攻防 その三
いつの間にか白頭巾は反対側の柱と壁の近くまで移動していた。
繰り返される飛来物を避ける動作。
「もう、しつこいぃ。」
口に出していた。
「チィッ!」
舌打ち。
今回は違っていたから、思わずやってしまったはしたないと嗜められる行為。
飛来物を避けた先で見たものは、眼前に迫る銀の牙。
柱だった物を投げ、白頭巾の視界を遮ったその間に猛進していた。その四本の足で。
白頭巾が右手を突き出し構えた連射式銃の引き金を引く。
銀の牙の左手が裏拳を振る。
刹那の勝負。
その差は?
白頭巾は連射式銃を構え、引き金を引くの二拍。
対する銀の牙は左腕を振るの一拍。
銃口から弾丸が飛び出すよりも早く、連射式銃が白頭巾の右手を離れ宙を舞った。
咄嗟に引き金にかけた指を離すという、目立たないが神技が行われた事は本人意外は知らずに。
そのお陰で指は白頭巾の手に、今だ付いている。
連射式銃は持ち主から引き離されたと知る僅かな間、出された指示を実行し弾丸をばら撒き続けた。
直後、白頭巾の眼前に立つ銀の牙。
口元は笑いを、瞳の奥は勝利を、そして、したり顔。
慢心は散漫な心を作り、注意力を下げる。
刹那遅れ、気付く。白頭巾が浮かべた邪魔な微笑みに。
白頭巾が、ぼそりと呟いた。
「今まで撃っていたのは、あんたのよく嗅げる鼻を誤魔化すため…。」
いつの間にか、この空間を満たす硝煙…、火薬の臭い。
「今撃ったのは、あんたのよく聞こえる耳を誤魔化すため…。」
連射式銃の大きな音に耳の注意が行っていた。
気が付く!
濃い火薬の臭い。
小さく『シュウシュウ』という聞いたことの無い音に。
下!?
両方の出処が、自分の真下だと。
「なぁ!?」
人の体に狼の顔。自分の真下は死角となり見難い。
気を取られ、白頭巾から注意が削がれる。
「私からの贈り物よ。」
反響したその声は柱の裏から聞こえていた。
いつの間にか白頭巾は、柱の陰に隠れていた。
(逃げなければ!)
その思いが意識を加速させ、肉体の反応の遅さを実感させる。
(もどかしい。体が動かない!)
時間が伸びたと感じていた。
床を蹴ったはずなのに、まだ両足が床から離れない。
更には、両足が床に張り付いているのではとも。
爆発!!!!
教会、地下、迷宮、王の間、銀の牙、その足元。
そこで、産まれた爆発。
爆発は膨張を伴い、王の間の大気を迷宮へと押し出した。
尚も膨張する大気は、迷宮を駆け抜け、地下から一気に駆け上がり、教会の中を満たす。
そして、教会の隙間から外へと吹き出す。
この時、近くにいた街の人が『教会が鳴いた』と言っていたらしい。
収縮。
押し出された大気の補充。
教会の隙間から吸い込まれた大気。それは、また鳴かせた。『二度鳴いた』との証言。
大気は地下へと駆け下り、迷宮を駆け抜け、王の間を満たす。
静寂。
全てが収まっていた。




