リオン、怒る
ーーーーーガッ!
ジョニー様の手が私に届く寸前で…リオンが思い切り手刀で叩き落とした。
あまりの衝撃にジョニー様は蹲る。
リオンは見た目以上に力があるので、あれはかなり痛いと思うけど…骨とか折れてたらどうしよう…。
「ねぇ、僕のリリアに気安く触らないでよ。」
リオンは珍しく表情までも怒っている…初めて見るかも知れない。
痛みからか未だにジョニー様は蹲ったままで、周囲の取り巻き達もどうしたら良いのか分からず後ろをチラチラと見ている。
その仕草に後ろの方をチラッと見るとジュード殿下が一歩踏み出そうとしたまま止まっていた…。
なんだろう…こんなつもりじゃなかったみたいな空気感は…。
すると、目の前のジョニー様もチラッと後ろを見た。
やはりジュード殿下を見ているな。
「……態と…ですか。」
態と私達に突っ掛かって来たのか…。
それなら、この状況にも納得だな。
「へぇ、態とリリアに触ろうとしたの?」
お隣のリオンから、とんでもない殺気を感じ…思わずリオンを見てしまう。
……先程よりも更に冷たい表情だ。
これはヤバい。
「僕のリリアに態と…ふーん。」
一歩ずつジョニー様に近づくリオンは、とてもゆっくりとした動きだ。
だが、それでもジョニー様は動けずにその場でガタガタと震えている。
リオンの威圧は私のとは桁違いだ…この場にいる皆んなが誰も動けないでいる。
「僕ね…君の事は許せそうにないなぁ。」
リオンはジョニー様の前まで来ると胸ぐらを掴み立ち上がらせ…いや、ちょっと浮いてる?
これはヤバいっ!
「クリスお兄ちゃーーーん!!」
私は出せる限り大きな声で叫んだ。
これは止めなければ…ジョニー様が危険だと思ったからだ。
此処はやはり、身内の方に片付けて頂こう!
「はーい……って、出にくいよ?この状況で呼ぶ?」
クリス様は嫌そうに駆け寄って私の元に来てくれた。
「クリスお兄ちゃんにしか頼めないの…ダメ?」
私は渾身の力を込めて、全力の上目遣いでお願いしてみる。
勿論、少しだけ目をうるうるさせるのを忘れない。
…私がやってもリオンには遠く及ばないが、それでもやる!
リオンの為だ。
「うぅ…その顔は反則だっ!仕方ないなぁ…。」
クリス様は何故か赤面しながらも渋々リオンとジョニー様の間に立ち、リオンの手をトントンして降ろさせる。
ジョニー様はそのまま床にベシャッと座り込んでしまった。
「ごめんね?僕の馬鹿な弟が迷惑かけちゃって…コイツの事は許さなくて良いけど、僕だけ許してくれない?」
「なっ!?お兄様っ?」
クリス様はリオンに謝罪?すると、リオンの威圧も霧散し…周囲はホッと息を漏らしていた。
ジョニー様はクリス様が自分を庇ってくれると思っていたのか信じられないと言う目でクリス様を見る。
「当たり前だろ?決してやってはいけない事をジョニーはしたんだから!」
クリス様はクルッとジョニー様の方へと振り返り、見下しながら溜息と共に吐き出す。
「こんな騒ぎにして…恥をかくにも程があるだろ?明日から学園を歩くたびに恥ずかしい思いをする僕の事も考えてよね!」
クリス様は見るからに嫌そうな顔でジョニー様に文句を言う…。
…同情します。
「これは!これはジュード殿下がっ…」
ジョニー様が反論しようと口を開くが、途中でクリス様に手で口を塞がれてしまう。
「それ以上は言ったらダメだよ?ジョニー、どんな理由があったにせよ王族が相手だぞ?…それくらい分かれよ!」
先ほどまでと打って変わって、クリス様は真剣な顔でジョニー様に囁く。
そう…たとえ、今回の事がジュード殿下の指示だとしても黙っていた方が彼の身のためだ。
「あと…僕はクロードとは友達だ!ジョニーとは違う。」
クリス様は、クロード殿下に媚を売ってるわけではないとジョニー様に話し始めた。
「クロード殿下と呼んでいないだろ?僕達は友人関係にある…だから、クロードがいけない事をしようとすれば止める!…ジョニー達とは違うんだよ。」
もし今回のような事をクロード殿下が考えたのなら、クリス様は止めただろう。
取り巻きと友人は違う…間違った事をしようとすれば、止めてくれるのが友人だ。
「リオンやリリア嬢はジョニーのように王族に媚を売ったりはしない…彼等には公爵家としての矜持があるからだ。」
同じ公爵家のクリス様も、お兄様も媚は売らない。
王族に続く、最高位の貴族の息子だからだ。
「いい加減…遊んでばかりいないで勉強するべきだな、同じ公爵家なのに差がつき過ぎだ!そもそも特進クラスにも入れないなんて…。」
もう本当に信じられない…と聞こえてきそうだ。
クリス様も苦労してるんだな…。
「リオン、リリア嬢…悪かったね。」
「…次はありませんよ?」
リオンは先程までの殺気が嘘のような笑顔で答えるが…その言葉は怖い。
次…あったらどうするの?
「あぁ、次は僕も止めないよ。」
クリス様はニコッと笑って答えた…が、それも困る。
リオンに犯罪者にはなって欲しくない。
「社会的なのと、物理的なの…どちらが良いかな?」
そして、リオンは次を考えないで欲しい。
どっちもダメだろぅ…?
「僕的には物理でお願いしたいね!社会的だと僕や家族に迷惑がかかるから。」
おいおいっ!弟は良いのか?
物理って事は……ダメダメ!このお話に規制かかっちゃうじゃんっ!
…そう言う事じゃないな。
「リリア、大丈夫だよ。僕…完全犯罪を目指すから!」
リオンは、いつもの笑顔でそんな事を言うから…ついつい私も笑顔になり…って!
「全然、大丈夫じゃ無いじゃん!此処で確認した時点で最重要容疑者だよ…!」
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