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育成2『育てる者の条件』

天和は転生して金髪の美少年へと生まれ変わった。

エリズ=レイトビアルに生まれ変わったのであった。

しかし、当然彼には前世での記憶は無い、しかし心残りはあった。

その為、エリズはその心残りが欲求として現れていた。

人を育てたいという欲求が。

エリズは考えていた。

自分が人を育てるには何が必要なのかを。

それは能力である。

能力も無いのに育てる相手にあれこれ教える事は出来ない。

エリズはそう考えた。

その為、エリズは親の英才教育を全く嫌がることなく受けた。

彼にとって教養は相手を育てる為の糧として必要な事、その為であった。

決して彼自身が成り上りたいという思いは無かった。

その為、彼は勉強と人とのコミュニケーションと剣などを教わりそれをドンドンと吸収していった。

そして、ある時父親は言った。


「もうお前に教えることは何もない……お前は我が一族の誇りだ、そのまま結婚して騎士として素晴らしい実績を残してくれ」


と嬉しそうに言った。

エリズは結婚と聞いて子供が出来て育てる事が出来ると喜んだ。

しかし、何故かその喜びはあまり長く続かなかった。

エリートとして生まれてエリートとして教育してエリートとして世の中に出す。

確かにそれはとても良い事だ、素晴らしく光栄なことだ。

しかし、彼は思った。


(何故だろう……僕はそんなんじゃ嫌だと思ってしまっている……何故……せっかく人を育てることが出来るのに……)


とずっとその悩みを抱えて数日が過ぎた。

明日は自分の婚約者が訪れる日である。

それなのにエリズはずっと浮かない顔で悶々とした日々を過ごしていた。

そんな時であった。


「おら!! 何してやがる!!」


といつもの稽古中に声がしてきた。

その声を聞いてエリズは声がする方へと駆け寄った。

そこには奴隷の少年がいた。

エリズは取り敢えず壁の隙間から覗いていた。


「お前!! どんだけ売れねえんだよ!! てめえの食費なんて! もう見てら……おい? どうした?」


と聞くが少年はピクリとも動かなくなった。

それを見て男は少年の手首を指で回した。

そして


「チッ! 死んでやがる……あああ! あ! ふざけやがって!」


と言ってゴミでも持って行くように髪を引っ張り引きずっていった。

それを見てエリズは同情や哀れみや見下しなどの感情は一切出てこなかった。

寧ろエリズは


(これだ!)


と水を得た魚の様に生き生きとした表情になった。

エリズは思った。


(そうだよ! 僕が育てたいのはすでに環境が整っている奴じゃない! そんな状況で育てた者がその道を行くのは当たり前なんだ! そんな当たり前の環境で無く! そんな環境が存在しない状態の奴を育ててそれを凄いエリート……いや! 英雄クラスに育てる事こそ面白いんじゃないか! こんな当たり前の環境じゃなく! 寧ろ僕もこれから恵まれない環境に入りそこで生きる知識を学び! そしてそこでの成長の仕方も学ばないといけない! そして、自分が育てる者にその全てを叩き込む! それに! 逆境がある人間を育ててそいつが成り上る方がなんか僕自身の夢だ!!)


と前世の思いを何となく気持ちとして思い出しそして、エリズはその方向へと心が動いた。

方向が決まってからのエリズは早かった。

明日が婚約者との顔合わせにも関わらずエリズは逃げる準備を進めた。

自分の小遣いのみを持ち最低限の食糧を準備、着替えは用意しなかった。

しかし、エリズは


(服は別に高価の物でなくていい……汚かろうが綺麗であろうが人を育てる準備に必要はない!)


と考えてそのまま家を気付かれないように夜に抜け出した。

そして、朝見た奴隷商人の男の馬車に金を払って乗せて貰った。

男は


(イヒヒイヒイヒヒ! こいつも売って俺は大儲けだ!)


