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たぶん...悪役令嬢だと思います  作者: 神楽 紫苑
第2章 私リリア!学園に通うの。
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素直な気持ち

応接間へと入るとマリーが直ぐに紅茶を用意してくれる。

私は二人の前にお皿を並べて、温かいうちに急いで食べようと声をかけた。

まだ柔らかい出来立てのクッキーは、普段食べている物とは別物!と思う程だ。

熱々を口に含むと柔らかくて…少しだけ香ばしくて…甘ーいクッキーが直ぐに口の中へと消えていく。


「あぁ…これは作った人しか味わえない…美味しさ…。」

私はあまりの美味しさに目を瞑り天を仰いだ。

チラッと二人を見れば、同じように天を仰いでいる…。

その光景を苦笑しながらマリーが紅茶を淹れてくれた。


「我を忘れてしまうところだった…。」

「「…うん。」」

私が呟けば、二人も何故か同意して頷く。

シンクロは私とリオンの十八番だが、リナリアもリオンと合うようになってきたのかな?

むっ…なんだこの感情は!?

…嫉妬なんかしてないんだからねっ!


「でも、何で応接間なの?リビングやダイニングの方が近かったよね?」

リオンは厨房からここまで来る必要はあったのかと不思議に思ったらしい。

リナリアと同じように首を傾げている。


「…だって、量は限られてるじゃない。ここなら使用していたら誰も入って来ないでしょ?」

お皿のクッキーやマシュマロに目を向けると、リオンとリナリアもお皿を見て…ウンウンと頷いた。

そう…チャリティーバザー用のクッキーは味見のみ、マシュマロも腕に限界がきたから量産はしていないのだ。



「マシュマロは…コーヒーやココア、ホットチョコに入れても美味しいのです。」

パクリと口に含むとモニュモニュと噛み締めながら、おすすめの食べ方を話す。

二人も同じようにマシュマロを口に含みモニュモニュしている。


「あと、焼いたら中はトロッと外はカリッとして…もっと美味しいのです。」

キャンプの定番…あとは一昔前の焼肉屋さんの締めとかね。

私の場合は普通にお家のガスコンロで炙って食べていたけども。


「パンに乗せて焼いても美味しいのです。」

スモアトーストとかも良いよね。

チョコと合わせてめちゃくちゃ甘いやつ…ブラックの苦いコーヒーなんか最高じゃない?


「……リリア、残酷すぎるよ。」

「お姉ちゃん…なんでそれを今言っちゃうの?」

美味しい食べ方の説明をしているだけなのに、二人からジト目で睨まれる。


「どれも食べたくなっちゃったじゃん!」

……あぁ…そうだよね。


「…ごめんなさい。」

そう言って私は少し冷えたメレンゲクッキーをサクリと食べた。

謝りながら食べるとは…と二人に更に睨まれたが、私の咀嚼音を聞いた二人は不思議そうにメレンゲクッキーを見つめた。

そして小さなメレンゲクッキーをパクリと食べる二人…。


……沈黙が続く。

おかしいな?美味しいはずなんだけどな?



「……サクッ…」

暫くして小さな咀嚼音が聞こえ、二人は目が飛び出る程に見開いた。

大丈夫かな可愛い目が溢れ落ちそうだけど…?


「これ…面白くて、美味しい。」

「サクッサクッてして…溶けちゃう!」

そう言った二人は顔を見合わせ、美味しいのポーズを取った。

…誰かっ!映像撮れるやつ持ってきてよー!!

永久保存版だよっ!


「…リリアも可愛い顔してるよ?」

「マシュマロ食べたお姉ちゃんは可愛かったよ?」

私は心の声がダダ漏れていたのか、二人の可愛さにやられていると…何故か二人から“可愛い“を連呼される。

そんなフォロー…いや、嬉しいけどね。


「いつも言うけど、リリアは可愛いんだよ?」

「…っ!?」

リオンの本気トーンの言葉に思わず赤面して声が詰まる。

そんな事…言ってくれるのリオンとかアレスくらいだよ!


……そういえば…アレスからホワイトデー、楽しみにしててって言われていたな…。

チャリティーバザーがあるからって二週間後にしてくれたんだよね。

この間の手紙に…会えるの楽しみにしてるって書いてあったっけ…。

………ボンッ!



「あ、大丈夫だよ。リリアが好きな人の事を思い出してるだけだから。」

私が一人…アレスの事で頭がいっぱいになっていると、向かいに座っていたリナリアが不安そうな顔になり…リオンが説明していた。

そんな説明…しなくていいんですけど。


「お姉ちゃんの…好きな人?」

コテンと首を傾げるリナリアに、リオンは更に細かくアレスの話をし出す。

個人情報の漏洩である…頼むから止めて欲しい。

一通りのアレス情報と私のアレスへの思いの全てを代弁し終えたリオン…。

それを聞いて頬を染めて「きゃーっ」となるリナリア…。

そのやり取りを見て瀕死の状態の私…誰か助けて。


そして…後日、ホワイトデーの感想を求められる私…が思い浮かぶ。



「お姉ちゃんにもお相手がいると聞いて…正直、安心しました。」

紅茶を飲み、少しだけ落ち着いた頃…リナリアがポロッと呟いた。


「ジュード殿下がお姉ちゃんに取られちゃうかもって思っていた時もあったから…。」

今は違うってはっきり分かるけど…と続けるリナリアに、私は微笑んだ。

幼いながらに恋…してるんだな。


「私も…リナリアと同じように好きな人がいるから、心配しないで大丈夫だよ。」

そう…リナリアに告げると、リナリアは嬉しそうに「はい。」と返事をする。

こんなに可愛い子を泣かせるなんて…と、少しだけジュード殿下に怒りが込み上がる。


「今度のチャリティーバザーに、リナリアのハンカチと私のクッキーを一緒にして出すじゃない?私…とても嬉しいって思ってるの。」

手元の空になったクッキーのお皿を見つめ、再びリナリアへと向き直り今の気持ちを伝える。

私は上手い言葉とか言えないから…リナリアに思った言葉をそのまま素直に伝える事しか出来ないけど。

出来る限り言葉にして伝えたいって思った。


「私も…私も嬉しい。お姉ちゃんとお兄ちゃんと一緒に準備出来たから楽しかったし、とても嬉しいの!」

私の言葉に顔を綻ばせながら喜ぶリナリア。

笑顔が戻って良かった…喋れなかった言葉が戻って本当に良かった。


目の端に涙が溢れそうになるのを笑って誤魔化し、その後も暫くお茶を楽しむのだった。

ブクマ・評価・感想・誤字報告ありがとうございます。


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