育成3『育てる為の準備』
町の名前はフェールモン、ここには他の町と同様冒険者がいる街である。
魔物のレベルは中級ぐらいの強さを誇っており上級者ぐらいの冒険者が派遣される町であった。
そして、その街で情報を収集しようとしていたエリズは町を散策していると変な輩に裏路地へと連れていかれた。
するとリーゼントの頭で目に傷の跡がある男が
「おいおい! 良いお召し物着てんじゃねえか! 金も持ってんじゃねえのか? みぐるみ全部置いて行けよ!! レエロオオオオオオ!!」
とナイフを舐めながらドスを効かせながら言った。
他にスキンヘッドの男と爆発したような髪をした男が
「へっへっへ! アニキ!! こいつ! ぜってええ馬鹿だぜ! そんな恰好をしている時点で取ってくださいって言ってるようなもんだぜ!!」
「そうだぜ! もはやこんなガキ! ぜってえビビってるっスよ!!」
と涎を垂れ流しながら二人は笑っている。
エリズは
「へえ……これがカツアゲか……聞いたことがあるが……ふーん」
と少し興味深そうにつぶやく。
するとリーゼント男は
「おい!! 聞いてんのか!」
と言って胸倉を掴もうとするがエリズは伸びた手を掴み動きに合わせて軌道を変えてそのまま受け流した。
リーゼント男は
「な! 何だ今の!!」
と言って後ろにいたエリズを見る。
その他二名の男も
「こいつ!! 生意気だぞ!」
「アニキの攻撃を受け流すなんて!! 身の程を知れえええ!!」
と言いながら殴り掛ろうとするが
「その辺にしておけ」
という声がした。
すると二人の男の手首を誰かが掴み捻った。
2人は
「いでででででっでえ!!」
「うげえあああああ!!」
と悲鳴を上げながら涙目になる。
リーゼントの男は
「てめええ!! 俺の手下1と2を!!」
と言ってキレる。
エリズは
(名前は……)
と心の中でツッコんだ。
すると二人の手を捻っていたのはいかにも強そうなオールバックで目の鋭い男であった。
服装は軽そうな鎧と手には大剣を軽々と持っていた。
エリズは
「ほほう……良い剣だなあ、何度も使い血の匂いが凄い」
と物珍しく見る。
男は
「ガキ相手に大人げねえことを……ま……俺が来なくともそのガキならお前等程度……容易く屠っていただろうな……」
と言った。
リーゼントの男は
「なんだと! 俺等がこんなガキに……」
ゴキ!!
「ガハアア!!」
と男の首をエリズは一瞬に蹴り上げてそのままリーゼントの男の意識を落とした。
オールバックの男は
「お前……名前は」
と聞いた。
エリズは
「エリズだよ……貴方は?」
と聞き返す。
オールバックの男は
「ライダだ……」
と言った。
すると他二人は
「らっらっライダああ!!」
「うううう!! 嘘だろおおお! 何であんな!! ヤバいい!! 逃げるぞおおおおお!!」
と言って二人はリーゼントの男を連れて逃げていった。
エリズは
「えっと……ありがとうございます……」
とお礼を言った。
それを聞いてライダはエリズを見て
「お前はここに何をしに来たんだ? 他の冒険者と同じく一山当てる為にここに来たのか?」
と聞いてきた。
エリズは
「必要なら一山当てる……僕の目的に必要なら」
と答える。
ライダは
「何を言ってるんだ? どういう事だ? 必要なら? 目的? 名声が必要なのか? それとも力か?」
と聞く。
エリズは
「必要なら」
と再び答える。
ライダは
「必要? 先程からそればかりだ……まさか……魔王でも倒す為にここに来たのか? その為に一山当る事や名声を手に入れる事……そして力を求めているのか?」
と聞いた。
エリズは
「魔王を倒す……それも必要なら目指そう……しかし、僕のやるべき事は魔王退治ではない……僕はそれがしたくてここに来たんじゃない……知識も力も必要だろうが決して魔王は倒すつもりはない……そんなことは僕はどうでもいい……ただ僕のやりたい事の為に来ただけだ」
とはっきりと答える。
ライダは
「そうか……つまり貴様は目的を果たす為にここに来たか……ならお前だけで頑張るんだな」
と言った。
それを聞いてエリズは
