幕間 冒険者ギルド②
ーーーーーカンッ!
開始十秒…リオンの剣が試験官の剣を弾き飛ばした。
……ちょっと早くない?
あの試験官って、強いんだよね?
「…すまない、もう一度いいだろうか?」
試験官がリオンに声をかければ、リオンはニッコリと微笑んで了承した。
再び試験が始まる。
ーーーーーキンッ!……ガッ
「リリア、ごめん!そっちに剣が飛んじゃったー。」
飛んできた試験官の剣が私の横の壁に刺さった。
勿論、私は無傷。
「…すまない、ちょっとゆっくりやってもらえるだろうか?」
再び試験官が再試験を要請する。
…やる意味があるのだろうか?と思っていると、リオンがあっさり了承した。
おっ!今度はリオンが手加減してるのか、何度か剣が打つかり合う…が、やはり試験官の剣が弾かれた。
「そこまで!」
壁際に立っていた男性が声をかければ、剣の試験官は息を切らして壁の方へ移動する。
壁際の男性…この際、審判さんと呼ぼう…はリオンに魔法の試験を続けて行うか確認する。
「あっ、はい!お願いします。」
リオンはあっさりと了承して、剣をしまった。
「では、続いてリオン・クリスティアの魔法試験を行う。」
審判さんの声に、もう一人の試験官が前に出る。
彼もまた…恐らく…きっと…優秀なのだろう。
本人はリオンにビビってるようにしか見えないけども。
「リオン・クリスティアです、よろしくお願いします。」
再びリオンが一礼すると、試験開始の合図だ。
今日のリオンはどんな魔法を使うのだろう?
…詠唱はするのだろうか?
「……。」
リオンはやはり無詠唱で魔法を発動させるようだ。
氷の狼が5匹ほど現れ、試験官へと襲いかかる…。
「ちょっ!!!ギブアップーーー!!」
襲いかかる寸前に試験官がギブアップする。
急いでリオンが氷の狼を消すと、試験官が審判さんに文句を言って詰め寄っていた。
「こんなの無理だって最初から分かってたじゃん!」
「いえ、決まりですから…。」
「相手はクリスティア家だよ?しかも噂の双子じゃないか!!こんなの試験する意味あると思う?」
「ですが、一応…決まりでして…。」
「決まり!?だからって、本気の彼らに挑まれたら命がいくつあっても足りないじゃないか!!」
「いや…だからって試験無しってのも問題になるから…。」
「君は審判だからいいけど、僕は命懸けなんだよ!?」
「いやいや、私だって審判してたら流れ弾だってくるんですからね?そもそも貴方が防げば良いだけの話でしょ?」
「防げって言われて、あれを防げると思うの?無詠唱で魔法発動させるのだって本来ならあり得ないんだからね?」
「そうは言いますけど…。」
凄い揉めてるけど大丈夫なのかな?
不安に思ってリオンを見れば、リオンは私に「どうぞ。」と言って試験会場へと誘う。
終わったからって…投げるんじゃない。
仕方ない…と思いながら審判さんと試験官の元へ行けば、私が近づいてきた事に気づく二人。
いや、三人だな。
剣術の試験官が私の前へと立つ。
「リリア・クリスティアです、よろしくお願いします。」
そう言って一礼し、踵でカツンと地面を蹴り剣を手にする。
「その…剣は普段から魔法陣から出しているのか?」
試合前に試験官から質問され「はい。」と返事をすると…何故か引かれてしまった。
どこか可笑しいのだろうか?
「その剣は…魔剣か?」
頬をヒクつかせながら質問してくる試験官に再び返事をする。
「はい、あっ…でも大丈夫です。剣術の試験中は魔力を込めたりしないので普通の剣と同じです。」
「あぁ…リオン・クリスティアもそうだったな。」
私の答えに頷くが…顔の引き攣りは治ってない。
そんな、化け物でも見るような目で私を見ないで欲しいのだけど。
「そろそろ…始めても?」
一向に試験が始まらないから、催促すれば試験官が一度息を吐き…頷いた。
よし!頑張るぞっ!
……開始1分…目の前に蹲る試験官。
その試験官の剣はリオンのいる壁の真横にぶっ刺さっている。
いや、ほら…少しは打ち合った方がいいかなって思って頑張ったんだけどね?
なんだろ…こうなっちゃうよね?
うん、仕方ない事なんだよ!!
「いーやーだー!!絶対に嫌だ!!!!魔法の試験とかなんで受けるのさ!必要ないじゃん!?やる意味ないでしょ?なんでやるのさーーー!!!」
審判さんに引き摺られて私の前へポイッと投げられた魔法の試験官。
大人が泣きながら子供のように引き摺られてくるの…初めて見た。
「あの…すみません、個人的な理由で両方受けてしまって…そのー…もし良ければ攻撃しないので魔法だけ見て頂いて判断とかじゃ駄目ですよね?」
私の提案に目の前の試験官と審判さんは互いに顔を見合わせ一つ頷く。
そして魔法の試験官さんは目をキラキラさせて「折角だから凄いので!」と注文をつけてきた。
「得意な火魔法だと…屋内じゃ危ないですよね?」
私の言葉に審判さんが首を振って否定する。
「問題ありません、どんな魔法でも対応出来るようにギルドマスターが結界を張っておりますので。」
周囲の木々を見渡せば…確かに少し魔力を感じる。
なるほど、色んな希望者が来るんだもんね。
「では!…詠唱は必要ですか?」
魔法を展開する前に一応確認すれば、首を振って「無詠唱で大丈夫。」と言って再びキラキラした目で見られた。
や…やりづらい。
手を翳し目を瞑る。
魔力を最大限に込めて……発動した。
ーーーーー現れたのは、炎に包まれたサラマンダー。
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