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結印魔法

 ダンジョン……正式には”局地的魔力傾斜”というらしいが、その中には他の場所ではありえないほどの数の魔物が発生する。

 洞窟などに多く、魔力の循環が滞るとダンジョンになる。

 空気中に飽和した魔力が結晶化して特別な鉱石になり、資源として重宝されている。



「おい、ナミト!あれじゃないか、スライム」

「ああ、たぶんな」



 緑色のブニブニした生き物がこっちを見ている。いや、見てはいないか。目らしいものが無いからな。ただ、俺たちに意識を向けてきているのは分かる。



「じゃ、さっそく練習してみるか」



 使う魔法は俺オリジナルのファイアー・ボール。効果範囲は狭くするが、その代わり威力を最大まで上げる。そして------パチンッ!



 これが今までと大きく変わるところ。ファイアー・ボールを使うときは必ず、左手の指を鳴らす。



「ピャアアアアアアアア!!」



 スライムが断末魔の叫びをあげて蒸発する。余熱でダンジョンの床が溶ける。



「おお……相変わらずすさまじいな」

「今までとの違いが分かるか?」

「ああ。指を鳴らしていたな。でも何の意味があるんだ?」

「今は何の意味もない」

「あ?何言ってんだ?」



 次のスライムが出てきた。こいつ自身に害はないが、周囲の魔力を吸い取ってしまうらしい。



 魔力がなくなると、魔物が湧かなくなってしまうし、魔力の結晶も出来ない。

 魔物も大切な資源だ。湧きすぎては困るが、湧かないのも困る。

 俺は指を鳴らす。



 パチン!───────ゴゥウ



 スライムを倒しながら、浩介達に説明する。



 パチン!──────ゴゥウ



 魔法を構築するのに大切なのはイメージだ。詠唱は言霊的な力によってそれを補完しているに過ぎない。



 パチン!──────ゴゥウ



 しかし、この世界の魔法を見ると、どうもイメージをうまく作れていないようだ。それで本来、補完する役目であるはずの言霊の力で魔法を発現してしまっている。それゆえ、威力がいまいちだ。



「ナミト、そっち!」



 パチン!────ゴゥウ



 しかし、イメージによって魔法を構築するのにも欠点がある。それがタイムロスだ。ファイアー・ボールのような簡単な魔法なら詠唱よりも早く構築できるが、“レーダー”のような複雑な物は詠唱したほうが早い。



 パチン!───ゴゥウ!



「それが指を鳴らすのとなんの関係があるんですか?」

「これは詠唱の代わりだ。詠唱よりも圧倒的に短いだろ?」



 この方法は宿で鎖を切っていた時に思いついた。

 斧を持ったら鎖を切ってしまう、という癖をつけたのと同じことだ。

 指を鳴らしたらファイアー・ボールを撃ってしまう、という癖をつけるのだ。

 癖をつける時点でのファイアー・ボールの威力を最大にしておけば、一般的な詠唱のように威力がイマイチになることもないだろう。



 パチン!──ゴゥウ



「ファイアー・ボール以外にも考えてるんだ。焔玉ホムラダマとか重力拘束グラビティとか」

「……つまり、印を結ぶんだな?!」

「は?印?」

「そう、印だよ!忍者が使っていた気がする、印だよ!そうかそうか、ナミトは魔法使いやめて忍者になるんだな!」

「あ?何言ってんだ?」

「うん、おじさんはカッコいいと思うぞ!」



 なんかテンションが高いな。

 2ヶ月で出来れば俺が今使える魔法全てに対応する指の形ーーー浩介曰く“印”を作りたい。



 パチン!─ゴゥウ



 あと一息だ。



 パチン!ゴゥウ



 ……遂に、指を鳴らすのと同時にファイアー・ボールがに(・)撃たれるようになった。

 わざわざイメージしなくても、指を鳴らすだけで高威力のファイアー・ボールを撃てる。

 他の魔法でもこの域に達したい。



 その後もクエストは滞りなく進み、



「おーい、ナミト。それ何匹目だ?」

「えーと……206?」

「はあ?クエストとっくに終わってるじゃねーか」

「あはは……」



 今日、“癖”をつけることができたのは大体20ちょいの魔法。だんだん癖がつくのが早くなってるから、10日以内に全て使えるようになるだろう。





 ギルドに帰り、報酬を受け取る。



「なんともまあ、大漁ですねえ」



 俺のギルド証をチェックしてくれたギルド証が言う。



「報酬は500%まで上乗せできますが」

「あ、なら頼む」

「ではこちら、報酬の120,000Rです」



 結果的に前回より報酬が増えることになった。



「あ、それから」



 受付嬢が俺を呼び止める。



「なんだ?」

「今回のクエストでEランクに昇格する条件が整いましたが」

「随分と早いんだな?」

「Fランクのクエストはほぼお試しのような物ですから。これからが本番です」

「じゃ、Eランクへの昇格を頼む。何かするのか?」

「いえ、特には。コウスケさんも昇格できますよ?」

「おう。俺も頼むぜ」



 浩介が言うと、受付嬢は2人分のギルド証を弄る。



「新しいギルド証です。Eランクのカラーは藍色です。お試し期間は終わったので、ギルド証の機能も増えてますよ」



 新しく増えた機能は、


 ・体力の残量の目安の表示(%)