「ああ……そうするつもりだ……取り敢えず……必要な場所に向かう前にここの情報を収集する……貴方がその情報を持っているなら……お金ならあるが情報を貰えるかな?」
と言って交渉をした。
ライダは
「……よく分らんな……まあ情報が欲しいならくれてやる……いくら払える?」
と聞くとエリズは
「これからの出費を考えると……そうだな……これぐらいでどうだ?」
と言って持っている金貨の半分を見せた。
ライダは
「……まあここの情報量としては多い方だ……良いだろう」
と言って町の情報を渡した。
町の魔物の難易度、町の住民、歴史、そして町の情報だけでなく冒険者のルールも教えた。
エリズは
「つまり……力次第で中級冒険者にも上級冒険者にもなれるいわば実力主義の関係ってことですか?」
と聞いた。
ライダは
「そうだ……まあ中にはコネで一気に中級冒険者にも上級冒険者にもなる者もいるがな……まあ良くあることだ……」
と言って金をポケットに入れる。
エリズは
「まあそれはどうでもいい手柄だとか取られるだとか……それは正直関係ない……必要な時にどうすればいいかを学べればいい……僕の行く道はまさにそこなんだ」
と言った。
エリズは笑いながら
「取り敢えず……中級に入れる可能性があるならまずは冒険者ギルドに行くか」
と言って教えて貰った場所へと向かった。
ライダは
「変わった坊主だ」
と言って別の道へと向かった
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エリズは冒険者のいるギルドへと向かった。
そして、受付のお姉さんがおり、まず登録料を払った。
すると、受付のお姉さんは
「では冒険者カードを登録しますので、身体検査と簡単な実技試験を行います、ついてきてください」
と言ってエリズはお姉さんについて行った。
そして、エリズは試験を受けてお姉さんから
「へえ……魔力も実技も中級よりちょっと上ですね……後は経験があれば確実に上級でしたけど……さすがに経験がないみたいですし……そこはまあ中級冒険者として働いて経験を積めば上級冒険者にもなれますよ」
と笑顔で言った
エリズは
「分かりました」
と言ってそれから中級冒険者としてまずは経験を学ぶ為に働くことになった。
エリズは必死に働いた。
まず中級冒険者として下積みとしても働いたり、モンスターを狩ったり、危険地帯にも赴いた。
エリズは必死に冒険者として富も名声も手に入れて行った。
しかし、エリズにとってそれは道でしかなかった。
そして、そうしているうちにエリズは中級冒険者から上級冒険者となり、魔王退治の最前線へと送られた。
切っ掛けは上級冒険者と一緒に仕事をする際に雪山に生息していたアイスドラゴンをエリズの貢献が大きかったことが報告されたのであった。
そして、その時一緒に戦ったのは上級冒険者ライダであった。
ライダは
「お前は凄いよ……何が目的か知らねえが……まさかここまで頑張るとはな……」
と認めるような言葉を送った。
エリズはそのまま上級冒険者として知識や力を求めて経験を積んでいった。
そうしている間に彼は遂に50歳になった。
彼も冒険者を引退した。
そして、彼は念願の冒険者を指導する立場になった。
(やっとだ……俺は若い間に学べることは学んだ……得る物は考えれる限り得た、後は俺の考える限りの教えに付いてこれる者を探すことだ)
とエリズは考えた。
そして、彼から指導を受けたいという者は多かった。
それと同時に彼からの指導を断念する者も多かった。
彼の指導はあまりにも恐ろしくあまりにもおぞましい為、死者が出なかったものの下手すれば死者が出ると判断されて彼は指導者としての立場を失った。
冒険者としてお金は沢山持っていた為、生活には困らなかった。
そして、彼は思った。
(そうか……難しいな……しかし……俺が考える限りこれ以上の指導は無いはずだ……信じろ……そして見つけるんだ……俺の指導に耐えられる人間を!)
と考えて彼は冒険者指導者を止めても自分の指導を耐えられる者を探すことにした。