と考えていたが


「妙なことは考えるなよ……」


と静かに首にナイフを添えられて


「ひいいい!!」


とビビり脅されながら町を出ることになった。


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その後、従者がエリズを起こしに部屋まで行った。

しかし、大きく綺麗な部屋にある大きなベッドには


「え! え! エリズ様あああああああああああああああああああああ!!」


と大声で叫んだ。

父親は


「どうした! エリズに何かあったのか!」


と言ってすぐに部屋まで押し掛ける。

従者は


「それが! エリズ様が! エリズ様が死んでるのです!」


と言って慌てる従者がいて、ベッドには焼き捨てられた死体があった。

それを見て


「えり……ず……どうして……何で……」


と父親は大粒の涙を流しながら崩れ去る。

この日、有望であったレイトビアル家の長男、エリズ=レイトビアルが死んだ。

これがきっかけにレイトビアル家はエリズの妹を男として育てることによって何とか生計を立てることことで貴族階級を保つことが出来た。


--------------------------------------------------------------------------------------


一方エリズは


「今の頃僕の死体に似せたさっきの奴隷が役に立ってるかな」


と言って呟く。

それが聞こえたのか男は


「ママまああっまま待ってくれ!! 俺が燃やして殺したどどどおど奴隷を!! 嘘だろ! 何をしてくれてんだよ!! 俺が!! もし俺が殺したことがバレたら! 俺の人生が! 貴族殺しなんて! 誘拐以上に重罪だぞ! お前が勝手について来たってことでなんか誤魔化すつもりだったのに!! 何てことを!!」


と言って涙を流しながら怒鳴る。

それを聞いてエリズは


「そんなことは知らん……良いから馬車を走らせろ……僕が今ここに居ることがバレればお前に誘拐されたとか言えばお前の人生は終わるんだ……命懸けで逃げ切れよ」


と言った。

それを聞いて男は


「はあああ!!! 何言ってるうんだああああ!」


と涙を流しながら言うとエリズは


「一体どっちを信じるだろうな? 奴隷を売って生きている人間と……高貴で将来有望の息子と……考えれば分かる事じゃないのか? あああ! 分からないから僕の作戦に気付かずにこんなことに乗ったのか……すまなかったすまなかった……でも今説明したから分かるよね?」


と言ってニヤリと笑う。

男は


「ちっちっちくじょおおおおおおおお!!」


と叫びながら馬車を走らせる。


そして、遠い遠い町へと何とか命懸けで男は移動していった。

お金を貰っていた為、食料には困らなかったがどこぞの貴族様が誘拐されたということがバレれば自分の命が危ういという事実に気付けなかった自分が悪いのだが、まさか自分が嵌めようとしている相手に嵌められていたとは思ってもいなかった。

子供だからと侮ったのが間違いだと男自信誘拐した時は考えてもいなかったのであった。

そして、完全に逃げ切るにはその貴族の子供を知らない者達が集まる場所へ移動することを余儀なくされたのであった。

そして、町の近くまで来た。

そこは、奴隷商人が入ることを禁じられている町であった。

その為、逆に少年さえここで降ろしてしまえば少年が口を割らない限り自分が少年を誘拐したことはバレないと考えたのであった。


「ほら! ここならお前を知る者なんていないだろ!! とっとと降りてくれ!」


と言って男はエリズに泣きながら言った。

エリズは


「ああ……構わない……ここならば問題ないだろう……約束の金だ」


と言ってエリズは持っていたお金を渡す。

男は


「糞おおおおおおおおお!!」


と言いながら馬車を走らせて逃げ去る。

エリズは


「さてと……ここはどういう場所かをまずは把握することが最優先だ……まずは地理を理解しよう」


と言いながら町へと入ろうとして門番に


「君は? どこから来たんだい?」


と聞かれた。

エリズは


「こんにちは、僕の名前はエリズです。僕はこの街に入りたいんですが? よろしいでしょうか?」


と聞いた。

門番は


「でも君身なりが良いが大丈夫かい? 親御さんは?」


と聞かれた。

エリズは


「僕自身あまりいい成績を残せなくて……それで勘当を……でも生きなければならないので近くの町で何かお金の稼げることでも見つけようかと……ダメでしたら情報収集だけでも……ダメでしょうか?」


と聞いた。

門番は


「そうか……貴族社会も大変だな……君みたいな者は良く来るよ……一応はマニュアルに沿わないといけないから質問しただけなんだ……悪かった……入っていいよ!」


と言って町に入ることを許可された。

エリズは


「次こそ! 街の散策を!」


と言って嬉しそうにした。


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