わたしあなたとは結婚できません
〈河合家の三姉妹〉
河合家の三姉妹はそろそろお年頃。最後に売れ残った者が婿を取らねばならなくなると云う状況で、結婚を意識し始めた今日この頃。好きになった相手が婿入りは無理です何て事にでもなれば、諦めざるをえない。そんなのはごめんだと、我先にと嫁入りを争っている中で、告白してくる男達にも真剣な眼差しを向けていた。
が、しかし……
長女 河合伊予の場合
「伊予さん! 僕と付き合って下さい」
「わたし結婚を前提にした人としかお付き合いしたくないの。だから、鑓田くん! あなたとはお付き合いできません。理由は……言わせないで」
(だって、ヤリタイヨだなんて、恥ずかしくて外も歩けないわよ~)
二女 河合依音の場合
「依音さん、好きです! 付き合って下さい」
「ごめんね、辛島くん! あなたとはお付き合いできません。理由は察してください」
(なにそれ、カラシマヨネって、辛子マヨネーズなんてふざけないでよ!)
三女 河合佳奈の場合
「佳奈ちゃん、僕のお嫁さんになって!」
「ヤダ! 理由は解るでしょ! さよなら、難田くん」
(ちょっと、ナンダカナって、冗談じゃないわよ!)
四女 河合加代の場合
「一樹くんは、お婿さんはイヤかな~」
「ヤダよ! 僕は将来、加代ちゃんをお嫁さんにするんだ!」
「う~ん?? うれしいんだけどぉ~……(ヤダナ~ 大場は~)」
「「「ガンバレ! 加代~」」」
小学生の妹に激励をする姉達だった。
〈塩田 麻里さんの場合〉
「私ねぇ、名前で虐められた事があるんだぁ~『潮溜まり』って…… あとね、『シッ! おだまり!』ってのもあったの…………」
「じゃあ、僕のお嫁さんは耐えられないよね、吹田だもん」
〈北楢くんの憂鬱〉
「あのさ、僕たち付き合いが長いじゃない? もうそろそろ良いと思うんだ……僕と結婚して下さい。お願いします、志乃ちゃん!」
「ごめんなさい、北楢くん! あなたとは結婚できません」
〈婿入り編その1〉
「私と結婚したいなら婿入りしかないけど、本当に構わない、武蔵くん!」
「僕は愛の為なら、どんな事でも乗り越えられるよ、近藤さん!」
(ヒント下ネタ)
〈婿入り編その2〉
「私と結婚したいなら婿入りしかないけど、本当に構わない。益男くん!」
「僕は愛の為なら……無理かな……賀来さん!」
(同じく下ネタ)
〈留学生編その1〉
「佐原さん、僕は日本に骨を埋める覚悟です。どうか、婿にしてください」
「セロくん…… 私だけは止めといた方がいいよ」
(またまた下ネタ)
〈留学生編その2〉
「テオくん、私と結婚して!」
「うん! 喜んで」
「お婿さんだけど、いい?」
「それは止めてよ! 八女さん!」
「え~ だって、テオくんの苗字、マグワイヤーだもん」
「それがどうしたの?」
「わたしの名前は?」
「美月でしょ?」
「だから、お嫁にはいけません!」
(下ネタばっか)
〈留学生編その3〉
「は~い、ベイビー 君、可愛いね~ 僕はニック牛田」
「まぁ~ イケメ~ン お婿に来る~ 家は焼杉よ」
「ははは…… 絶対ヤダ」
〈留学生編その4〉
「大久保さん、僕は日本に骨を埋める覚悟です。どうか、婿にしてください」
「ラレルくん…… 私だけは止めといた方がいいよ」
〈ジャックくんに群がる女たち〉
「霧崎さん、天野さん、殿場さん、海蔵さん……」
「ジャックくん……」
「……」
〈再び北楢くん〉
「好きです。僕と付き合って下さい。お願いします、シーナさん!」
「ごめんなさい。北楢くん!」
〈再び伊予ちゃん〉
「あのぉ~ お、お名前を…… 伺ってもいいですか? ぽっ!」
「橘です」
「さようなら~」
〈再び佳奈ちゃん〉
「あのぉ~ お、お名前を…… 伺ってもいいですか? ぽっ!」
「桂です」
「いやぁ~~!」
「???」
〈神木麗奈の私のために争わないで〉
「じゃあ、勝った方が結婚するということで…… 勝負だ、槍頭!」
「おー! 望むところだ、筑曳!」
向かい合って睨み合う二人の男。
横で見届ける麗奈。
二人の男が同時に紙切れを叩きつける。
麗奈が覗き込むとクズな笑みを浮かべた。
(お金のためなら名前なんてどうでもいいわ)
広げられた紙切れは―――源泉徴収だった。
〈桜商事の二人〉
今年の新入社員研修での事、名刺交換の相手を探している二人。
(あっ! あの人、カッコイイ)
(おっ! あの子、カワイイ~)
二人は向き合い名刺交換をした。
名刺には、こう書かれていた―――
『東海林咲良』『佐倉正治』
無言ですれ違う二人であった。
〈おまけ・会って十秒で恋人?〉
「はじめまして、あなたが宅間くん?」
「はじめまして、初見さん?」
「じゃあ、行きましょうか、タクマくん!」
「そうだね、ハツミさん!」