リオン、絡まれる
リオンとジュード殿下の事を話したは良いが、リナリアがどうしたいのかと言う結論に達した私達は翌朝リナリアに聞いてみる事にした。
一応、望むのならば完全犯罪まで計画する事を伝えると凄い勢いで首を左右に振られ…断られた。
私もリオンも兄姉として、まだ信頼されてないのかとシュンとしてしまう。
「私は今でもジュード殿下を好きなので、今は何もしないで欲しいの…。」
リナリアが申し訳なさそうに言うから今度は私達が首を振る。
とりあえずは、ジュード殿下のやらかした証拠を集めるだけに留め…いざと言う時の切り札にしようと思う。
お母様にお願いして、ジュード殿下とリナリアの婚約した際の誓約書も熟読しておこう。
それとは別に、昨日クロード殿下から聞いたチャリティーバザーの話をリナリアにすると「頑張ってみる。」と何とも可愛い感じに返事をされ…私は心の中で暫し悶絶してしまった。
私も頑張らねば!
そんな穏やか?な朝の始まりに今日も良い事あるかなぁと学園に向かった私だったが…期待などするものでは無かった。
いや、授業はいつもの様に集中していなければ見逃すほどのスパルタで…それはそれで楽しいので問題はなかったが…。
問題はその後に起きた。
午前の授業を終えて、特進クラスの面々は嬉々として食堂に向かう。
その最後尾に私とリオンもいた。
食堂に入り、いつものように日替わりのランチを受け取ると席を探す。
何故か一つのテーブルに手書きで予約席と書いてある。
そもそも学園の食堂で席が予約出来る訳もないのだが…とても嫌な感じがしたので、そこから一番離れた席を何とか見つけ出して座った。
嫌な予感と言うのは案外当たるもので、予約席にはジュード殿下と取り巻き達が座り出す。
周囲は怪訝な目でそれを見ていた。
「あの席の近くにしなくて良かったね。」
リオンが小さな声で私に話しかけてきたので、ウンウンと頷く。
「関わらないのが一番だね!」
私も同じように小さな声で話し、ランチを食べ始めた。
リオンと二人で楽しくランチをしていると、何故か周囲がザワザワと煩くなったので何事かと見回す。
すると、予約席に座るジュード殿下の取り巻きが私達の周りを囲う様に並んだ。
…え、何これ?怖いんだけど。
だが、私の神経は図太いのでそのまま放置してリオンとのランチを楽しむ事にした。
私の様子に気づいたリオンもニコッと笑い同じ様にランチを楽しむ。
まだまだ初等部一年生の普通クラスの子達だから、威圧もかけて来ない。
威圧があれば、こんなに普通にランチを楽しめなかっただろう。
私とリオンはランチを食べ終えると、お茶を飲みながら持参した私手製のお菓子を食べる。
今日はパンプキンパイだ。
中には甘いカボチャのクリームを入れてある。
「うん、美味しく出来てるね!」
出来栄えに納得しながらパクパクと食べ進める。
リオンも「美味しい。」と言いながら味わう様に咀嚼していた。
お腹いっぱいになって、落ち着いたので席を立とうとし…取り巻き達が居た事を思い出した。
彼らはランチをしなくても大丈夫なのだろうか?
そんな事を思っていると、取り巻きの一人が声を発した。
「いつまで、僕達を無視しているんだ!」
…まぁ、そうなりますよね。
だが…今の今まで話しかけて来なかったのは彼らだ。
私達のせいではない。
「お前はどうして僕達と同じ様にジュード殿下に付いて回らないんだ?」
ビシッとリオンに向けて指を差したので、私は懐から扇子を出して叩き落とす。
クリス様の弟・ジョニー様は手首を摩りながら私の方を睨むので、私はニッコリと微笑んだ。
「人に指を差してはダメだと幼い時に習いませんでしたか?」
そんなマナーも守れないの?と首を傾げながら聞いてみる。
ジョニー様は唇を噛み締めながらワナワナと震えて、再びリオンの方へと食ってかかる。
「どうして僕達と一緒に来ないんだ!お前も公爵家の息子だろ!?次男で有れば今のうちから王族に媚を売っとくべきだろ!?」
おいおい、媚を売るとか言い出したけど大丈夫なの?
王族に聞こえるように叫んでいるけど大丈夫なの?
「僕は別にその必要は無いからしないよ?」
コテンと首を傾げるリオン…今日も勿論、可愛いです。
そんな私の気持ちを察したリオンは苦笑いを浮かべ、話を続けた。
「僕は次男だけど、既にリリアと共に領地を継ぐ事になっているから!それに、祖父母や両親やお兄様からも何も言われてないしね。」
確かに王族に媚を売っとくと色々と良いかも知れないが…それならばクロード殿下にするだろうな。
お兄様のおかげで仲も良いしね。
「なっ!そんな事がある訳ないだろ!?お前馬鹿なんじゃないのか?」
お前こそ馬鹿なんじゃないのか?
思わず眉間に皺を寄せてしまう…。
「何と言われようと事実を述べただけだよ?僕達、次の授業の用意があるから失礼するね。」
リオンがニコッと微笑むと、私の手を取ってその場を離れようと歩き出した。
「話の途中だろ!お前もだ!お前だって公爵家の長女なら王族にもっと媚を売るべきだろ!?」
そう言ってジョニー様は私の肩を思い切り掴もうと手を伸ばした…。
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今日は書き直したので遅くなりました。
すみません。




