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はじめてのくえすと

「このクエストを受注したい」

「ゴブリン討伐ですか。お二人ともですか?」

「あ、いや、俺1人でいい」

「え、ちょっと、じゃあ俺は?」



 考えてみれば全員同じクエストを受ける必要なんて微塵もなかった。

 そんなことをしても報酬が半分になるだけだ。



「でしたら、同じ内容の討伐依頼がもう一件きているので、そちらを受注されてはいかがでしょう」

「ん、じゃあそうするよ」



 浩介のクエストも無事決まり、俺たちはゴブリン討伐に出かけることになった。

 報酬は合わせて10万R。片方しくじっても、もう片方がうまくいけば黒字だ。

 両方しくじったときは……何も考えていない。



「討伐した魔物はギルド証に記録されます。クエスト以外の魔物も買取をする場合がありますので、受付までお持ちください」

「買取もしてくれるのか」



 失敗したらそこで補おう。ゴブリンがどれほどの強さなのか、10万Rが妥当な金額なのか。まだまだ分からないことだらけだけど、しばらくの食い扶持は得ることができた。





「……またこの森かよ」



 浩介が文句を垂れている。

 ゴブリン討伐の場所として指定されたのは俺たちが先日までサバイバルをしていた森だった。



「いいじゃないか。慣れた場所だし、食費も浮く」

「げ、また俺が料理するのか」

「はい、コウスケ様の料理は絶品です」



 ラフが俺の頭の上でバサバサと羽ばたく。

 正式に使い魔になってから、そこを定位置と決めたらしい。正直邪魔くさいが、今のところフンをしたりとかはないので許している。



「ゴブリンなんかが出るのは、俺たちが通ってきたところからだいぶ東の方らしい」

「東ってどっちだ?」

「ベルガルから見て森が北にあるので、入ったら右のほうに進んでいけば東ですね」



 俺たちはラフの言葉に従い、森の右のほうに入ってゆく。



 ゴブリン……RPGやラノベで必ずと言っていいほど出てくる雑魚キャラだ。

 その群れを倒して得られる報酬が5万R。おそらく、1日1回のペースでこなせるクエストだろう。

 だとしたら、月……150万R?!

 日本と金銭感覚が違うかもしれない。漠然と、1R=1円だと思っていたけど、Rは円よりだいぶ安いのかもしれない。



「おい、あれじゃねえか、ゴブリンの群れ」

「おお、まんまゴブリンだ」



 緑色の肌をした、人間の子供のような生き物が木の棒を振り回している。あの群れを討伐すれば良いわけだ。



「どっちからいく?」

「先いいぞ、浩介。俺たちは別の群れ探してくる」



 森に入った途端にエンカウントできたのはラッキーだった。

 俺は探知系の魔法を開発したから浩介よりゴブリンを見つけやすいだろう。



 さっき見たゴブリンを思い浮かべて、『レーダー』を発動する。超音波による立体把握魔法だ。

 超音波を出して立体を把握する、というのはなかなかイメージしにくく、発動するのに時間がかかるのが難点だが、利便性は高い。



 ブウン……

 脳裏に景色が浮かぶ。木や草や土の形が曖昧にだが影として把握できる。

 林だと木が多すぎて分かりにくい。動いていないものを脳内マップから消去する。

 生き物だけが残る。俺の上で毛繕いをしているラフ。浩介と、ゴブリンの群れの戦っているところ。



 そして……これか。



 浩介と戦っている群れとは別に背の低い影が蠢いている。その数21。ビンゴ!



「見つかりましたか?ご主人様」

「ああ」

「では、行きますか」

「いや、いい」

「はい?」

「トレースがあるだろ?」

「あ、そうですね。なら!私がやりたいです!」



 ラフが鼻息荒く目を輝かせる。



「別にいいが……ゴブリンの場所、わかるのか?」

「問題ありません!……焔玉(ホムラダマ)追従(トレース)!」



 ラフの周りに火の玉がいくつも現れ、



 ズグォゴオオオオオォォォォォオオオオオ!!



 すごい速さで飛んで行く。向かうは違わずゴブリンの群れ。

 俺の脳内マップからゴブリンが次々と消えていく。



 チャリーン



 左腕につけていたギルド証から軽い音がする。



「ラフ、もういいぞ、クエスト達成したようだ」

「はい」



 使い魔の登録もうまくいっていたようだ。ラフが倒した魔物でもクエスト達成になる。

 これなら、浩介と俺、2人合わせて3つのクエストを同時にこなすことができる。

 夢が(主に金銭方向に)広がるなあ。



「おい、ラフ。浩介の方のクエストも終わったようだし、戻るぞ」

「はい!あ、ですがお昼ご飯の材料を持っていかないと……」

「大丈夫、大丈夫。浩介がなんとかしてくれる」

「……そうですね」



 ラフがやや呆れたような目で見てくる。

 ……しょうがないだろ、めんどくさいんだし。

 それに、食材は料理人自らが選んだ方が料理がうまくなりそうだし。



 しかし、俺の予想は間違っていなかった。

 さっきまで浩介が戦っていたところに着くと、既に昼食の準備が出来ていた。



「さすがじゃないか、浩介」

「さすがです」

「あ?」



 メニューは……煮たやつと焼いたやつと揚げたやつ。食材は……なんかの肉とか野菜とか。味は……もういい!上手いことには変わりない。俺は味オンチなんだ、食レポはできん。