 ・討伐経験のある魔物の名称の表示

 ・受注中のクエストの表示

 ・使った事がある魔法

 ・所持金の表示

 ・称号


 などだ。

 使った事がある魔法?

 少し気になるな。

 他にもチェックしておこう。



 《ギルド証:ナミト Eランク》


 HP:96%


 MP:74%


 quest:nothing


 monster:ゴブリン(ゴブリン、ホブゴブリン)

  スライム


 magic:ファイアー・ボール

  unknown1〜228


 title:異物


 money:61,520R



 魔法がファイアー・ボール以外“unknown”になっている。

 俺オリジナルの魔法だから表示できないのか?使えないな……。



 それから、ダンジョンに入ってからファイアー・ボールを使いっぱなしだったのに、MPが74%も残っている。

 そもそもMPがあることを初めて知ったぞ?魔力量ってことだよな。



「MPってなんだ?」



 浩介も受付嬢に聞いている。



「体内にある魔力量です。今まで計測した最高の魔力量と比較して何%体内に残っているかを表示しています」

「魔力自体の量は測れないのか?」

「一応測れます。ファイアー・ボールを撃って、魔力量が何%減ったか、で数値を出す方法があります。あまり正確ではないのですが……100%から何回ファイアー・ボールを撃てるか、その回数がそのまま魔力量です」



 ファイアー・ボール……普段俺が使ってるやつじゃなくて、一般的な方だろうな。

 この世界に来て初めて使った魔法だ。

 やってみるか。



「測ってみたいのだけど、」

「あ、私もやってみたいです!」

「でしたらこの地下にある修練場をお使いください。使い魔さんも……ファイアー・ボールを撃てるのなら問題ありませんよ」



 地下室もあったのか。

 受付嬢によると、1階にクエスト・買取カウンター、2階に酒場、3階にギルド職員の事務室、そして地下に修練場、ということになっているそうだ。



 俺たちは受付の横にあった階段から地下に降りる。



「こちらです」

「おお……」

「広いです!」



 ギルドの地上部分より圧倒的に広い空間だ。天井も高い。

 冒険者と思しき者たちが各々の武器を振り回している。

 組手をしているやつら、上位ランクの冒険者に教えを請うているやつ、1人で大技の練習をしているやつ。

 お互いを高め合っているんだな。あとで俺も参加させてもらおう。



「魔力量の測定はあちらで行います」



 受付嬢が指差したのは、的のような物がいくつか置いてある一角だ。



「あの的に向かってファイアー・ボールを放って下さい。あ、使い魔さんはこちらを」



 ラフが受付嬢から魔力量を測定する器具を受け取ると、3人で的の正面に並んだ。



「いきますっ!ファイアー・ボール!!」



 ラフのファイアー・ボールは俺の命令で、口から出るモーションにしている。そっちの方がそれっぽいからな。

 ラフが吐いたファイアー・ボールはわずかに縦に伸びながらも、的に到着し、



 ーーーーーーボフウゥ



 的を消し炭にした。

 うーん、やっぱりこの魔法は威力が微妙だな。俺が作った方だと、的を蒸発させる自信がある。



「減ったのは……4%ですね」

「…………っ!?あ、はい!では、使い魔さんの魔力量は25ですね」



「黒の風よ、火よ、風よ、我が敵を撃つ礫となれ……ファイアー・ボール!!」



 ーーーーーーゴゥウ



 今度は浩介が魔法を放つ。

 まだまだ弱っちいが、初めて見た時よりはマシになっている。森での移動中に訓練したからな。



 ーーーーーーボフウゥ



 俺も魔法を撃つ。



「減ったのは……ん?減らねえぞ」

「俺もだ」

「……はい?で、でしたら10%減るまで撃ってください」



 お、おう。

 俺と浩介はそれからしばらくファイアー・ボールを撃ち続けた。

やっと本題です。

ステータス的なもの、作らないつもりだったのですが……私は数字弱いので。



変更

称号:nothing→異物

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