幕間 冒険者ギルド①
14歳の誕生日を迎えた私はリオンと共に冒険者ギルドに向かっていた。
冒険者ギルドは各地にあるが、最初の登録は必ず王都と決まっている。
試験官がいるのが王都の本店だけだからだ。
因みにクリスティア領にも冒険者ギルドの支店はある。
年齢的にも体格的にも一人で大丈夫だと判断されると貴族達は受ける事が多いそうだ。
なので年齢はバラバラ…持っていない人も少なくない。
特に令嬢は持ってない方が多い。
…私も令嬢なんですが?
ラライカさんのように辺境伯家の令嬢はほぼ持っているそうで、私よりも成長が早かったラライカさんは既に取得済みだ。
ジョニー様を含む元・取り巻き達も取得済みなんだとか。
リオンは私の成長を待って、一緒に取得しようと言ってくれた。
私よりも成長が早かったリオンの身長は既に170センチに届きそうで、体格も…結構しっかりとしている。
筋肉もそれなりに付いていて…たまに見せにくる。
自慢かっ!?
14歳になった私の身長も160センチにあと一歩の所で届かないが…他も育った!
胸は前世と同じくらいなので、結構大きめです!
…思わず胸を張ってしまった、失礼。
お尻も…それなりに育ってます。
問題のウエストは…日々の鍛錬のおかげで細めで括れています。
この調子で、体型キープしないと太りやすそうなんだよね。
…16歳になったアレスは…もう本当…規制かけてくれないと困るくらいに魅惑的です。
学園でもさぞモテただろうに…と、心配していたがお兄ちゃん方がガードを固めて守ってくれたらしい。
言い寄ってくる令嬢には「可愛い婚約者がいるから。」って嬉しそうに話してたとか…。
そんな令嬢方は敗北して去っていき、次に挑んでくる令嬢を阻んでくれたらしい。
…天然のタラシじゃないか!
とは思ったけど、害がないなら良いかな。
冒険者ギルドは真っ白な壁に真っ黒な屋根の三階建ての建物で、受付は一階にあった。
私とリオンが新規冒険者の受付に並ぶと、隣の窓口が偉く騒がしい。
暇なので、その様子を見学してると…リオンに肩を叩かれる。
『そんなに見つめちゃダメだよ?』
声に出せば聞こえてしまうからテレパシーで私に注意するリオン。
『うん、あんまり見ないで…声だけ聞いとく。』
私の返答にコクンと頷き、呼ばれるのを待つリオン。
…聞いてるのは良いのか?
「だーかーらー!なんで報酬が全額じゃないんだよ?ちゃんと数は合ってんだろ?」
それなりに体格の良い…いや、恰幅の良い?貴族風の男性が窓口の受付嬢に怒鳴る。
唾が飛びそうな勢いで、ちょっと可哀想だ。
「数は合ってますが、品質が悪過ぎます。此処など半分しかないじゃないですか?」
受付嬢は淡々と返すが、貴族風の男性は鼻で笑う。
「俺が誰だか分かって物言ってんのか?キャロリーヌ男爵家の長男だぞ?」
偉そうに仰反る姿に…思わず吹き出しそうになった。
久しぶりに聞いた名前に肩が揺れると、リオンが私の肩を抱いて…俯いた。
…こらっ!笑いを堪えるのに私を利用するんじゃない!
さり気なく私もリオンに寄りかかり…俯く。
そもそも、冒険者ギルドに貴族は関係ないだろうに…と心でツッコミを入れていれば目の前の受付嬢に名を呼ばれる。
「リオン・クリスティア様とリリア・クリスティア様ですね?書類を拝見します。」
事前に申込用紙を記入していたので、書類を渡し確認してもらう。
こちらの受付嬢も隣を完全無視して作業に徹している。
プロだな…。
「書類は問題ありませんでしたので、次は実技試験になります。剣術と魔法とどちらにしますか?」
「「じゃあ、両方で!」」
受付嬢の言葉に私とリオンが返すと、何故か背後が騒ついた。
そんなに珍しいかな?声が重なる事なんてよくあるのにな…と思っていると、受付嬢も何故か目を見開いている。
不思議に思ってリオンと目を合わせ…互いにコテンと首を傾げる。
「あ…失礼しました、両方というのが珍しかったもので…試験はこの奥の扉を出た屋外で受けて頂きます。」
受付嬢の説明を聞き、私達が奥の方へと進む頃には何故か隣の窓口の男性も静かになっていた。
どうやら報酬に納得したようで、良かったね!
奥の扉を出ると、私達の前に並んでいた方が試験を受けていた。
試験官は現在、試験をしている筋肉質な男性と…奥にもう一人ヒョロッとした男性の2人のようだ。
今は剣術の試験で…もう一人の試験官が恐らく魔法の試験官だろう。
今回、剣術と魔法を両方受けるのには訳がある。
基本的にはどちらでも構わなくて、要はある程度の力があれば良い。
両方受ける事にしたのは、祖父母の為だ。
お祖父様の剣術で冒険者になれば、お祖母様がガッカリし…。
お祖母様の魔法で冒険者になれば、お祖父様がションボリする。
両方受けて、両方に合格すれば祖父母も喜んでくれるんじゃないかと思っての事だ。
因みにアレスの時も両方受けたそうで、祖父母が喜んだと言っていた。
更に魔法薬も作るからと商業ギルドにも登録すると、マリア様がとても喜んでくれたと嬉しそうに語った。
それを聞いた私もリオンも同じように喜ばせたいと思ったのだ。
どうやら前の人が終わったようで、彼はぐったりとしながら私達の横を通って受付へと向かっていった。
「次、リオン・クリスティア!まずは剣術の試験を受けて下さい。」
気づかなかったが、私達のすぐ傍の壁に凭れていた男性がリオンを呼んだ。
…影が薄過ぎやしないか?吃驚したよ…本当に。
「リオン・クリスティアです、よろしくお願いします。」
リオンが一礼し、踵でカツンと地面を蹴り剣を出すと…リオンの剣術の試験が始まった。
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