魔法石のアンクレット
冒頭は前頁に続き、リオン視点です。
「「「「「しっーーーー!!」」」」」
お兄ちゃんが大きな声を上げたので、全員がお兄ちゃんに向けて静かにするように人差し指を立てて唇に当てる。
お兄ちゃんも慌てて口を両手で覆うと庭園を振り返った。
「あっ…大丈夫だよ?防音にしてあるから!」
皆んなが慌てているので補足すると、何故か睨まれてしまった。
だって、こんなに人数居たら音とか漏れちゃうって思ったんだもん。
「良かったね、仲直りできて。」
再び庭園を覗き込みながら、僕はリナリアに声をかけるとリナリアは嬉しそうに微笑んで頷く。
とても嬉しそうだ!
「…それにしても、アレス君は…あれだな。なんか凄いな!」
「リリアをその気にさせる為にアレスはリリアへの愛情表現をストレートに表すようになったのよ。」
お父様とお祖母様がアレスの話をしている。
…お父様がアレスを褒めて…いるのかな?
「あんな風に表現してくれると、受ける側も嬉しいわよね。」
「そうなのか!?」
お母様の言葉にお父様が振り返って凄い勢いで何かを確認していた。
なんだろう…気づくとこの部屋の人達、皆んなが赤面しながら互いのパートナーを見てるんだけど。
「リチャードはアレスと同じでストレートに表現してくれるわね。」
「ん?勿論だ…アリアはとても美しいからな。」
…甘いんだけど?これって伝染するの?
庭園を見ればアレスと同じようにリリアの顔も真っ赤になってるし…伝染するのかな?
「二人が…上手くいくと良いね。」
僕がキョロキョロしていると、リナリアが真剣な顔でそんな事を言うから思わず笑ってしまう…。
「本当にね…今が恋人同士じゃないのが不思議なくらいだよね。」
そう言って僕達は再びリリア達の様子を伺うのだった。
◇◇◇◇◇
「これ…アレスに貰って欲しくて、リナリアに教わりながら作ってみたんだけど…。」
紅茶を飲みながら何度目かの話の切れ目で思い切ってラッピングした袋をアレスへと渡す。
アレスは「ありがとう、見てもいい?」と言って受け取ると、中身を取り出す。
チャリティーバザーの時と同じクッキーと、ハンカチだ。
だが…これはどちらも私手製となっている。
リナリアが刺繍する横で、私もアレスの為に刺繍をしたハンカチ。
「ごめん…リナリアみたいに上手に出来なくて…。」
私がおずおずとアレスの顔色を伺うと、アレスは嬉しそうに微笑む。
…可愛い!
「いや、これが良い!リリアが僕の為だけに刺繍したんでしょう?凄い嬉しい…。」
更に笑みを深めるから…抱き着きたくなって私は自分の手を抑え込んだ。
アレスは格好良いのに、笑うと可愛いってどういう事!!
そんなの…そんなの…ときめいちゃうじゃないっ!!
「僕からは、これを…バレンタインデーのお返しに用意した物なんだけど。」
そう言って小さな箱を出すと中が見えるように開き、私へと渡す。
アレスの瞳と同じ綺麗に光る碧い石と…水晶かな?無色透明な石が付いたアンクレットだ。
「リリアにずっと身につけていて欲しくて、マリア様に相談したらアンクレットを勧めてくれたんだ。」
マリア様…確か、お祖母様のお姉様だ。
「先日、マリア様の手伝いをした際に作り方を教えてくれて…碧い石には僕の魔力が入ってるんだ。」
そう言ってアレスはアンクレットを手に取ると碧い石がキラキラと光る。
「僕とお揃いのアンクレットになっているんだけど…無色の石に、リリアの魔力を込めてくれないかな?」
私が頷くとアレスは自身の足首にあるアンクレットを取り外し、テーブルへと置いた。
アンクレットの無色の石に手を翳すと、アレスにやり方を聞きながら私は魔力を込める。
アレスが身につける物だから…彼に何かあれば助けてねと思いを込めて。
そして、私の方のアンクレットにも同じように魔力を込めると…お揃いのアンクレットが完成した。
石は私の瞳と同じヘーゼルの色だ。
「リリア、ありがとう。」
アレスはアンクレットを手に取ると石を眺めながら微笑み、サッと足に付ける。
そして…もう一つの私のアンクレットを手に取り…。
………私の前に跪いた。
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やっと、2頁前の冒頭を回収し始めました。
今日も短めですみません。




