン様は練習用の剣を持つと、リオンから対峙し剣の払いや打ち込みを確認する。

リオンが終われば私と…順々に確認し、記録係のビルショート様に声をかけた。


「級位は問題ないだろう。次は初段から…まずはリオン、前へ出て構えて。」


リオンが終わるまでは私は見てるだけとなる。

全部で八段…その上が準師範で、さらに上が師範代だ。

なかなかに時間がかかりそうだな…。

果たして…今日はどこまで取れるだろうか?


ふと、訓練場の近くの廊下を見ると…他の生徒達が此方を見ていることに気づく。

今日から職場体験だから、他の生徒達もいて当たり前なのだが…ジン様は私とリオンを特別扱いしてくれたのだと思う。

本来ならば事務室へ行き、説明会があり、その後で施設内の案内を終えて…学生用騎士服が配布され帰宅となる。

それが早速着替えて、騎士団を全滅させたのだ…問題児とも言えるな。

道場破りにも近いよね…でも、騎士達が仕掛けて来たのだから私達は悪くないと思う。

いや…思いたい。


他の騎士達も気づいて、見学に来ている子達に話しかけていた。

また、先程の少し嫌味っぽい笑みを浮かべている…懲りないな。


そんな事を思いながら、見学してる生徒とは別方向から来た集団がいた。

ジュード殿下と…隣国の王子だ。

確か、ワインバル王国の第二王子のロマネス・ワインバル殿下。

ワインレッドの艶やかな長髪に濃いゴールドの瞳…何とも派手な見た目だ。

隣の派手なジュード殿下と並んでも違和感が無いとは…。


何かを指差しながら、此方に向かって嫌な笑みを浮かべている。

その笑い方で私は“生理的に無理“だと確信する。

見た目は美しく整っているのだが、こればかりは本当にどうしようもない。

…できる事なら今すぐアレスを見て癒されたい気持ちになる。


「とりあえず、リリア嬢も控えているから今日はこの辺りで止めておこう。」

ジン様の言葉にリオンが手を止める。

珍しく息が少しだけ荒い。


「ありがとうございました。」

リオンが一礼すると、少し休憩し私の順番になる。

因みにリオンは見てないうちに六段まで合格したらしい。

こんなに急いで取る物ではないのか、一段毎の試験が大変なようだ。


「リリアは余所見して何を見てたの?」

水分を補給しながらニッコリと微笑むリオン…見てなくて、ごめんね。

私は視線だけで方向を伝え「殿下方。」と答える。


「あぁ、二人の殿下が見ていたのか…って他の生徒達もいるじゃん。」

皆んなに見られていたのかと少しだけ赤面するリオン。

思いもよらない事が起きると、こうやって赤面したりするリオンは…あざとくなくて可愛いと思う。

いや、あざといリオンも可愛いのだけど。


「ロマネス殿下は…生理的に無理だなと思いながら見てました。」

私がボソッと呟くと、リオンはゴホゴホと咳き込み…私を睨む。

「変な事を言うなよ…思わず噴いたじゃないかっ!」

そんなに変な事だっただろうか…不思議に思ってコテンと首を傾げると、今度は頬を膨らませるリオン。

…やはり、あざといのも可愛いな。



「そろそろ始めるぞ?リリア嬢、此方へ。」

ジン様へ呼ばれ前へ出る。

試験は想像よりももっと大変で、余所見などする余裕も無い。

一心不乱に剣を振り、ジン様に時折アドバイスを貰う。

とても楽しい時間だった。

日が傾き、周囲が少し騒ついた頃…ジン様が終わりを告げた。


「今日はここまでにしよう…二人とも六段だな。明日も来れる様なら続きをしよう!」

「「ありがとうございました!」」

私もリオンも元気よく一礼すれば、ジン様もどこか嬉しそうに微笑む。


「久しぶりに…二人の剣からリチャード様を感じたよ。楽しかった、また明日…私の執務室へ声をかけに来なさい。」

「「はい!!」」


いつの間にか居なくなった生徒や殿下方。

私はリオンと二人…訓練場を後にした。

ブクマ・評価・感想・誤字報告ありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