質問
「私から質問、宜しいですかな?」
マーシュ神父からは質問。
「乙女の秘密以外ならね。」
戯ける白頭巾。
どこまでが本気なのか、見詰めるレイモンド神父の疑問が募る。
「ユーモアのセンスまでお有りとは、これはこれは…。」
笑顔が笑い顔へ。
「貴女はどうやって、ここを?」
「森に埋められた貴方の仲間の所に残されていた手掛かりが一つと…。」
正直に答える。
「そんな物が有りましたか。」
驚くマーシュ神父。
「埋もれてたからね…。」
これも正直に答えた。
「見付からないわけですな。」
「後は、貴方が側に置くのが嫌になって、レイモンド神父に渡した、この教会に伝わる十字架が一つ。」
「まさか…。」
今度の驚きは大きかった。
「あの十字架に、文字なんて無かったはずですが…。」
「だから、二つ必要だったのよ。二つ合わせると読めるようになる仕掛けがしてあったわ。」
素焼きの板の事を思い出し、眉間に皺が寄った。
「読めると言っても私達だけが読める符丁だったけどね。」
「ほう、そんな符丁があるとは。是非、同族になって頂きたいですな。」
「嫌よ。だって私、猫派だもの。」
また、戯けた。
「でしたら、力尽くで…。」
手の甲に筋が浮かび、指先に力が入る。
マーシュ神父の纏う雰囲気が、変わり滲み出す気配が邪悪なものへ。
「待ちなさいよ。」
白頭巾が、止めた。
「同族になってくださるのですかな?」
指先の力が抜けた。
「武器用意するわ。」
浮かぶ困惑の表情。
「何故ですかな? そんな間を与える必要がありますかな?」
「話聞いてあげたじゃない。」
続け、
「それに…。」
「それに?」
無意識に繰り返していた。それは、何かの期待。この白い頭巾の少女への。
「一方的に相手を倒すよりも、ギリギリの命を削る戦いの方が心踊るのよ。」
その言葉で、マーシュ神父の心が座喚いた。
今までに味わったことの無い感覚で、全身の鳥肌が立つ。
「戦いでは、貴女の方が先輩でしたな。」
口元に浮かぶ笑いは、心の座喚きの現れ。
「そう言う事よ。」
こちらの口元に浮かぶ笑いは、心の期待の現れ。
「神父さん。荷物を。」
レイモンド神父に首だけ向け話しかけるが、体は油断していない。
「はい。」
言われ、背中から大きな荷物を降ろす。
白頭巾は、荷物を回り込む様にしながら、マーシュ神父が正面にくる位置に立った。
その動きを、眺めながら、
「流石ですな…。」
小声で褒める。
「神父さん。」
こちらも小声で、
「柱の陰に隠れてて…。」
間を置くと、目を見据え、
「隙きを見て、ペーターを助けに行ったりしないで。」
「えっ…。」
完全に見透かされていた。
「それが狙いかもしれないしね。」
「解りました…。」
言われなければ、自分は取り返しの付かない事をしていたのかもと。




