疑惑
どこのラノベのスカートだよってくらい短い
「残念ながらクエスト失敗です」
受付嬢が申し訳なさそうに言う。50,000Rの損失だ。
「違約金ってどこに行くんだ?」
不意に浩介が尋ねる。
「違約金は、一部をギルドの資金にあてて、他を依頼主に渡しています」
「そうなのか……ちなみに今回の依頼主は誰なんだ?」
「匿名希望で依頼されてますから、お教えできかねます」
そいつは残念だな。まあ、大体予想できてはいるけど。
「じゃあ、これ。僕たちのパーティーから50,000R」
「俺たちからも50,000R」
違約金がギルドの報酬になるなら、クエスト失敗も割とウエルカムなのかもしれない。
「では、次回は頑張ってくださいね」
「ああ……それと、冒険者も依頼を出すことができるのか?」
「はい、全然問題ないですよ。ですが、自分のランク以下のクエストは参加義務がありますけど」
後ろに人が並び始めたな。聞きたいことは大体聞けたから、もういいか。
「分かった、ありがとう」
「いえいえ、何か聞きたいことができたら、またいつでも聞きに来てくださいね」
「ああ。浩介、ラフ、帰るぞ」
「……で、どうする?」
宿屋に着くなり俺は浩介とラフに聞いた。
「どうするって?」
「なんの話ですか?」
「なにってあの詐欺師野郎のことだ」
「は?」
「なにを言ってるんですか?」
どうやら気がついてなかったらしい。平和ボケした日本人と大事に育てられた元箱入り女王。気がつかないのも無理はない……のか?
「レミストのことだ。……ギルドのルールには触れないようにやってるみたいだが、俺たちは50,000R損した」
「?クエスト失敗したからだろ?」
「そりゃあ失敗もするだろうな、いない魔物の討伐なんかできるわけがない」
おそらく違約金目当てで嘘のクエストを依頼していたのだろう。
一般市民がこの手を使うならわざわざクエストについてくる必要もない。ただレミストは冒険者だからな。
エリアが弓を忘れてていたのも、使わないことが分かっていたからだろう。
「そういうことだったのか……許さん!!ギルドに訴えてやる!」
浩介が宿屋から飛び出して行こうとする。
俺は道着の襟をがっちり掴んで浩介をホールドする。
「ちょっと待て」
「ウェッ……なんだよ?」
「ギルドに訴えたってしょうがない。ギルドのルールは破ってないからな」
そういう意味では騙された俺たちも悪い。
「じゃあ、どうするんだ?」
「こちらもギルドのルールを破らない範囲で嫌がらせをする」