高等部に…変人現る
「こんな事…誰に言ったら良いのか分からなくて、私…リリア様に虐められているみたいなのです。」
もうすぐ冬だというのに暖かな日差しの中、艶やかなキャラメル色の巻髪の少女が涙ながらに訴える。
とても儚げで…庇護欲を誘う少女に、僕はーーーーー
「今日からだけど…リオンはどこが良いと思う?」
高等部に進学した私とリオンは、魔術師団へ行くか騎士団に行くか…もしくは文官になるべく王城の父の元へ行くかを悩んでいた。
初等部、中等部と違い高等部は午前は授業で午後は各職業を体験する事ができる。
魔術師団や魔法省へ行けば学園に在籍しながら国家資格を取る事が出来るし、騎士団へ行けば段級位制なので試験して上を目指せる。
文官になるには試験が必要で、学園の高等部の卒業資格と一年間の体験で先輩文官からの推薦も必要になる。
「まずは…騎士団でサクッと師範代になるのはどう?」
3枚のパンフレットを交互に見ながら、私とリオンは如何にして早く資格を揃えるかを悩んでいた。
「魔法省にはセシルさんが見習いで入ってるって聞いたから、見に行きたい気もするけど…。」
初等部と中等部で特待生だったセシルさんは、高等部への進学はせずに魔法省へと就職した。
魔法省に就職するのは学歴ではなく、国家資格があれば就職できる。
彼女は資金的な面で、高等部を断念したが…魔法省で働く夢を持っていた。
私は祖母に「どうやったら入れるか?」と質問すると、祖母はセシルさんに会わせて欲しいと言い出した。
セシルさんの魔力、魔法、術式などを一通り見た祖母は自身の昔の部下を彼女に紹介した。
「彼女が魔法省に入らないなど、国の損失よ?」
鶴の一声で、セシルさんは祖母の部下から国家資格についてサッと学ぶと試験を受けて見事に一発合格した。
セシルさんはお礼をと言ってきたが…そんなつもりもなかったので困っていると、リオンがサラッと調理道具を依頼した。
セシルさんの実家は金物を扱う職人さんで、今まで手に入れられなかった絞り袋の口金が手に入ってしまった。
勿論、特別に作ってもらったので代金を支払うつもりだった。
だが、口金の使用方法を告げれば「調理器具として売れる!アイデアを使わせてくれないか?」と言われたので代金の支払いの代わりにアイデアを提供した。
因みに、こちらの商品はリーマスお兄様の商会で専売契約をしているのでお兄様の商会でしか買えなかったりする。
…脱線しちゃったな。
戻そう戻そう…。
「じゃあ、騎士団からサクッと終わらせようか。」
「そうだね!」
私とリオンが話していれば、先ほどまで騒ついていた教室内が突然静かになる。
不思議に思っていると、リオンが不思議そうに首を傾げて教室の入り口を凝視していた。
「なんか…変な人がいるんだけど。」
リオンが変な事を言い出したので、私も振り返ろうとするとリオンにガシッと肩を掴まれる。
「見ない方が良いと思う。なんか…くねくねしてる。」
「……確認だけど、人間の話をしてるんだよね?それとも人間だったものの話をしてるの?」
くねくねとか言われると怖くて見れないじゃないか…。
都市伝説的なアレかと不安に思ってると、教室の入り口の変な人が喋りだす。
「こちらの教室にリオン・クリスティア様がいると伺ったのですが…どなたですか?」
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なんとか、間に合ったけど…短めですみません。




