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着替え


 借家にて。


「着替えるから待っててね。」

 神父とペーターは、外で待たされた。



「神父さん。ご主人様はどうでしたか?」

 二人きりになるのを待っていたとばかりに話かけるペーター。


「それは、凄い戦いでしたよ。」

 褒めるように話した。


「そうじゃなくて、僕が拐われてからさ…。」

 微妙に言葉を濁しながら聞く。


「普段通りでしたよ。」

 答えた顔は嘘がバレないかと悟られないように頑張っていた。



 思い出していたのは、教会で外套を渡した時のこと、

「私が、ペーターを心配していたのは内緒よ。」

 ペーターに聞こえないように小声だが、強く言われた。


(意外と恥ずかしがり屋なのかもしれない。)

 何故だか、そう思えた。



「そうなんだ。」

 神父には、残念そうに聞こえた。



 これ以上は、耐えられないとばかりに神父は話題を変えた。


「ところでペーターさんは、どうしても捕まったのですか?」

 気になっていた事を聞いた。


「買い物してたら子供達にさ、『こっちで人が倒れてるから助けて。』って路地に連れて行かれて…。」

 思い出し、

「後は、気が付いたら夜のあの場所だった…。」


「なるほど。もう、その時には子供達は操られていたのですね…。」

 神父も合点がいったようだ。



 沈黙。



 待たされる。



「それにしても、ご主人様は遅いな…。」

 しびれを切らしたペーターが借家の扉を見詰めた。


「そうですね…。」

 神父も相槌。



 いきなり、勢い良く扉が開くと共に、

「ジャンジャン〜♫」

 自らの効果音を付け、白頭巾が登場した。


「どう?」

 くるりとスカートを翻しながら回転し、白い服を披露した。


「…。」

 当然、ペーターと神父は呆気にとられ反応しない。


「ねえ。」

 呼びかける白頭巾。


「はい!」

「はい。」

 二人でハモる。


「声も出ない程に可愛い?」

 スカートの横を摘みながらヒラヒラさせる。


 言葉に詰まると言うのを、初めて体験した神父。


 ペーターは慣れているのか、

「二番目にお気に入りの服でしたかね。」

 返していた。


「三番目よ。」

 少し、不満げに。

「もう、そんなんじゃペーターはもてないぞ。」


 慣れていたペーターも言葉に詰まっていた。



「ぼやぼやしない。行くわよ。」

 二人を置いて歩き出した。

 今まで、自分が待たせていた事など無かったかのように。


 顔を合わせ、慌てて追い掛ける二人。

「待ってください。」

「待ってよう。」


 ふと、気になった神父は、

「白頭巾さん。頭巾は?」

 聞いた。


 そう、頭巾を被っていなかった。


 顔だけ振り返り、

「この服に頭巾は合わないでしょ。」

 その顔は『解って無いな。』と言っていた。

 





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