騎士団に到着
「厄介なのに目を付けられたわね。」
騎士団へと向かう途中、ボソッと呟く。
私の言葉に苦笑するリオン。
「クレア様は…新たなヒロインの可能性が高いわ。」
「…新たなヒロイン?」
リオンは首をコテンと傾げる。
成長して美青年へとなっても、その仕草はカッコ可愛い。
可愛かった少年時代も、成長した今もリオンは密かに人気がある。
中等部までの特進クラスにいた何人かの令嬢はリオンに恋をしていたと思う。
…邪魔をするつもりは無いが、私の横にずっといるから令嬢が近寄りたくても近づけなかったんだけどね。
高等部に入るとクラス分けに成績は関係無くなった。
受けたい授業を生徒が選択する形になる。
生徒数も高等部への進学をしない方々も結構いる為、クラスは二つしかない。
運よく、リオンとは一緒だ。
今年は隣国の王子が留学に来ていると聞いた。
ジュード殿下と仲が良く、同じクラスに入ったらしい。
因みに私達とは違うクラスだ。
「セシルさん…では無かったの?」
リオンの疑問に私も不思議に思っていた。
てっきり平民のセシルさんのシンデレラストーリー的な展開が待ってると思ったからだ。
「うーん…高等部に進んでいたら多分セシルさんだったと思う。だけど、クレア様の境遇が…よくあるヒロイン像に似てるのよね。」
顎に手を当てて悩んでいれば、騎士団へと続く扉が既に眼前へと迫っていた。
王城の騎士団や魔法省、魔術師団の建物に程近いところに高等部が隣接している。
職業体験がスムーズにできるよう、廊下で繋がっているのだ。
「続きは帰ったらにしましょう!」
そう言って扉をノックし、中へと入る。
最初に向かうのは騎士団長室だ。
「失礼します、学園高等部一年のリオン・クリスティアとリリア・クリスティアです。」
リオンが代表して声をかけ、中から返事を待って部屋へと入る。
本来は詰所に行くのだが、私とリオンが高等部に入学したら直接ここに来て欲しいと騎士団長のジン様から指示があった。
「待っていた!最初に騎士団を選んでくれて、感謝する。」
ジン様は手元の書類を机に置き、私達を交互に見ると嬉しそうに微笑む。
うん…変わらず渋くて厳つくて素敵なおじ様だ。
「段級位を取得したいと思いまして。」
素直に希望を言えば、一度キョトンとし直ぐに苦笑する。
「そうか、君達ならばすぐに段まで行くだろう。どこまでが希望だ?」
「「師範代です。」」
段級位を記録する用紙に名前などを記入しながら聞かれたので、今度も素直に希望を述べる。
書いていた手が止まった。
「ほぉ…師範代か。」
僅かに空気が重くなるのを感じたが、これくらいは全然平気なので話を続ける。
「最短で何日くらいで取れますでしょうか?」
私の言葉にピクリと眉を動かすジン様…その眼光はかなり鋭い。
普通の令嬢なら失神するか、我慢出来ても失禁するレベルだ。
だが、私もリオンも顔色一つ変えない。
「何日…という単位で取得した奴はいないが、君らが前例になるのかも知れないな。」
ふっと気を緩めるジン様。
そして、私達を交互に見て再び苦笑いを浮かべる。
「威圧し、それを解いたのに終始…顔色一つ変えないとはな。最短での取得を楽しみにしてるよ。」
ジン様はどこか嬉しそうに笑うと、ベルで部下を呼びつける。
「この仕事を終えたら訓練場へ向かうので彼らを先に着替えさせて案内してくれ。段級位の試験をするから、他の希望者もいれば声をかけてくれ。」
ジン様が部下に指示を出すと「では、後ほど。」と言って、執務へと戻った。
私達は一礼し、部屋を出る。
「二人は一年生なんだってね、段級位の試験を受けるって…自信があるんだな。」
更衣室で着替えを終えると、短髪の赤い髪の爽やかな青年が私とリオンを騎士団の訓練場へと案内してくれる。
早速、段級位の取得をさせてくれるらしく…その青年が私達に質問してきた。
「「はい。」」
元気よく返事をすると、どこか嫌味っぽく笑う。
「最初は皆んな君たちみたいに段級位を目当てに来ては、直ぐに負けて自信喪失する子が多くてね。団長が来る前に良かったら僕達が相手をしてあげてもいいよ?」
そう言って、他の騎士団のメンバーに声をかけ…その度に他のメンバーも私達に嫌な笑みを向けてきた。
…ほぉ、喧嘩…売ってんのか?
「リオン!私、とっても楽しみ。」
「リリア!僕だって、楽しみだよ。」
互いに笑顔で見つめ合うが、よく見れば目は笑っていない。
「「久しぶりに、本気でも出してみますか!」」
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