幕間 冒険者ギルド③
「つまり、ギルドで魔法の試験を受けていた…と言う事かな?」
目の前には王城の第一騎士団長のジン様、魔術師団長のビルショート様と何故かお父様が座っていて…。
今はギルドマスター室にいる。
魔法の試験で火魔法を出し、試験官と審判さんに見てもらっていると…何故か彼らが試験会場に現れたのだ。
ギルドマスターが息抜きの為に、この試験会場を眺めていると突然現れた魔獣に驚いて王城に連絡してしまったらしい…。
「それで試験中にサラマンダーが現れたと?」
ビルショート様が怪訝な顔で私を見るので、首を左右に振る。
「違います、火魔法で出したオオサンショウウオです。」
サラマンダーなどではない。
そもそもサラマンダーの見た目をしっかり知っているわけじゃない。
お祖父様がサラマンダーを退治したと言う話を最近どこかで聞いたので試してみようかなと…。
前世でオオサンショウウオが英語でサラマンダーと言われていたので、そのイメージで出してみただけだった。
因みにこの件…三回目だったりする。
何度説明しても何度も聞いてくるから、ちょっとウンザリし始めた頃…ギルドマスター室に新たなお客様が現れた。
「「リチャード様!アリア様!」」
祖父母の登場に驚く騎士団長と魔術師団長。
お父様はやっと来たかって顔をしていた。
「サラマンダーを出したんだって?」
お祖父様が私の両肩を掴み、揺さぶりながら問いかける。
…昔から、この行為が一番酔う。
横からお祖母様に止めてもらい…今度はお祖母様が両肩を掴んだ。
「火魔法で出したの?見たかったわ…残念ね。」
心底、残念そうな顔をするお祖母様に「見ます?」と問えば嬉しそうに目を輝かせた。
何故かその後ろでビルショート様と魔法の試験官が同じように目を輝かせる。
と、言うことで!
再び試験会場にやってきましたー!!
折角だからリオンにも何か出して貰いましょう。
そんな思いでリオンを見れば、リオンは苦笑して近づいてくる。
「まずは私の“オオサンショウウオ“から…。」
「ちょっと待って!」
私が始めようと手を翳すと、何かを思い出し慌てて魔法の試験官が声をかける。
不思議に思ってそちらを見れば凄い心配そうに私を見ている。
「さっきの魔法と同じなんだよね?魔力は枯渇したりしないのか?」
「…しませんよ?」
コテンと首を傾げると、皆様ドン引きしてるんですけど?
まぁ…いっか。
「では!」
再び手を翳し、目を瞑る…そして魔力を込めた。
試験会場に再び炎に包まれたサラマンダー…では無く、オオサンショウウオが現れる。
私達から離れて見ていた方々が驚愕の表情で魔法を見ている。
すると、私の横で同じように魔力を込めたリオンが魔法を発動させた。
…これは!!
「…え?アイスドラゴン?」
私の問いにリオンは良い笑顔で応えた。
皆様は驚きのあまり顎が外れそうな顔をしているが…大丈夫だろうか?
「「………。」」
「「「「「………。」」」」」
魔法で出した2体の魔物はさっさと消して、再びギルドマスター室に戻ってきた私達。
皆様…なぜに無言?
「あー…つまり、試験官が二人が強すぎて戦うのを嫌がったから…出したって事だね?」
先ほどからずっと黙っていたお父様が口を開き沈黙を破った。
破ったものの…その後も誰も喋らない。
「リオン、リリア。今度から試験の際は相手のレベルまで手加減した方が良い。」
「そうね、二人が強過ぎちゃって…相手は困ってしまうわね。」
祖父母はそう言うが、そもそも試験を手加減するって可笑しく無いだろうか?
今の自分の全てで挑み、それに対して評価してもらうのであって…手加減したんじゃ自分の評価を自分でしているものではないだろうか?
私は疑問を口に出すと、全員が苦笑する。
「…問題は、ランクだな。」
剣術の試験官がボソッと声を漏らすと、ギルドマスターと審判さんと魔法の試験官がビシッと固まった。
そして分かりやすく頭を抱える。
「俺と対峙した二人の剣の腕は確かだ。上位ランクでお願いしたい。」
剣術の試験官がギルドマスターに報告すると、渋い顔で頷く。
「さっきも見た通り、魔法も凄いから上位ランクで良いと思う。」
魔法の試験官もギルドマスターに報告すると、こちらも渋い顔で頷いた。
「暫定の…Aランクってとこか。まずはFランクの依頼を3件こなしてもらい、次にDランクからAランクまで順番に2件ずつこなせたら…Aランクって事でどうだろう?」
「「「賛成です。」」」
試験官2名と審判さんが同意すると、ギルドでの話し合いが終わったようだ。
「暫定のA…。」
「さすがはクリスティア家…だな。」
騎士団長も魔術師団長も吃驚した顔で、私達を見る。
今後は人目が多いところでは出さないようにと釘を刺されて、今日は解放してもらえた。
リオンと共にホッとしていると、騎士団長と魔術師団長が近づいてくる。
「高等部に進むと聞いたが、ぜひ午後は騎士団に来て欲しい!」
「いや、魔術師団に来てもらえないだろうか?」
と、互いを押しやりながら私達に懇願してきたのだった。
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