「浩介もクエスト、うまくいったようだな」

「ああ、楽勝だったぜ!」

「頼もしいです」

「そういうラフだってずいぶん強くなったじゃないか」

「ご主人様の魔法をたくさんコピーさせてもらったお陰です。コウスケ様も身体強化を使いこなしていてすごいです!」

「だろー?もっと褒めていいんだぜ?」

「わーすごい、にっぽんいち、せかいいちー」



 Eランクの、ゴブリン討伐に成功しただけだ。こんなことでいい気になって油断して死にでもしたら、目も当てられない。



「ひとまず、今後のことを話し合おう」

「今後?」

「今回のクエストで、やりたいことが色々できた」

「例えば?」

「まず、物価の把握だ。この世界の物価も分からなければ安価で厳しいクエストを依頼されかねない」

「ぼったくられるってことか」

「それから、この世界の言葉を学びたい」

「字、読めなかったもんな」

「ああ。それから宿も見つけないといけない、それから奴隷の呪いも解きたい」

「ま、ひとまずギルドに報酬受け取りに行こうぜ」

「ああ」



 ギルドは今朝来た時よりも賑わっていた。



「夕方になるともっと混みますよ、皆さん夜型なのです」

「ふうん。報酬を受け取りに来たのだけど」

「え、もう終わったのですか」

「ん?ああ」

「でしたら、ギルド証をこちらに」



 受付嬢は、俺のギルド証をちょこちょこっと弄ると、



「では、こちら、報酬の5万Rです」



 とお札をくれた。紙幣がある辺り文化レベルはそこそこ高いな。



「この辺りに本屋はあるか?辞書が欲しいのだけど」

「本屋?でしたら武具屋の隣にありますよ?」

「武具屋の場所も分からないのだけど」

「え?クエストの前によらなかったのですか?よく無事に帰ってこられましたね」



 受付嬢が飽きれるように言った。



「ほらな、ナミト。クエストの前には武具・防具一式揃えるべきなんだよ」

「何がほらな、だ。お前だってとくに何も言わなかったじゃないか」

「うぐ……」

「……えー本屋や武具屋はギルドを出て森と反対側に歩いて行くとありますよ。看板が出ているのですぐに見つけられると思います」



 ギルドを出て森と反対側、つまり右に進むのだけど、そこは商店街のような街並みが広がっていた。

 アクセサリーショップや飲食店が所狭しと並んでいる。



 本屋の前には大きな、本の形を模した看板があったのですぐに分かった。

 武具屋の前の地面には剣が刺さっている。伝説の剣って感じだ。



「本屋と武具屋、どっちから入る?」

「武具屋!」



 ……即答だな。どうせ勉強したくないとか、そんなことだろう。



「仕方がない。ラフもそれでいいか?」

「はい!」



「らっしゃい」



 武具屋ではつるっぱげで髭面の男が店番をしていた。

 店は10畳くらいの広さで、壁や棚に整然と武器が並んでいる。

 剣が中心のようだが、ハンマーや槍もある。



「お客さん、今日はどんな物をお求めで?」

「こういう店に来るのは初めてでね。見繕って欲しいのだけど」

「へい。新人の冒険者ですかい?」

「ああ。ぼったくったりすんなよ?贔屓にするつもりなんだから」

「そ、そんなことしやせんよ!ウチは全部定価ですぜ?」

「ならいい」

「そんなことより、お求めになるのはお二人だけで?それともそこの使い魔さんも?チェーンなんかもありますぜ」

「チェーン……鎖か。どうする?ラフ」

「私は、そんな物なくてもご主人様から離れたりしません!」

「だそうだ。ちなみに1本いくらだ?」

「安い物だと200R、高いと、これは巨人なんかを封じるための物ですが、120万R程します」

「結構安いな。じゃあ、その安い方を100本くれ」

「ご主人様!」

「いいんですかい?粗悪品で装飾ぐらいしか用途がありませんぜ?」

「ああ。構わない」

「ナミト……お前、実はチャラかったんだな。自分につけるんだろ、そのチェーン」

「違う。馬鹿か?」



 なんでわざわざ戦闘の邪魔になる物をつけねばならん。



「毎度!お二人はどうしやす?」

「俺は武器はいいから防具が欲しい」

「防具……ですか。その軍服もお似合いだと思いますけどねえ。その上からこういうのを羽織るのはどうでしょう」



 そう言って渡されたのは一枚のマント。



「マント……マントは防具じゃなくて服な気がするけど?」

「いえいえ、そのマントは特別でして。形状記憶布を使っていますから、こうして」



 武具屋がマントを羽織る。



「魔力を流すと着ている者を守ってくれるのです」



 マントの形が変わって、武具屋を取り囲むように広がった。



「面白い。いくらだ?」

「へい。1万Rになります」



 予算的にも余裕があるな。



「浩介はどうするんだ?」

「俺は素手で戦うからな、武器はいらないぜ」

「でしたら、こちらなんていかがでしょう」



 武具屋が持ってきたのは……まんま道着。柔道や空手をするときに使うあの服だ。



「先程のマントのような特殊な効果はありませんが、東方の者が伝統武術を使うときに着る服です」

「……知ってた」



 だって本当にまんまなんだもん。ま、浩介にはぴったりか。



「こちらも1万Rになります」

「あいよー」

「おい、勝手に決めんなよ」

「これ以上浩介に相応しい服があるか?素手で戦うために洗練されたような服だろ?」

「では合計4万Rになります」

「おいナミト、俺は買うって言ってないぞ」

「私だっていりませんよ、鎖なんか」



 ……無視!



「じゃ、これで。それから、安くてもいいから斧が欲しい」

「へい。1000Rです」

「ナミト!」

「ご主人様!」



 ……無視!

 次に行くべきは、本屋だな。

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