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たぶん...悪役令嬢だと思います  作者: 神楽 紫苑
第2章 私リリア!学園に通うの。
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幕間 ジュード・オステリア

ジュード殿下視点のお話。

ジュード・オステリア

僕はこのオステリア王国の第二王子として生を享けた。

勿論、僕にも王位を継ぐ権利がある。

僕は幼い頃より、そういった事を周囲の大人達が言っているのを知っていた。


僕には兄上がいて、兄上はとても優秀だ。

幼い頃の僕はそんな兄上が大好きで、兄上を独り占めしたくていつもくっついていた。

兄上は人気が高く、兄上の周囲にはいつも貴族の令息や令嬢がいた。

そんな奴らよりも僕の方を見て欲しくて、僕はいつだって牽制していた。


僕に婚約者が出来たのは僕が7歳の時だった。

当時はよく分からず兄上について行ったパーティーでリナリアに出会った。

僕を王子様と言って、僕に抱きついたリナリアを僕は気に入った。

何より、リナリアは母親によく似ていて将来が楽しみだったのもあった。


何度かリナリアの邸に行って会ったり、リナリアが王城に出向いて来る事もあった。

学園に入る前はよく遊んでいたのを覚えている。

その頃から、勉強をするのが面倒になって…よく逃げ出していた。

僕は王族なのだから勉強などしなくても出来ると思っていたし、出来なくても権力でなんとでもなると思っていた。

だが、学園に入ってみると何故か普通クラスで…僕は何度か学園長へと抗議した。

一向に特進クラスへの移動がされない事に苛立ち、自ら仕方なく赴くと…よく分からない授業を受けさせられた。

普通クラスとは全く違う内容の授業に困惑すれば、何故かその授業を兄上が見にきたのだ。


優秀な兄上にどう思われるだろうか?

そんな事を思うが、授業は全く分からなくて…そんな僕と兄上の友達の弟妹を比べられてしまった。

彼らも公爵家だ、きっと権力や財力でこのクラスに入ったに違いない。

悔しくて、気に入らなくて…僕は出来もしない魔法で対決を挑んだ。

初等部の一年生は魔法が使えない事を知っていたから、挑まれて断らなかった彼女もきっと降参するだろうと思った。

そう思っていたのに、何故か彼女は魔法を使って僕を拘束し…閉じ込めた。


…屈辱だった。

同じ歳の…それも女に負けた。

そんな気持ちで彼女を見れば、彼女はとても美しかった。

まだ幼いが、とても整った顔立ちで愛らしく…それに頭も良い。

彼女は僕の伴侶にすべきだと思った。


それなのに、彼女はリナリアの姉だと話し出した。

今の婚約者のリナリアよりも、彼女の方が良いような気がして…彼女が気になって仕方なかった。

どうしてあんなにも優秀なのだろうか?

普段はどんな事をしているのだろうか?


公爵家へ行く度に彼女を探すが、いつだって会えなかった。

冬季休暇になれば会えるだろうと足を運んだが、彼女は領地に帰ったと言われてショックを受けた。

何故、僕が態々会いに来たというのに彼女は居ないのだろうか?

そんな事を考えていれば口煩いリナリアの言葉が耳に入る。

少し高いリナリアの声にイライラし、黙らせた。

こんなに煩い女ならいらないと思った僕は王城への立ち入りも禁止にすると、リナリアが可哀想な程に惨めな顔をしたから愉快に思えた。

リナリアが自身の姉を僕に会わせないからいけないんだ。


冬季休暇を王城で過ごしていた僕は、ある日…使用人たちが僕と兄上を比べて噂しているのを耳にした。

兄上は優秀だと褒め、国は安泰だと話す彼らの言葉に僕は苛立った。

そんな兄上も以前より、僕に構う事も無くなって…最近では顔を合わせる度に勉強の事を聞かれる。

周囲の大人も兄上も僕に勉強ばかり押し付ける。

そんな事は僕には必要ないというのに。


冬季休暇が明けるが、彼女は一向に僕に会おうとしない。

仕方ないから僕は僕の周りでウロチョロする奴らに声をかけ、食堂で彼女と話す機会を作るように指示した。

彼らの提案で、困っている彼女を助けて話す口実を作る…という作戦になった。

だが、彼女の双子の兄によって計画は破綻した。

僕の取り巻き達が僕の指示だと言うから、僕はそんな事は知らないとシラを切る。

そもそも奴らの計画であって、僕はそれを聞いただけだ。

僕のせいじゃない。


兄上が僕に詰め寄ってきたが、僕は彼らの事などどうでも良かった。

僕の目的はリリア・クリスティアだけだったから。

それなのに計画は失敗し、彼女からは遠のいてしまった。


取り巻き達が居なくなれば、今度は令嬢達が僕を取り囲むようになった。

いつだって僕の周囲には僕を目当てに人が集まる。

三年生になると生徒会へと声が掛かったから仕方なく受けた。

兄上もした事だ、僕にだって声が掛かって当たり前だ。

色んな行事を計画するが、思ったよりも成果が出なかった。

特にチャリティーバザーは教会が煩かった…別に売れた金を全額寄付するなど誰が決めたんだ。

バザーにかかった費用だって、材料だってあるんだからそのお金は此方のものだろうと主張するが何故か凄く揉めてしまった。

面倒になった僕は責任を全て会計をしていた令嬢に擦りつけ、僕は次の行事の計画に移った。


中等部へと進学しても、何故か特進クラスではなく普通クラスだった。

この学園の大人達は馬鹿だと思ったが、普通クラスの方が居心地が良かった。

リリア嬢との接点もあまり無いまま、時は過ぎる。

だが、焦ったりしてはいない。

僕の周囲はいつだって美しい令嬢ばかりいる。

彼女らに嫉妬したリリア嬢がその内、僕のところに来るだろう。


だって僕は王族なのだから。

僕の侍従も僕に言っていた、僕が一番優れているのだと。

中等部からついた新しい侍従で、僕が言えばなんだってする男だ。

僕が不満を漏らせば、彼は僕の憂いを取り除く。

そして、僕は兄上よりも優秀だと常に言葉と態度で示してくれた。


それまでの侍従も僕の言う事を聞いていたが、彼は特別だ。

他の侍従は口煩かったが、彼はそんな事もない。

父上も僕にやっと良い侍従をつけてくれたんだと思えた。


高等部に進む前年、僕は隣国・ワインバル王国へと留学が決まった。

一年という短い期間だが外交にもなるからと父上から言われ、仕方なく行く事にした。

ワインバル王国はオステリア王国よりも人間が個性的で、令嬢はとても情熱的だった。

そして…僕はそこで新たに友人を得た。

彼とは同じ王族という事もあって気があった。

すぐに打ち解け…翌年には彼がオステリア王国に留学してくると言った。


彼が来てくれたら高等部もきっと楽しくなるだろう。


ブクマ・評価・感想・誤字報告ありがとうございます。


次からは第三章に入ります。

もしかしたら、明日は更新できないかもしれません。

出来てもかなり遅い時間になってしまします。


それにしても…ジュード殿下の回は、リナリアの回とは別の意味で書いてて辛かったです。

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