食堂での事について①
「クリスじゃないけど、僕も明日から学園を歩くたび…恥ずかしいよ。」
生徒会室に隣接された会議室で一際大きな溜息を漏らすクロード殿下。
その向かい側にはジュード殿下と取り巻き達が座っている。
クロード殿下の横にはお兄様や他の生徒会メンバーが勢揃いだ。
ジュード殿下の取り巻き達は、生徒会メンバーの弟達ばかりだった…。
因みに私はリオンと共にお隣の生徒会室でお話を聞かせてもらっている。
会議室と生徒会室は扉一枚で繋がっており、その扉は開いたままだが…向こうからは私達が座るソファーが死角で見えないらしい。
私達と共にいるのは、第一騎士団の団長の息子でもあるジル様だ。
ジル様はリオンに許可を得て、現在はリオンの体を触っている。
…この言い方だと語弊があるな。
リオンが細腕でジョニー様を持ち上げていたので、気になっていたようだ。
「綺麗に筋肉が付いているけど、日頃から何かしているのか?」
リオンの腕を色んな角度から見ては摩り、ジル様はリオンを研究しているかのようだ。
決してセクハラでは無い。
「毎朝、剣術と魔法の鍛錬をしてます。」
リオンは和かに微笑みながら答える…が、嫌では無いのだろうか?
あんなに触られたら、私は嫌なんだけど…。
「剣術!?…それは、いつからだ?」
騎士団長の息子も…やはり剣術や体術には自信があるのだろうか?
超真剣モードでリオンと話が弾んでいた…が、私達はそんな事の為に此処にいる訳ではない。
お隣で話している内容を聞いての事実確認と、今後の対応などの為に呼ばれているのだ。
せめて、私だけでも隣に集中しておこう。
「この紙は何かな?」
見えはしないが…紙と言って思い当たるのは予約席と書かれた紙しか無い。
あれは皆んなどうかと思っていたと思う。
「それは僕ではありません。彼等が勝手にやった事です。」
ジュード殿下はしれっと答えているけど、ならば何故その席に当たり前のように座ったのだろうか?
本来ならば、いけない事だとジュード殿下が取り巻き達に注意すべきでは無いか?
「…彼等が勝手にやった事だと言うけど、ジュードは注意しないの?」
私と全く同じ事を思ったクロード殿下は呆れながらも聞き返す。
「何故、私が注意しなければならないのでしょうか?」
ジュード殿下の言葉に何人かの溜息が聞こえて来る…大変ですね。
彼に誰か教育して差し上げて頂けないだろうか…。
あのような考えの王族が居ては、この国は危ない気がする。
「はぁ…、そろそろ本題に入ろうか。」
クロード殿下は小さな溜息を一つして、今日のお昼休みの話を始めた。
答えるのはジョニー様と、他の取り巻きが主だろう。
何故、あのような事をしたのか…。
そして、本来の計画を話すようにとクロード殿下は続けた。
「ジュードの事は気にせず本当の事だけ話しなさい。」
そう言うとジョニー様がポツポツと答え始める。
先ずは例の予約席の話からのようだ。
いつも混む食堂で大人数で座る席を取るのは大変だからと、お昼休みよりも前に食堂に行き予約席と書いておいたそうだ。
そうすれば、自分達がお昼休みが始まって直ぐに走る事も無いと考えたらしい。
そして…今日のあの出来事の話になる。
取り巻き達が私達に文句を言い、私が困ったところでジュード殿下が出てくる予定だったらしい…。
そして、困った私を助けて心証を良くしたかったと…。
…それで、心証が良くなると思ってる事に私は吃驚だよ。
そして…そうまでして何故に私に絡むんだ?
「なるほどね…よく話してくれたね。」
「兄上!今の話は作り話だ!信じないで下さい!!」
ダンッとテーブルを叩く大きな音と共にジュード殿下は叫んでいた。
「…作り話?事実では無いと?」
「そうです!そんな事を計画などもしていません。彼等が勝手にやった事です。」
はいっ!出ましたー…勝手にやった事。
またかよ…と、思いながら私は溜息を漏らす。
いつの間にか剣術の話を止めていたジル様もリオンも私と同じように溜息を漏らしていた。
どうやら話が始まったから、こちらに集中してくれたらしい。
「また…勝手にやった事…なんだね?」
クロード殿下は呆れながら答える。
取り巻き達は少しだけ落ち着きが無くザワザワとし出した。
仕方ないと思う…命令されてやったのに、勝手にやったなんて言われたら堪らないよね。
再び…今度は態とらしく大きな溜息を吐き、クロード殿下は続けた。
「ならば彼等には謹慎か…それ以上の罰則を科せられても、ジュードには関係ないと言う事だね?」
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ちょっと終わらなさそうなので、今日は此処までにしました。




