あの出来事の真相
「冬季休暇の始まった日…僕達が馬車の前に居た時の事だけど、あれは態とリリアにぶつかったの?」
少し…怖いくらいの目付きでリナリアを見るリオン。
こんな顔、初めて見る…。
リナリアは…コクンと小さく頷いた。
え?態とぶつかったの?
「ジュード殿下が…お姉ちゃんの事ばかり聞いてきたから…。」
リナリアは気まずそうにポツポツと話し始める。
その頃のジュード殿下はリナリアに会ってもずっと私の事を聞いてくるばかりで…他の話は全然しなかったと言う。
あの日、私がジュード殿下に見つかるのを恐れて慌てて王家の馬車まで走り…その際に思い切りぶつかってしまったらしい。
「あれ?それって態とでは無いよね?」
聞いていた私は思わず疑問を声に出すと、リナリアが首を振った。
「ジュード殿下をお姉ちゃんに取られちゃうって思ってたから…だから…だから本当は私が悪いの…ごめんなさい。」
リナリアは申し訳なさそうに俯く。
あの日…リナリアが「リナリア、悪くないもん!」って言ったのは、ジュード殿下を私に取られると思ったから?
だから、ぶつかったけど悪くない…と思ったのか。
「そう、リナリアはちゃんと悪い事を悪いと認識出来るって事だね?良かった!」
リオンはニッコリと笑い、リナリアの頭を撫でた。
「そうだね、リナリアはちゃんと“ごめんなさい“が出来る子なんだね?良かった!」
私もリナリアの頭を撫でれば、リナリアはおずおずと顔を上げた。
「…怒らないの?怒鳴ったりしないの?」
「「え?何でするの?」」
リナリアがビクビクしながら聞くから、私とリオンはコテンと首を傾げる。
「だって…」
「誰も怪我は無かった。…だけど、今度はちゃんと最初に話してね?私も危なかったけどリナリアも怪我をしちゃうとこだったんだから!」
リナリアの言葉に被せるようにして態と話した。
すると、再びリナリアが泣き出しそうになったので私達も再びアワアワし…ケリーの手によって助け出された。
どうやら涙腺が弱っているようだ。
その後も色々とリナリアの話を聞けば、冬季休暇の間にジュード殿下から先ほどの問題発言があり…しかも怒りながら「王城へも来るな!」と言われてしまったそうだ。
その事にショックを受けたリナリアは殆ど喋れなくなってしまっていたらしい。
全ての事をケリーからお母様に報告されていて、お母様はリナリアが王城を出禁になったと言っていたのだ。
あの渋い顔は、リナリアが可哀想に思った顔だったのか…。
…おいっ!ちょっと待て!!
そんな話を聞いて私が許せると思うか?
沸々と湧き上がる怒りをソッと心にしまいながらリオンにテレパシーを送る。
『ジュード殿下…絶対に許さない!』
私の言葉を聞いたリオンも、それはもう凄く和やかに笑い…。
『安心して?僕も許さないって思ってるから。』
私とリオンは黒い笑みを浮かべて…この話を終わらせた。
その後はリナリアが普段はちゃんと王族のお勉強と一般的なお勉強をしている事や、趣味で刺繍をしてる事を聞いて驚いた。
しかも刺繍したハンカチは思ったよりも綺麗に出来てて、とても幼い子の作品とは思えなかったのでそう伝えれば嬉しそうに私とリオンにハンカチをプレゼントしてくれた。
「お姉ちゃん、チョコレートありがとう。…最初、皆んなにはあるのに私には無いって悲しくなったけどお部屋に戻ったらケリーが渡してくれたの。」
そう言って、リナリアはまだチョコレートが入った箱を私に見せながら微笑んだ。
「こんなに可愛い箱で、しかも中もとても可愛くて毎日一粒ずつ大事に食べてるの。」
ラッピングの材料を買いに行った日、最後に見つけたその箱はリナリアの瞳と同じ淡いピンク色にゴールドと白いレースの2本のリボンで包まれた…それはもう可愛らしい箱だった。
見た瞬間に、あまりの可愛さに即買いし…その後にリナリアが思い浮かんだのでリナリア用にしたのだ。
だが、箱の形状もサイズも他の家族とは違った為…私の居ないところで「リナリアのだけ違う!」と文句を言われたりしたら可哀想だから家族とは別に渡してもらうようにケリーに頼んでおいたのだ。
「喜んでくれて、ありがとう。皆んなとは違うから私達以外には内緒だよ?」
「うん!」
ニッコリと笑い合うと…トントンッと肩を叩かれる。
振り返ればリオンが笑顔だ。
「聞いてないんだけど?」
「……言ってなかったです。」
笑顔なのに凄い圧を感じる…怖いんだけど。
その様子を見たリナリアは何故か笑い出すが…笑ってる場合では無い。
食べ物の恨みは怖いのだ…。
とりあえず、リオンには今度…何か美味しい物を作ると言う事で許して貰った。
…怖かった。
リナリアは、この後も少しだけお勉強すると言って先に部屋を出て行く。
今日はリナリアと話せて、色々と知る事が出来て良かった。
そう思って、リオンと顔を見合わせ互いにウンウンと笑顔で頷いた。
色々と波乱万丈なお茶会はこれにて閉幕……。
…のはずだった。
リナリアが部屋を出て暫くすると、お兄様が帰って来るなり私の部屋に入って来たのだ。
「ごめん、リオンとリリア!一緒に来てくれる?」
そう言って私達の手首を掴みお兄様は足早に歩き出した。
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まだ、前項の冒頭が回収されてません…すみません。




